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「ジョブカードと評価制度!」

事業仕分けで、ジョブカード制度が廃止されることになりました。その後、閣議で管首相は、当該制度を継続させる旨を発表しました。事業仕分のとき仕分人から、ジョブカードは次のように言われていました。
  • 「ジョブカードは、履歴書やエントリーシートと大差なく、実績も出ておらず、必要性は低いと判断する。」

実際に、ジョブカードは、履歴書と同じような程度で本人のキャリアをアピールする応募書類ぐらいにしか運用されていないのだと思います。私は、当初、ジョブカード制度が導入されたとき、転職者のスキルを証明し、前向きな雇用の流動化を可能にするひとつの良いツールになると思いました。さらに、この制度が定着できれば、「同一労働同一賃金」への足がかりになるとも思いました。一方で、ジョブカードを運用して、国全体の制度として定着させるのは、並大抵のことではなく、相当ハードルが高いとも思いました。ジョブカードは、厚生労働省のパンフレットで、次のように紹介されています。

  • 正社員経験が少ない方々が正社員となることを目指して、ハローワーク、ジョブカフェ等での、職務経歴、学習歴・訓練歴、免許・取得資格等を記載した「ジョブ・カード」によるキャリア・コンサルティングを通じ、企業における実習と教育訓練機関等における座学を組み合わせた実践的な職業訓練(職業能力形成プログラム)を受講し、訓練修了後の評価結果である評価シートの交付を受け、「ジョブ・カード」に取りまとめ、就職活動やキャリア形成に活用する制度。

上記は、長い説明文章ですが、要するに、次のことでしょう。

  • 自分のキャリアや資格に応じて、職業訓練を受けて、その評価がカードに記載され、実践的キャリアの証明をして、就職活動と雇用の促進を目指す制度

ジョブカードのポイントは、「各人のキャリアを評価して、一定の証明をすること」です。日本では、終身雇用制度が崩壊されたと言われますが、依然として、従業員の終身雇用制度に対する期待は高く、社会的にみても、『ポスト終身雇用制度』が整備・確立しているとは言えないと思います。給与制度も、年功序列賃金制度は、一定の改善はされてきていますが、仕事自体に対して払われる『職務給』を導入出来ている企業は少ないです。ほとんどの企業が、未知数の期待を含めた、人に対して払われる「職能給」をベースにしている現状があります。

若者を中心にした非正規社員の格差社会への提言として、「同一労働同一賃金」が取り上げられるようになりました。理想的・理念的には、同じ仕事をしているのに、賃金が違うなんておかしなことです。私も、「同一労働同一賃金」が実現される社会の実現を望んでいます。しかし、日本の今の実情では、その具体性は、極めて低いと言えるでしょう。様々な要因はありますが、ひとつの職務に対して評価基準を作成して査定を行い、賃金と連動させることは、極めて難しいからです。
特に日本では、すべての企業でも通用する普遍的な知識や技術ではなく、一つの会社の中で限定的に通用する知識や技術を身につけていることが多く、限定的なスキルに対しての評価が高い傾向にあります。新規学卒採用をして、その会社に応じた文化や価値観の下で、会社のルールにあわせて、会社のカラーで育成させていく傾向もあります。そのため、業界全体での査定基準は、強く望まれることではありますが、作成から運用までの実現性のハードルは相当高いと言えるでしょう。

ジョブカードの評価基準は、商工会議所や各種業界団体の協力を得ながら、作成して、職務に対する評価基準のベースをつくることもありました。この基準が有効的に機能していけば、「同一労働同一賃金」にも実現可能性が高まるとも考えられていました。しかし、実際は、ジョブカードは履歴書やエントリーシート程度の役割しか果たしておらず、事業仕分の対象となっているのが実情です。ひとつの企業の中で、評価制度を作成するだけでも、膨大な作業と打ち合わせを要する評価制度。一定のユニバーサルルールで、内容のある基準となると、それこそ膨大なプロジェクトとなるでしょう。ジョブカードの継続に関して、二転三転していますが、継続していくが決まったならば、実りある制度にして頂きたいです。

作成日:2010年12月6日 屋根裏の労務士

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