コラム Column

「日本のサブカルチャーの奥の深さ!」

私は、20代の頃、西洋かぶれになっていたことがありました。東西冷戦が終わり、いわゆる『グローバルスタンダート』と言われるものが横行してきたときです。この『グローバルスタンダート』というものを身につけるために、様々な書籍を読み漁っていたときがあります。毎週、何かしらの自己啓発書も読んでいました。周囲でマンガを読んでいたりすると、それを少し冷やかに思っていた時がありました。

30歳のとき、パソコン学校で、大学を卒業したばかりの年下の友人ができ、その友人から、時間があるときに、「是非、私に読んで欲しい本がある。」と言われたのです。その本は、「ONE PIECE」のマンガ本でした。

「ONE PIECE」は、累計2億5000万部を突破。最新64巻は初版発行部数400万部。国内出版史上最高記録を樹立。海外でも翻訳版が30カ国以上で販売されています。マンガ本の印税は、1冊売れるごとに、40円と言われています。作者の尾田は、マンガ本の印税だけで、9億円の収入を得たことになります。

私がはじめて読んだとき、すでに20巻近くまで発売されていました。このマンガをはじめて読んだとき、私は、そのストーリーの面白さもさることながら、「日本のサブカルチャーの伝統の奥深さ」に驚かされました。「ONE PIECE」の話題だけでも、100ぐらいコラムを書けると思います。

「ONE PIECE」は、キャラクターなどが、他のマンガのパクリだと言われることがあります。私も、はじめて読んだとき、私が子どものときに読んでいたマンガやアニメの数々を思い出しました。そのマンガやアニメとは、「ドラゴンボール」、「キン肉マン」、「怪物くん」、「ルパン三世」などです。「ONE PIECE」は、上記を中心としたマンガの影響を強く受けていると思います。

しかし、「ONE PIECE」は、決して単なるパクリではありません。独自の世界観の中で、オリジナルの作品となっているのです。作者の尾田自身も、上記の作者と作品に、高い敬意と尊敬の念を払っています。そのうえで、これまでの諸先輩の作品の意思を引き継ぎ、それを更に大きく高めているように感じるのです。

私は「ONE PIECE」を読んだとき、日本のマンガ文化のレベルの高さ。これまで培われてきた作者だけではなく、それを支える目の肥えた大衆。サブカルチャーの高さを感じずにはいられませんでした。他の諸外国では、到底そのレベルには、及ばないでしょう。

私は、欧米のマンガやアニメは、ほとんど知りません。知っているとしても、トムとジェリーぐらいでしょうか。それもマンガでは読んだこともありません。正直、世界観のない、幼児むけの内容だったように思います。

日本のサブカルチャーの高さには、やはり、江戸時代の260年で花開いた大衆文化が根深く影響していると思います。日本文学研究者の第一人者である、ドナルド・キーン氏は、江戸時代の大衆文化の代表でもある「近松門左衛門」を次のように言っています。

  • 「近松は世界で初めて、庶民的人物を悲劇の主人公として描いた。
    シェークスピアなどの悲劇に登場するのは王や貴族で、出てきても道化のような者。
    日本文学は庶民にも悩む権利があるという表現である。」

西洋では、庶民にはそもそも文学となるような悲劇なんて無かったのです。悲劇は、貴族にだけあるものであり、庶民では悲劇になりえなかったのです。しかし、日本では、庶民にも文学となりうる悲劇があったのです。その点において、キーン氏は、シェークスピアより、「近松門左衛門」の方がすばらしいと言っています。

西洋では文化は一部の高貴な身分に与えられた特権でしたが、日本では文化は誰でも楽しむことが出来、身近で大衆的なもの。恐らく、今でもそうでしょう。私のような者でも、メールマガジンなんて、創っているのですから。正直、メールマガジンが労働であったら、とても出来ない。自分が趣味のように楽しんで創っているから、出来るのです。

日本は、世界で稀に見る庶民文化が花咲いた国です。この庶民文化は、とても裾野が広く、今でも様々なことに影響を与えていると思います。マンガも、そんな庶民文化の伝統の中で、育まれ、花咲き、今にあるものでしょう。クールジャパンの中でも、マンガやアニメは重要なコンテンツだと言われ出しました。世界でも評価が格段に高い。

その中でも、筆頭コンテンツである「ONE PIECE」。最新である64巻は、熱烈な「ONE PIECE」ファンからは、酷評が多いようです。しかし、いつも、そんな目の肥えた人々の酷評が、さらに、すばらしい作品を創る下地となり、日本のサブカルチャーを高めていくのだと思います。

作成日:2011年11月7日 屋根裏の労務士

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