コラム Column

「スペインの休日」・・・前編

年末年始にスペインに行ってきました。最初に、スペインのへそである首都のマドリッドに入り、次に、アラブの雰囲気が佇むアンダルシア地方の都市を巡り、最後に、芸術的な見どころが多いバルセロナを訪れてきました。

スペインは様々な民族の交差する多民族国家。バスク地方やバルセロナ地域では、独立問題を抱えています。もともと、スペインは複数の国が結合してできた国。スペイン人といってもひとくくりにできず、様々な民族の集合体であることがわかります。

そのため、それぞれの地域ごとに、それぞれに、特徴的な文化があるのです。そんな地域ごとにと独特な魅力があるスペイン。今回、私がスペインを訪れた目的の一つが下記です。

  • 「キリスト教とイスラム教の融合世界」を体感すること

スペインの南部に位置するアンダルシア地方。そこは、「キリスト教とイスラム教の融合世界」を体感できる地域です。

キリスト教の西ゴート王国が支配していたイベリア半島。そこに、北アフリカから勢力を伸ばしてきたイスラム勢が侵攻して、イベリア半島のほとんどの地域を支配。ウマイヤ朝を築き、イスラム文化の華が開きます。

コルドバは、ウマイヤ朝の首都であり、当時、人口が50万人とも100万人近くにもなったと言われています。イスラム文化の栄華を極めた都市です。イスラムの人たちは異文化にとても寛容。キリスト教徒に対して、人頭税さえ払えば、改宗を求めるようなことはなく、キリスト教徒を尊重している一面があったのです。

イスラムの寺院であるメスキータを建設。コルドバのメスキータは、4回もの増築を繰り返して、2万5千人を収容できる巨大なモスクとなります。その後、北部に追いやられていたキリスト教徒が国土回復運動、いわゆる、レコンキスタが始まります。今度はキリスト教徒がイスラム勢を南部に追い払い、コルドバの奪還に成功します。

コルドバの奪還に成功したキリスト教徒。しかし、キリスト教徒は、イスラム文化の象徴でもあるイスラム寺院のメスキータを破壊しません。イスラム寺院のメスキータをキリスト教の聖堂、いわゆる、カテドラルに転用するのです。そのため、コルドバのメスキータ(カテドラル)は、イスラム教とキリスト教が共存する世界的にも珍しい寺院になったのです。

現在でもイスラム文化とキリスト文化がお互いを尊重しながら、何か仲良さそうに、並んで存在しているのです。メスキータ(カテドラル)のすぐ近くに、旧ユダヤ人街があります。白い家並みと小路が続くエリアがあります。

レコンキスタでイスラムの時代が終焉するとキリスト教徒以外の人たち、つまり、イスラム教徒やユダヤ教徒はイベリア半島を出ていくか、残るのであれば改宗を余儀なくされます。しかし、ここでも、キリスト教徒は、これまで築いてきたユダヤ人の文化。ユダヤ人の白い家並みを破壊することはありません。

それぞれの宗教や文化を尊重することを続けてきたコルドバ。1984年にメスキータが、1994年には旧市街全体が「コルドバ歴史地区」として、世界文化遺産に指定されています。

考え方や文化が異なる新しい権力者が誕生すると、とりあえず、これまでのやり方を否定したり、破壊したりすることが多いものです。相手の慣習や歩んできたことを蔑ろにして、当然のように、自分たちの考え方、やり方を一方的に押し付けること。どこの社会でも、珍しいことではありません。

スペインの風土は、宗教の違いを乗り越えて、お互いの価値観や築いてきた文化を尊重する寛容な考え方があったのです。民族問題や独立問題を内在的に抱えている一方で異なる文化や異なる民族が地域ごとに、上手く調和して、認め合って共存してきたとも言えます。

そんなスペインの寛容な風土が、何よりのスペインの魅力でもあります。

昨今の不安定であり、物騒な世界情勢を解決するヒント。異なる考え方や築いてきた文化の違いを乗り越えて仲良く共存していくためのヒント。スペインには、あるような気がするのです。

作成日:2017年1月16日 屋根裏の労務士

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