コラム Column

「アナログ世界での資料作成」

今年の4月に、高年齢法の改正がありました。定年が60歳のクライアントについては、就業規則と協定書を変更の打合せをさせて頂きました。

高年齢法は、7年前にも改正がありました。今回の改正に伴う説明資料を作成するために当時の資料をベースに作成しようと考えました。7年前に作成したパワーポイントの資料。当時の資料を見て、愕然としました。

  • パワーポイントの資料が、美しくないからです。

当時は、良く出来た資料だと思っていました。一枚一枚、パワーポイントで、時間をかけて作成した、力作だからです。当時、クライアントからも、良く出来た資料だと誉められたものです。

  • 7年間という月日は、長い。

その間に、たくさんの資料を作成しました。その中で、日々、美意識が、洗練され、研ぎ澄まされていく。今では、当時の資料は、使い物にはなりません。今回、法改正の資料をゼロベースからつくり直しました。

完成した資料を見て、自分でも、中々、美しく出来上がったと自画自賛。クライアントからの評判も上々でした。特に、デザイン会社とコンサルティング会社の役員から資料の出来栄えを、誉めて頂き、子供のような心持で嬉しくなりました。

このクライアントの方々は、プレゼン資料作成のプロ。高いレベルのプレゼン資料を日常的に作成している企業だからです。今回、多くのクライアントから、喜んで頂き、何日も、徹夜しながら、格闘した日々が報われる想いでした。人から喜ばれ、感謝させること。何よりの自分の喜びとモチベーションになります。その中で、あるクライアントから、次の質問がありました。

  • 「どこかで、プレゼン資料の作り方を教わったのですか?」

士業は、ベタ打ちした文章の資料を作成する印象があり、チャート図やイメージ図を挿入したようなプレゼン資料は、見かけないというのです。恐らく、私のプレゼン資料の作成能力のベースは前職にあると思います。

私の前職は、建築屋です。特殊な注文住宅建築を手掛けていました。毎回、プレゼン資料を作成するのは、重要な業務の一つ。イメージ良く、見栄えのあるプレゼン資料をつくることは、必要不可欠のスキルなのです。周囲も資料をつくるのは、上手い。

当時、会社の標準仕様のプレゼンツールは、パワーポイントで標準設定されていました。しかし、私が手掛ける案件は、特殊仕様が多かったので、標準設定におさまりませんでした。

会社が用意したパワーポイントでは対応できず、ひとつひとつイメージ資料のプレゼンをアナログの切り貼りで、つくり込んでいたのです。このアナログの手法で、資料を作成していたことが現在の資料作成における能力のベースになっていると思います。

パワーポイントで資料をつくるのも大変ですが、切り貼りで、資料をつくるのは、更に大変。膨大な手間と時間がかかります。更に、毎回毎回、ゼロベースからつくる手間があります。

当時は、日常的に、何かカタログがあれば、斜め読みをして、使えそうなイメージ写真は切り抜き、保管していました。日頃から、たった一度のプレゼン資料をつくるための素材となる部材や資料を、見つけては、あれこれ、イメージを膨らませていたのです。

何より、次々と見ていたカタログ自体が、プレゼン資料を作成するための教科書でもありました。カタログに掲載されている写真。その配置やイメージ図のつくり方。多くのカタログから、散々、勉強させて頂きました。

現在のデジタル資料の作成にはこのアナログ世界で、培った能力が、ベースになっていると思います。

最初からデジタル資料ありきではないのです。ソフトの使い方や技術的なことはあくまでも、プレゼン資料作成の上っ面のことでしょう。アナログ世界での強みが、デジタル化でのベースなのです。上記と同様の例で有名なのは下記です。

  • セブンイレブンのPOSシステム

現在、POSシステムだけの性能だけなら、セブンイレブンは、他のコンビニと大差ないでしょう。システムを開発したエンジニアの引き抜きもあるし、システムは、すぐに模倣されてしまうからです。しかし、セブンイレブンは、模倣をされても、他の追随を許さない。

これは、セブンイレブンが、POSシステムを導入するだいぶ前から、レジのカウンターで、商品が販売される度に、「正の字」を書いて、アナログの世界で、データ収集をして、商品管理を行っていた企業文化にあると言われています。

POSシステムの性能ではなく、企業文化に、アナログの世界で培った商品管理におけるDNAの血が、脈々と流れ、受け継がれているのです。恐らく、アナログ世界を飛ばして、便利なシステムだけを導入出来たとしても、現在のセブンイレブンが持つ、絶対的な企業文化の強みとなることは無かったでしょう。

デジタルの世界は便利です。現在、多くのビジネスモデルで、デジタル化は避けられません。しかし、アナログの世界の中でしか身につかないもの。実は、ビジネスの世界では、意外と多い気がします。企業文化の強みとは、アナログ世界の中から生まれ、その中で育っていくような気がするのです。

作成日:2013年4月22日 屋根裏の労務士

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