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「現在の自分の進むべき道」

先月の末に、関西方面に出張をしてきました。説明会が無事に終わり、午後、クライアントと一緒に京都観光をしてきました。クライアントの方とは、京都駅で別れました。私は、宿をとっていましたので、夜の京都を少し楽しんできました。

京都には、馴染にしている小料理屋があります。祇園の花見小路にある小さな京料理のお店です。カウンター席が7席、1階と2階に個室が一つ。大将と女将、見習い1人で、切り盛りしている小料理屋。

7年前に祇園に進出して、店舗を構えました。まだ、開業して間もない時。数ある祇園の料理屋の中から、何となく、ふらっと入ったのです。その時から、祇園で京料理の食事をするとき。この小料理屋を利用させて頂いています。小さなお店ですが、大将と女将の雰囲気が良く、何より、とても美味しいのです。

祇園の花見小路周辺の料理屋。営業をするにあたり、決まりがあるそうです。客引きをしたり、派手な看板などは出してはいけないのです。基本的には、店舗を構えて、お客が来るのをじっと待っているしかないそうです。開業当初、まだ、固定客もついていませんでした。

当時、大将と女将の不安な気持ちの中で、これからの夢について、色々と話してくれながら、京料理を出して頂きました。祇園に店舗を出すこと。大将と女将の長年の夢だったそうです。

最近は、固定客やリピーターが増えてきたので、完全予約制にしていくことも検討している様です。ちなみに、私は、いつも予約せずに、利用させて頂いていました。

京都には、下記のお店が、結構、あります。

  • 「一見さん、お断り。」

紹介者がいなければ、サービスを受けられないのです。紹介者に連れられて、何度も通っているうちに、自分も一見ではなく常連として認められ、一人でも利用できるようになるそうです。

京都の料理屋は、完全予約制で常連だけにしかサービスを提供しておらず、店の看板も出していない小料理屋。珍しくありません。まさに、「知る者ぞ知る」という料理屋です。

紅葉のシーズン中は、海外からの観光客も多く、祇園の京料理のお店は、どこも予約がいっぱいです。事前に予約をしておかないと、祇園で食事をすることも出来ない様です。

大将の小料理屋は祇園で開業して7年。今回、個室は予約で満室、カウンター席も3組で埋まっていました、7年間の日々のおもてなしが実を結び、常連客もついてきており、経営も軌道に乗ってきた様です。

忙しく料理をつくり込んでいる大将に、下記のことを質問しました。

  • 「今後、店舗を拡大することは無いのですか?」

大将は即答しました。

  • 「拡大することはありません。」

祇園には、板前職人を多数抱えて、拡大路線で対応している料理屋もあります。基本的に、京料理は、薄利多売の商売ではありません。

  • 「縁あって選んで頂いたお客様」に対して、
    「最高のおもてなし」をする商売。

だから、大将は、拡大路線は考えていないそうです。マニュアルで対応ができる様なチェーン店化で、伝統の京料理を薄利多売で展開するというのは、現実的にはあり得ないのでしょう。限られたお客様に対して、「最高のおもてなし」を丁寧にするビジネスなのでしょう。

祇園のこぢんまりとした小料理屋。大将と女将の二人、イキイキとしていて、何だか、とても楽しそうなのです。実は、小生には、祇園でおもてなしを受けている時、迷っていたことがありました。

私と一緒に組んで、ワンストップの拡大路線で展開していきたいというお誘いを頂いていたのです。既に法人化している事務所のメンバーに小生がコンサルティング部門に、共同代表で加わるのです。得てして、ビジネスというのは、仕事が忙しいときに限って、新規の問い合わせやビジネスの提携の話など、舞い込んでくるものです。

今期、既存のクライアントの方々から各種プロジェクトの依頼を頂くことが出来たので、新規のビジネスチャンスには、余り対応をすることが出来ませんでした。また、今期は、クライアントに重篤な労務の相談が続いたうえに、マイナンバーの対応もあり、その相談対応をしていく必要もありました。

マンパワーがないために、新規案件の問い合わせに対応が出来ずに、後ろ髪を引かれる様な思いになり、何か、もったいない気持ちになったりもしていました。しかし、これが、「縁」というものなのでしょう。誰かと付き合っているときに、他の誰かとは付き合うこと。出来ないものです。

紹介でもない、全く知らない企業との間で顧問契約を締結していくためには、最低でも3回程度は面談をして、そのための準備や対応をしなくてはいけません。

  • 顧問契約は、お見合いや入社面接と似ています。

相手が私を選び、私が選ばれるということだけではありません。私の方も相手を選び、相手も私から選ばれるのです。長期に渡るお付き合いになるので、当たり前のことでしょう。ある意味、私も、クライアントのメンバーになるのですから。ブラック企業には入社したくないように、ブラック企業の顧問はやりたくありません。

新規のクライアントは、喉から手が出る程、欲しいです。しかし、常連のクライアントを後回しにしてまで、新規の対応などは出来ません。

事務所を統合して、拡大路線で対応をしていけば、合併した先の事務所のクライアント。小生のコンサルティングの有力な見込み客にもなります。まだ、小生の労務コンサルティングを体感したことがない方に、コンサルティングをしていく機会も増えていきます。

しかし、現状では、長くお付き合いをさせて頂いている小生の常連である大切なクライアントである皆様に対しても、労務のプロジェクトを立てて対応していくこと。まだまだ、必要になっており、次々と新規のプロジェクトが立っています。

クライアントは、新旧世代交代が進んでいます。これまでの社長が経営の一線を離れて、会長や相談役となり、次世代の経営者から、新たなプロジェクトの依頼も増えています。

私と10年を超えるお付き合いをさせて頂いているクライアント。だいぶ増えてきました。長く付き合っているから、分かり合えること。また、長く付き合っていても、新たに気が付く発見。たくさんあるものです。

現在、私が進むべき道。拡大路線ではなく、祇園の京料理のお店の様に。

  • 「縁あって私を選んで頂いたクライアント」に対して、
    「最高のおもてなし」をすること。

祇園で京料理を頂きながら、現在の自分の進むべき道。再認識をすることが出来ました。私のコンサルティングや労務の相談がマニュアル化の定型業務で、対応ができるはずもありません。私は単に法律相談をしているわけではありません。

統合して規模を大きくしたからといっても、私のマンパワーが増えるわけではありません。

  • クライアントのことを個別に理解して、
    クライアントに応じた、「最高のおもてなし」をすること。
    それが、私の道なのです。

まだまだ、士業としての腕を磨いていきたいです。現場を離れて、経営をしていくだけにはならないでしょう。現場に身を置いて、いつも格闘をしていきたいのです。

私は、この仕事が天職であり、何よりクライアントを愛しています。

ちょうちんの灯りで、情緒溢れる、祇園の花見小路を歩きながら。
現在、私が進むべき道。
何か再確認することが出来ました。

作成日:2015年12月21日 屋根裏の労務士

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