司法の場での救済の限界!
最高裁は、「雇用関係はない」との判断を示し、この点については労働者の敗訴となりました。
最高裁まで争った判決は、法律に近い判断根拠になります。同様の裁判が全国で60近く行われていると言われています。今回の判決で、一定の結論が出たことになります。つまり、「違法な労働者派遣」というだけでは、派遣先との直接の雇用関係が認められないことになります。
労働者側はこれまで、次の主張をし、二審・大阪高裁では、労働者側の主張を認めました。
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「形の上は請負会社に雇われていたが、実際にはプラズマ社と使用従属関係にあった。」
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「請負会社が労働者と結んだような契約は公序良俗に違反して無効としたうえで、プラズマ社と労働者の間には『黙示の雇用契約』があり、有効な雇用関係が続いている。」
上記の主張と二審判決が、最高裁で次のように破棄されます。
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プラズマ社が労働者派遣法に違反した状態で、労働者を働かせていたと認めたうえで、「仮に違法な労働者派遣でも、そのことだけで労働者と派遣元の間の雇用契約が無効になることはない。」
上記を裏付ける理由として、プラズマ社側が労働者の採用に関与したり、給与の額を事実上決定したりしていた事実がないことをあげました。よって、「黙示の雇用契約も成立していない」と結論づけになりました。今回の最高裁の判決は、司法の場での救済の限界を示したものだと感じました。また、最高裁は、民主党政権になり、派遣法自体の抜本的な改正を踏まえて、現地点の派遣法の解釈では、当該判決が妥当であるという判決にしたような気がしています。
12月18日に労働政策審議会では、派遣法改正案の原案が提示されました。その中には、「直接雇用みなし制度」の創設があげられています。当該制度は民主党のマニュフェストの内容です。派遣法違反をした派遣先に、直接雇用を義務化させる内容の骨子になっています。
実は、弊社のクライアントは、派遣業を営んでいる企業も多いのですが、上記制度を具体的に導入されると、派遣業者だけでなく、派遣労働者を受けいれている企業についても、周知を図り、適正な運営をしていく必要が出てきます。今後、派遣法の改正については、定期的に取り上げていきたいと思います。
作成日:2009年12月21日 屋根裏の労務士