コラム Column

「企業のセンターピンとは何か!」

政府は、予算編成過程の透明化・見える化を進め、国民の声を予算編成に反映させる試みとして、189にもなる事業に対する国民の意見を募りました。政策コンテストは、賛否両論がありましたが、私は新しい試みをしていくことは良いことだし大きな期待もしています。

『予算を決める』というと何となく軽く感じてきますが、国民がより良い生活を送れるように、「戦略」をたて、その実現に向けて私たちの血税を使うことです。日本は、人口は約1億2千万、GDPは約430兆円にもなる大きな国です。各方面にやらなければならない課題が山積しています。「どこから、何をやるのか?」ということになり優先順位が大切になりますが、特別予算の案ですら、素人の私にもやるべきことが多すぎて、「何がやりたいのか」が見えてこないのです。結局、すべてが中途半端になってしまうのではないかと心配になります。

私の担当分野で戦略というと「人事戦略」になりますが、経営戦略にダイレクトに影響してくるのは人事評価制度の策定です。企業で、人事評価制度を策定していくときに、次のような変遷を踏むことが多いです。

最初は、「評価制度の内容が少なく、曖昧な内容になっていて、評価者の主観で査定をしている状態で評価制度が機能していない。」書籍などから、ひな形をもってきて、それに多少編集をして、利用することが多いと思います。ひな形ですから、すべての企業に利用できるように抽象的な内容になっているのです。

次に、評価制度項目が曖昧で適正な査定がされていないと現場からの不満も多くなり、新しくプロジェクトを立ち上げ評価制度を作成していくになります。新しく出来た評価制度は、会社のオリジナル性があるのですが、評価制度の内容が細かく多すぎて、何を会社が求めているのかが、曖昧になり、ボケてしまい、結局、運用が出来ないという状況になりやすい傾向にあります。
通常、社内でプロジェクトを立上げたり、外部のコンサル会社に委託したりして作成します。全社規模で対応していくので、かなりの資料が集まってきます。そのときに、大切なのが、「優先順位をいかにつけるか?」ということです。各部門の代表者、各部門の現場の意見ですので個別に検証していけば、すべてが必要な評価内容のはずです。しかし、何でも評価制度に入れていたら、戦略自体がボケてしまいます。

私が、人事評価制度の策定の依頼を受けた場合、打ち合わせの最初の段階は、「いかに、意見を引き出すか!」にポイントを置いてプロジェクトを進めていきます。打ち合わせが進み、参加者に一定のベースが出来てきてくると、かなり前向きな意見が出てくるようになります。この段階になると、今度は、「何を選択していくことになるか?」になります。この時期に、参加者に出てきた内容を一覧にまとめて、選んで頂く段階になると「なかなか、評価項目を捨てることが出来ない。」という状況になりやすいのです。

そのときに、選択するうえで指針となるのは次のことです。

  • 「今の会社にとって、センターピンは何か?」

ボーリングで、ストライクをとるためには、最初にセンターピンを倒すことです。センターピンを倒し、他のピンが倒れる波及効果を狙うのです。今の会社の置かれた状況の中で、戦略を遂行するために、「最も効果的なセンターピン」は何かを見極め、そこに限られた人的資源を投入していくことです。人的資源の集中と選択、すなわちこれが人材戦略です。経営資源は、有限であり無限ではないことは、誰もがわかっています。しかし、次のことは意外と忘れてしまうのです。

  • 「社員に求められることは限られている。」

当たり前ですが、時間も無限ではありません。半年間、1年間というスパンは、新しいことを確実にやり遂げようと計画すれば、短い時間のはずです。「戦略」とは、「やるべきこと」と「やらないこと」を決めていくことです。そんなことは、どのマーケティングの本にも書いてある当たり前のことであり、誰でも知っていることだと思います。しかし、そのことを本当に理解して、実践が出来ている会社は少ないと思います。「あれもやれ!これもやれ!」と中途半端で、プロジェクトが終わっていることが非常に多いのが実情だからです。政府は、1年8カ月ぶりに、景気判断を下方修正しました。このことは今後、何らかの大きな経済対策を講じてくることを意味します。企業でも、今一度、経営資源を特定の戦略に集中させて、短期間で確実に特定のプロジェクトを遂行していく必要があると思うのです。

作成日:2010年10月25日 屋根裏の労務士

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