コラム Column

「行き過ぎた資本主義の修正」

安倍首相とトランプ大統領とによる日米首脳会談が2月11日に行われました。大統領選挙前から過激な発言を繰り返してきたトランプ大統領。大統領に正式就任後は、さすがに発言を控えて、過激な政策はしないだろうと、コメントしていた政治評論家の予想を裏切り。連日、過激な発言をして、強気な政策を続けています。

日本に対しても、為替や安保、自動車貿易を中心に、厳しい日本批判を繰り返し発言していたトランプ大統領。賛否両論がある中で、戦々恐々と臨んだ日米首脳会談。終わってみれば、和やかな雰囲気で、予断は許さないが、日本にもメリットがあった会談だったと報じられています。

通商貿易では、日本企業の約50兆円の米国本土への民間投資を約束され、安全保障に関しては、尖閣が安保5条の適用対象であることが明記され、「核の傘」による拡大抑止の維持も含めた米国の関与が明確にされました。

今回の会談では、為替の件、米軍の駐留経費負担について、触れられず。とりあえず、無事に会談が済んだと報じているメディアが多いようです。

先週は、定期購読以外の新聞を、毎日、4紙購入。それぞれのメディアの考えや意見を確認していました。今回の日米首脳会談を臨むにあたり、メディアは、トランプ大統領やアメリカ国民の考えに関して、連日、特集を組んで報じています。

小生は、トランプ大統領の誕生に関して、実は、「暗い期待」がありました。現状維持のヒラリー・クリントンではなく、現状を破壊するようなドナルド・ジョン・トランプの大統領誕生を予感していたのです。トランプ大統領の誕生は、マクロ的な世界史の流れの中で下記のことだと捉えています。

  • 冷戦後における『グローバル化』資本主義の失敗と修正

民主化のうねりの中で、ベルリンの壁が崩壊したのが今から約28年前の1989年。その約2年後の1991年に、ソ連が崩壊。冷戦が終わりになり、『グローバル化』が始まりました。いわゆる、『グローバル・スタンダート』という類のものです。

あれから、約26年もの月日が過ぎ去ります。その間、日本は失われた20年もの時代の中で、経済成長が鈍化した状態で、現在にいたります。日本社会は、中流階級層が激減して、二極化が進んだ格差社会になります。

しかし、格差が拡がったのは、日本だけではありません。『グローバル化』のうねりの中で、世界のほとんどの国で格差が拡がっているのです。世界中で更なる二極化の格差が拡がっていくことに関して、フランスの経済学者のトマ・ピケティは、2年前にベストセラーになった『21世紀の資本』の中で、次のように説明しています。

  • 長期的にみると、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。
    資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、
    それだけ富は資本家へ蓄積される。

  • 富が公平に分配されないことによって、
    貧困が社会や経済の不安定を引き起こすということ。

  • 格差を是正するために、累進課税の富裕税を、
    それも世界的に導入することを提案。

共産主義は失敗して資本主義が、『グローバル化』によって、世界中の隅々まで行きわたりました。皆様は、『グローバル化』という言葉のイメージをどのように感じて、どのように捉えているのでしょうか。

私は、冷戦が終結して、バブルが弾けた後に、社会人になりました。そのときに、『グローバル化』や『グローバル・スタンダート』という考え方や言葉が出てきたのです。当時、『グローバル化』ということについて、当然に受け入れるべき時代の流れであり、深く考えたり議論をするまでもない、当然の真実であり常識だと思っていたときがあります。

『グローバル化』によって、世界には様々な恩恵があった反面。一方で、圧倒的な格差を拡げたのも事実です。世界に冠たる一部の勝ち組の巨大資本の企業には莫大な富が集まり、一方で、多くの貧困層が生まれ、社会不安や経済不安を引き起こしているのです。

行き過ぎた『グローバル化』の資本主義に対して、「一定の保護政策」を必要としてきた時代の動き。小生もボチボチ感じています。かつて、イギリスやフランスが行った『ブロック経済』による経済保護政策ではなく、行き過ぎた『グローバル化』の資本主義に、一定の修正を加える保護政策です。

ちなみに、小生は、格差ということに関しては、相対的貧困は大きな問題ではなく、問題となってくるのは、絶対的貧困という考え方を持っています。資本主義社会である以上、一定の格差は当然にあり得ることだと受け止めています。

大きな世界史の変遷のうねりの中。社会的な必要性の中から、時代の申し子として出てきたのが、あの男だとも見ています。

  • 不動産王 ドナルド・ジョン・トランプ

何か既得権で覆われた岩盤の様に出来上がった常識やルール。何でもいいから、そんな常識やルールからぶち壊して、一度、クラッシュさせて欲しいというような「暗い期待」。トランプ支持者から感じてくるのです。

不動産王 ドナルド・ジョン・トランプの政治的な手腕は分かりません。冷戦の後に広がった、行き過ぎた『グローバル化』の資本主義には、誰かが、どこかで、一度、何らかの修正をする必要が出てきたような気がしているのです。

ドナルド・ジョン・トランプが、どんなことを仕掛けてきて、どんなルールを要求し、どんな交渉をしてくるのか。アングロサクソンは、日本人が思いもつかないような長期スパンで戦略を練って、巧みに色々と仕掛けてきます。

日本とアメリカは、『グローバル化』の資本主義で複雑かつ密接に繋がっています。日本が困れば、アメリカだって困るのです。日本人は、安全保障を握られていても、あの男に舐められたら、いけないと強く思うのです。

作成日:2017年2月13日 屋根裏の労務士

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