コラム Column

「高年齢者雇用安定法」と「高年齢者雇用状況報告書」

6月から7月上旬までは、人事総務部門の繁忙期になります3月決算の企業では、株主総会があります。年度更新、算定基礎届、賞与支払届の年次処理業務に加えて下記の報告もしていく必要があります。
  • 高年齢者雇用状況報告(すべての事業所ではありません)

  • 障害者雇用状況報告(常用雇用労働者43.5人以上の会社)

高年齢者雇用安定法の法改正により、「70歳までの雇用が努力義務」となりました。そのため、高年齢者雇用状況報告書の内容も変更になっています。

例年、従前踏襲で昨年度の内容を参考にして記載して報告していると思います。今年度は、内容が変わっていますので、メールで配信しました資料を参考にして対応して下さい。

弊社のクライアントでは、法的に完全な65歳定年にしている企業は、ほとんどありません。そのため、ほとんどのクライアントが下記のいずれかの対応になります。

  • 1.労使協定書で基準を定めている場合
     →定年は60歳まで、
      報酬比例の報酬比例部分が
      支給されるまでは、希望者全員を雇用
     →更に、基準に該当した場合
      65歳まで雇用

  • 2.労使協定で基準を定めていない場合
     →定年は60歳まで、
      65歳まで希望者全員を雇用

クライアントの方々には上記のケースに応じて報告書の記載例を作成しました。報告書の内容を間違えるとハローワークから指導をうける展開もあります。「⑩継続雇用制度」の箇所が肝ですので、注意をして対応して下さい。

安定法が法改正されるときに、高年齢者雇用状況報告書の形式も変わり、記入方法に関して、ご相談を頂くことが多いです。

安定法は、経過措置だらけで継ぎ接ぎだらけの法律構成になっており綺麗に整備されていません。法律が、シンプルでわかりやすくなっていないのです。そのため、状況報告書の内容も複雑になっています。

定年や雇用確保義務を定めている安定法。公的年金の支給開始の入り口にもなっている法律。敢えて、わかりづらくして、複雑にしておく必要があるのだと思います。

金融庁が発表した『老後2,000万円問題』が浮上してから、事実上、年金に関して語ることがタブー化しています。急速な少子高齢化社会の中で、昭和の時代に資産を築いた高齢者のほとんどは経済的には困窮などはしていません。

日本の公的年金は積立方式ではなく賦課方式です。経済的に豊かな高齢者層に対して経済的に貧しい若年層が支えるというおかしな状態に日本はなっているのです。

消費税を上げるのではなく現行の高齢者の年金を減額して頂きたいなど言ったら、袋叩きにされるような雰囲気になっています。個人的には、私も、年金を減額しないで頂きたい世代の方に近づいてきました。

それでも、私は、最後の最後まで頑張ります。最後まで支える側でいることが本望です。健康第一で、仕事が出来て、お金を稼げることが何よりの幸せです。
年金のお世話になるつもりはありません。(困ったらその時はお世話になります。)


マクロ継続スライドが導入されて公的年金が下がる仕組みが出来ました。しかし、豊かな高齢者層のほとんどに影響はありません。現行の年金減額は、あくまでも世代間格差の解消に向けたポーズに過ぎません。

日本の年金制度は、破綻が危惧されていますが、年金制度は、破綻になったりはしません。今後、減額されたり、支給開始時期が遅くなることはあるはずです。確実に言えることは下記のことでしょう。

  • 現役世代の負担は重くなり
    現役世代の受給額は少なくなる

賦課方式ですから、破綻はしません。現役世代の負担が重くなるのです。マクロ経済スライド自体が複雑で簡単には理解が出来ないようになっています。

とりあえず、世代間格差のポーズだけを取り、年金が下がっていく実績をつくったら、更に制度や係数を複雑にして、現行の現役世代に向けて受給額を減額させるはずです。

もはや、社会から見捨てられた氷河期世代。彼らが高齢期になったら、生活保護が急増するのは確実です。生活保護の大半は、厚生年金を受給出来ない高齢者層です。

20代で生活保護を受給している人は全体の2.6%しかいないのです。若年層で働くことができるのに、生活保護を受給しているとの報道を、度々、見受けますが、実際は、ほとんどいないのです。

生活保護のほとんどは、年金が支給されない高齢者層が占めているのです。日本は、移民を受け入れていません。そのため、他の先進国に比べて、生活保護の受給割合は低いのです。

年金や定年に関して政府の方も、騙し騙しの対応で、調整していくしかありません。安定法は複雑になっており、そもそも法で定年年齢が何歳なのかについても、適正に周知がなされていないのが実情。現行で法的な取り扱いでは、下記のようになっています。

【原則的な取り扱い】

  • 定年は60歳。
    65歳まで雇用の「義務」がある。
    65歳超から70歳までは雇用の「努力義務」がある。

【経過措置的な取り扱い】

  • 経過措置対応により、平成25年3月31日以前に
    継続雇用制度の基準を設けて労使協定を締結した場合
    生年月日に応じて、基準を適用することができる。

【経過措置的な取り扱い】については説明をしませんが、65歳超から70歳までの雇用は、「努力義務」です。

「努力義務」の解釈や判断が難しい論点です。努力はする必要があり、何もしていなくても良いわけではありませんが、明確に具体的なことをする義務はないのです。

高年齢者雇用安定法は、度々、ご相談を頂くことがあります。法制度自体が継ぎ接ぎだらけで、綺麗になっていないだけではありません。

役所のリーフの方も、法改正論点だけの周知であり過去の経過措置事項との関係や経緯に関して下記の肝心な箇所について説明がないのです。

  • 令和3年の法改正でも
    平成24年改正の経過措置に
    基づく対象者を限定する基準は
    廃止にはなっていません。

令和3年改正では、70歳までの努力義務を追加させることで法改正がなされています。従前からある内容に関して、改正したというよりも追加したというイメージです。

追加された条文だけを取り上げて見れば従前の内容は法改正されて、無くなったようにも思えますが、無くなってはいません。国は、65歳から70歳まで雇用させる仕組みを企業につくらせたい意図は透けて見えますが現行は努力義務になっています。

厚生労働省から下記のQ&Aが出ています。

【Q&Aの一部を抜粋】

  • …改正法が施行される2021 年4月1日時点で、
     70 歳までの就業確保措置が
     講じられていることが望ましいですが、
     検討中や労使での協議中、検討開始といった状況も
     想定されます。…

とりあえず、70歳までの就業確保に関して、「検討中」とコメントしておけば、問題はありません。今回、高年齢者雇用状況等報告書で項目内容が変更されました。

役所の調査やアンケートも、実務の状況を踏まえて、毎回毎回、微妙に変わっていることも珍しくありません。来年度の高年齢者雇用状況報告書はまた、変更になっているかもしれません。その時は、また、ご案内をさせて頂きます。

作成日:2021年5月31日 屋根裏の労務士

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