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「自分のストライクゾーンとヒットゾーン」

先週、全国展開をしているある百貨店グループから、お問合せを頂き、年金相談会を企画・開催して頂きたいというお話を頂きました。以前、クライアントの顧問先の業界団体で、「年金セミナー」を開催したことがあり、その関係で、弊社をご紹介してくれたそうです。

内容の詳細を確認するために、お伺いさせて頂き、ご要望について、ご確認したところ、下記の様なご要望でした。

  • 百貨店に来場されるお客様向けのイベントで、
    年金の個別相談会を開催して頂きたい。

担当者のお話では、このイベントが上手くいけば、他の店舗を含めて定期的にイベントを開催していくことも検討していると説明を受けました。

小生は、これまでに一通りの年金の裁定請求をしています。老齢年金、障害年金、遺族年金、共済年金の裁定請求に加えて、基金や連合会への裁定請求、更に、軍人の遺族恩給についても対応したことがあります。

社労士の駆け出しの頃、年金を専門分野にして食べていくことを本気で考えていた時期があります。一時期、かなり、年金に特化して取り組んでいた時期もあります。「5,000万件の消えた年金問題」が、明るみになる前です。

社労士の資格を目指して勉強していた頃。年金制度は、基本的な仕組みが難しく、かなり複雑な仕組みになっていることが分かりました。そこで、年金分野を専門にして特化しても、プロとして食っていけるはずだと年金ビジネスの展開をあれこれと考えていたのです。

しかし、日々実務の経験を積んでいく中で、前職での経験やノウハウを踏まえて、下記のことに気が付きます。

  • 他の社労士には真似が出来ない、自分にしか出来ない強み

何より、クライアントの方々が、私に、求めていること。期待しているものが、何であるのかにも気が付きます。そして、それらが、自分のミッションだと気が付くのです。私の使命は、次のことだと自覚しています。

  • 「企業労務」の制度構築コンサルティング
    「企業労務」の労務相談をして、問題と対峙して解決すること

現在、私は、「企業労務」に関わる労務しか対応していません。つまり、『個人のお客様』に関して、対応していないのです。クライアントの重大な機密事項に、次々と関わり対応していく中で、クライアントの従業員の方からのご相談や対応。守秘義務や利益相反の関係から、取り扱わなくなったのです。

『年金の個別相談会のイベント』を実施すれば、その後、お客様との個人的なやりとりや商談対応が発生することになります。私は、個人のお客様の年金調査をして、裁定請求まで対応しているマンパワーや時間もありません。何より、自分のミッションが「企業労務」にあること。再度、確認して、今回は丁重に辞退をさせて頂きました。

世の中には、個人の方の年金相談をしている社労士もたくさんいます。それに、『年金の個別相談会のイベント』を担当させて頂いたのにも関わらず、更なる個別的な相談や具体的な対応については、他の社会保険労務士を自分で探して頂くという結末。余りにも不誠実だと思ったのです。

それに加えて、私は、ビジネスでは、次のことが大切なことだと考えているからです。

  • 自分のストライクゾーンを持つこと

社労士の仕事の範囲は広いので、自分の得意分野や専門性を極めることが、重用であり、大切になります。何でも新しいことにチャレンジしていく姿勢は大切。一方で、何でも手を出すのではなく、自分の得意分野を極めて、絞り込むことも大切なのです。

いわゆる、「選択と集中」です。企業経営のイロハのイの実践です。手を出すのではなく、「捨てる」という経営判断も舵取りをしていく中で必要なことなのです。

駆け出しの頃は、自分の得意分野を分かっていません。そもそも、自分のやりたい仕事ではなく、やりたい仕事をするための登竜門として、自分に与えられた仕事、自分が出来る仕事を一つ一つ、こなしていくしかありません。

身の丈をわきまえて自分に与えられた仕事を全力でこなして、その中で、自己研鑽をして、地道に能力を高めてステップアップしていくしかありません。世の中に、王道や抜け道という類のルート。中々、与えられていないと思います。

現在の自分が出来る仕事をやり遂げなければ、次のステージに行くための扉が開きません。自分に与えられた仕事、自分が出来る仕事をこなしていきながら、自分の強みを見出して、自分のストライクゾーンとなる得意分野をつくっていくことです。更に、自分の得意分野や専門性のストライクゾーンの中でも次のことを見極めることが大切だと考えています。

  • 自分のヒットゾーンを自覚すること

誰からも、好かれるような人。そんな理想的な人間はこの世に存在しません。同様に、誰からも、望まれるようなサービスもこの世に存在しないのです。特に日本という市場は、複雑かつこだわりを持った様々なニーズがあります。

  • 求めていない人に対して、求めていないサービスをしても、
    自己満足のずれた対応をしているだけだということ

先月末に新規の問い合わせがあり、打ち合わせをしてきました。就業規則と給与規程の策定のご相談でしたが、下記のような意向でした。

  • 『だいたいで良いので、現行の規則や不備に関して
    リーガルチェックをして頂き、整備して頂きたい』

世の中には、リーガルチェックをして、ビジネスをしている社労士もいます。『だいたい』のレベルで、条文を策定してビジネスをしている社労士もいます。概ね法律に違反していない条文が整備されていれば、それで良いというニーズはあるのです。

そのようなニーズがありながら、企業の1社1社を個別に理解して、「しっかりとつくり込んでおく」というサービスをしても『過剰サービス』と思われる状態になるだけでしょう。

労務の対応に関して、企業が求めていること、企業が必要としていること、様々なのです。企業の成長度や成熟度に応じて、対応していく労務の対応も異なるものです。企業により、様々な実情があるのだから、次のことを見極めることが大切だと考えています。

  • 自分のヒットゾーンを自覚すること

問合せがあった企業から、メールで良いので、見積りを下さいと言われました。しかし、『だいたい』のレベルに関して、私と温度差があったので、私の策定方針だけを伝えて、工程表も見積りも出していません。

  • 個別にクライアントのビジネスや文化を理解して
    ともに、課題と目標を共有して
    ともに、真剣に考え込んで知恵を出して、
    ともに、つくり込んでいくこと

それが私の策定方針であり、何より、私のヒットゾーンなのです。

以前、制度が完成して無事に導入が済んだとき。クライアントから、下記のお言葉を頂き、大変嬉しくなったことがあります。

  • やっぱり、直感の選択は間違っていませんでした。
    うちの会社にとって一番良い社労士。
    縁あってご紹介して頂くことが出来ました。

縁あって知り合って、縁あって制度構築をさせて頂いた企業です。私は、クライアントのビジネスや文化、何より労務の課題や目標を一番理解している社労士だという自負があります。

自分のマンパワーや時間には限界があります。自分のストライクゾーンとヒットゾーンを見極めることは大切なことです。そして、自分のストライクゾーンとヒットゾーンを拡げる努力も!

作成日:2017年6月5日 屋根裏の労務士

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