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「心の財産」

寒く、厳しい、凍てつくような冬の季節。週末に一人、日本庭園を散策していると、ふと、お世話になった人を思い出し、全身が温かな気持ちで、包まれることがあります。誰でも、時として、そんな情緒に駆り立てられる時。あるのではないでしょうか。

昨年末、数年ぶりに、郷里で親友二人と再開しました。三人で再開したとき、お互いが、お互いに、感謝の気持ちで共鳴しているのを感じていました。

  • 現在の自分があること。
    そこには、親友の存在が、大きく影響していること。

お互いのそんな気持が、自然と伝わってきて、お互いが、お互いに、感謝の気持ちで、溢れていたのです。思い出話の一つ一つ。そのどれもが、感謝の気持ちで、いっぱいなのです。何より、お互いの存在自体。言葉では、表現できない、感謝の存在に、なっていました。

そんな三人にとって、「かけがいのない先生」がいます。小学6年生の時の担任、K先生。今でも、クラスの誰もが、当時のことを思い返し、その度に、温かな気持ちで包まれていると思います。

小学6年生は、思春期を迎える直前の時期。最後の純朴な時期。まだ、何か、斜に構えた、すれたところがありません。純朴な子供の時期です。今にして振り返ると、人格形成の上で、小学6年生は、大切な時期だったと思います。

そんな大切な時期に、私は、「心の財産」になるような先生と、巡り合えたのです。良き先生との出会い。大きな「心の財産」になると思います。

私が小学6年生の当時。K先生は、まだ、24歳。若い男の先生でした。活発で明るい、教師2年目の先生。面倒見が良い先生で、いつも親身になって接してくれたのです。K先生には、よく個別に話を聴いてもらい、あれこれ相談にのって頂きました。

授業中は、いつも、明るく、笑顔あふれる笑いの中。ボケと突っ込みのようなやり取りで、時間がアッという間に過ぎてしまうのです。いつも、隣のクラスが、ビックリするような、幸せ溢れる笑いの渦が、起きていたのです。

天気の良い日に、校庭が空いていると、突然、体育の授業に変更することも度々。小学生の時は、基本的には、すべての授業を、一人の担任の先生から、教えて頂きます。当時、他のクラスでは、音楽の授業だけは別の音楽専門の先生が担当していました。しかし、私たちのクラスは、なぜか、K先生が担当。

音楽も教えることになったK先生。K先生は、音楽を教えたことも無ければ、ピアノも弾けません。そこで、K先生は、得意のギターで、音楽を教えてくれたのです。教科書に則した授業だけでなく、K先生が選曲してくれた歌。K先生がギターで教えてくれた歌。歌は、「クラスの歌」のようになり、よく、クラスのみんなで、歌っていました。今回、久しぶりに、旧友に再開したときも、当時の調子で、K先生が教えてくれた歌。「クラスの歌」を、親友三人で一緒に歌いました。

通常の学校生活の授業だけではありません。長期の休みの時には、K先生の自宅に、大勢でおしかけ、食事をつくって頂いたり、一緒に遊んで頂いたり。たくさんの話を聴いて頂き、たくさんの話をして頂きました。人が生きていくうえで、何より、大切なこと。この時期に、たくさん、学んだと思います。

みんなK先生が大好きで、クラスの仲間が大好きで。今でも、当時を振り返り、幸せな気持ちで、包まれています。しかも、K先生にお世話になったのは、小学6年生の1年間だけではありません。卒業後も、度々、K先生の自宅にお伺いさせて頂き、近況を報告したり、相談にのって頂いたり。今の学校体制では、考えられないことだったと思います。

K先生がいてくれたから、クラスの誰もが、何にでも、安心して、取り組んでいけたのだと思います。卒業式の時に、最後にクラスに戻ってきたとき、K先生の大きな涙。そして、最後にみんなで、泣きながら歌った、「クラスの歌」。今でも、大切に、心に残っています。

その後、K先生は、転勤になり、県内の別の市で、小学生の教師から、中学生の教師になりました。最後に、お会いしてから、もう30年もの月日が過ぎ去ります。

実は、私は、K先生とは、いつでも連絡がとれると思っていました。私の父も同じ県内の教師。うちには、教職員名簿が、あったからです。しかし、個人情報保護法の施行後、教職員名簿は廃止に。

事実上、K先生とは、連絡がとれなくなってしまいました。今、どこの市で、教えているのかも、わかりません。K先生は、現在55歳。あと5年たってしまえば、定年退職。

大好きだった、K先生。
人生の大切なことを教えてくれた、K先生。
「心の財産」になっている、K先生。

K先生とは、事実上、もう会うことが出来ません。連絡をとる方法は、無くなり、関係が切れてしまいました。しかし、「K先生との縁」は、切れていないと思っています。教え子の私たちの中に、いつも、忘れずにいるのですから。それが、「人の縁」だと思います。

今でも、旧友と会えば、K先生のことを思い返し、三人とも、温かな気持ちで、いっぱいになっています。そして、これまで、人生の中で、幾度となく、K先生のことを思い返しては、温かな気持ちで、全身が包まれていたか、わかりません。

K先生とは、もう、お会い出来なくとも。今でも、K先生のギターは、私の心に鳴り響き、温かく全身を包んでくれています。

作成日:2014年2月3日 屋根裏の労務士

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