コラム Column

「冬の桜」

2月の最後の日曜日、地下鉄の九段下の駅を下りて、皇居周辺を散策してきました。「桜の名所、千鳥ヶ淵」の冬の景観。何か、もの寂しい、冬の桜の景観。私は、冬の時期に、毎年、桜の名所を訪れています。厳冬の光景を確認することにより、下記の二つを感じるためです。
  • 「春、桜が咲く、喜び」
    「春、桜が象徴すること」

冬の時期は、どこの桜の名所もガラガラで閑散としています。桜咲く、春の季節。あの賑わいが嘘のようです。人の賑わい、活気は、ありません。しかし、そのことが、かえって、強く感じることができます。厳冬の情緒と待ち焦がれる春を。

「冬の桜」。その姿は、枯れ木の様。肌はガサガサ。色は、黒い。おまけに、何か太くてよじ曲がっている。生命の息吹を全く感じない。冬の桜の名所は、まるで、墓地。人の姿は無く、何か静かで、もの寂しい。そして、どこか、畏怖心いだくような雰囲気。

それが、もう少ししたら、待ち焦がれた、春が来る。あの美しく、花彩る、光景となる。春の訪れ。知らせるように。あの人溢れる、光景となる。春の訪れ。皆で、喜びを分かち合うように。

「冬の桜」から、花彩る、春の桜に変わる時。毎年、次の印象を受けます。

  • 何か、霊術的で、神々しいと。
    何より、優しく、寄り添うようだと。

桜咲く、その姿。まるで、死者の魂が、春の訪れとともに、舞い降りてきたかのように思えるのです。年に一度、あの世から、帰ってきてくれる。しかし、満開になり、舞い戻ってきたと思うとき。同時に、別れがはじめる。もう少しだけ、居て欲しいと願う。しかし、春一番が吹き、花咲くまま、潔く散っていく。

新渡戸稲造は、武士道の中で、日本人の美意識を次のように言っています。

  • 「桜はその美の高雅優麗が
    我が国民の美的感覚を訴えること、
    他のいかなる花も及ぶところではない。」

  • 「薔薇に対するヨーロッパの賛美を、
    我々は分かつことを得ない。」

  • 「薔薇は花の色も香りも濃厚で、
    美しいけれど棘を隠している。
    なかなか散らず、死を嫌い恐れるかのように、
    茎にしがみついたまま色褪せて枯れていく。」

  • 「それに比べて我が桜の花は、
    香りは淡く人を飽きさせることはなく、
    自然の召すまま風が吹けば潔く散る。」

  • 「武士道の象徴は桜の花だ。」

寒く、厳しい冬の季節。「冬の桜」に触れることで、強く、感じることが出来る。春の桜の喜びを。そして、春が来たときに、確かに、感じることが出来る。日本人の精神、武士道の象徴は桜の花だと。

作成日:2013年3月4日 屋根裏の労務士

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