コラム Column

「マイナンバー制度を普及させるためには!」

5月から、雇用保険の手続きに必ずマイナンバーの記載が必要になります。3月から4月に雇用保険の手続きをした企業は5月から必ずマイナンバーが必要となる旨のリーフを頂いたはずです。

弊社もマイナンバーのやりとりする方法に関してあれこれとノウハウや知恵がたまってきました。マイナンバーのやりとりに関して、弊社とクライアントの双方で知恵を出しあい、日々改善をしながら、だいぶ慣れてきました。

平成27年10月からマイナンバーが順次送付されました。平成28年1月1日からマイナンバーの対応が開始。かれこれ、マイナンバーの対応が始まってから、2年半以上の月日が経過します。マイナンバーの導入に向けて、クライアントの皆様とお打合せや研修をさせて頂いてから、3年以上の月日が経過することになります。

当時、マイナンバーの取扱いに関して、内閣府の方も走りながらの対応で、解釈や運用に関して変更に次ぐ変更でした。小生の方も、連日、内閣府に問い合わせをして、後日回答を頂いていました。

マイナンバーの取扱いが開始された後も行政の方も手探りで対応している状態でした。ハローワークでは、申請書類にマイナンバーを記載しなくても未記載の理由などについて特段記載する必要もなく手続きが受理されていました。

これまで行政はマイナンバーの受理について消極的でした。住民票の写しが必要な手続きに関して、マイナンバーが記載された住民票の写しでは受理してくれませんでした.

国はマイナンバー制度を普及されるためにマイナンバーカードの作成を呼びかけています。しかし、マイナンバーカードの交付枚数は約1,230万枚と低調。人口比で9.6%しか普及していない状況です。マイナンバー制度が国民から支持され、受け容れられているとは、お世辞でも言えない状況です。

当初はマイナンバーカードの申請は面倒で手間がかかりました。そこで、現在はマイナンバーカードの申請はパソコンやスマフォからでも申請が出来るようになりました。

国はマイナンバーカードを普及させるために健康保険証の代替となるシステムも検討している様です。

被保険者証の発行までにタイムラグが発生しなくなるので電子申請で被保険者資格を取得して受付が完了すれば、手元のマイナンバーカードが被保険者証として使えるようになるわけです。また、退職時も、被保険者資格を喪失する手続きが完了すれば、その時点で保険証としての機能がなくなるため、従来の様に被保険者証を郵送して返却するやりとりが無くなります。

上記は、一見すると便利な様に思えますが、普及するまでには、まだまだ時間を要すると思います。

そもそも、マイナンバーカードを作成したくない人はマイナンバーカードを財布に入れて持ち歩くことを考えていないのです。仮にマイナンバーカードを発行した場合、マイナンバーカードを紛失するリスクは財布を無くすリスクと同程度にあることになります。

マイナンバーカードが普及すれば、クレジットカードと同じ様に、便利になると言われていました。しかし、国が想定していた以上に日本人はマイナンバーに敏感であり、デリケートな内容でした。

マイナンバーの通知カードを携帯している人は皆無。ほとんどの人が自宅に厳重に閉まっているのが実情。つまり、ほとんどの人はマイナンバーを積極的に使うつもりがないということです。

国民が納得しないままに、強制的に施行されたマイナンバー制度。市民団体はマイナンバー制度の廃止を求めて裁判まで起こしています。

マイナンバーの取扱いが始まった最初の頃、都内のあるハローワークでは、『マイナンバー取扱い中』という札を出して、蚊帳のようなシートを被りながら対応していました。

ガイドラインで定めた安全管理措置を踏まえた対応なのでしょうが、正直、何か滑稽に見えていました。安全管理措置を踏まえた適正な対応をしているというより、国民から受け容れられていないという印象を受けました。何か寂しさの感情も起きてきました。

シンクタンクの試算では、マイナンバー制度の導入では初期費用は2,000億円から4,000億円ほどとされています。更に、年間の管理運営費に数百億円かかるとされています。

上記のようなコストが発生しても、社会的に捉えてメリットが大きいためにマイナンバーが導入されたはずです。どんな制度でも、メリットとデメリットがあるものです。

日本のマイナンバーは、アメリカなどの諸外国とは異なり日本独自の戸籍という考え方がベースにあり、税金の納め方や社会保障が、それに紐付く形で制度設計がされています。諸外国の制度を先行事例として参考した上で、住基カードの失敗を踏まえて、制度設計されたのが現行のマイナンバー制度だといえます。

現行では、国民の90%以上の人が下記を選んでいるとも言えます。

  • マイナンバー制度を利用した場合の利便性より
    手間であっても情報漏えいなどのリスク回避

マイナンバー制度について国民が支持していないということです。マイナンバーの導入により、国は国民を管理しやすくなったかもしれません。一方、現行では国民の多くは手間な対応が増え、情報漏えいのリスクが増えただけという印象でメリットを感じていません。

小生は、マイナンバーに関して、正直、日本人の情緒には馴染まないと思っています。しかし、日本のような巨大で複雑な社会であれば何らかの番号制度は必要だとも頭では理解をしています。馴染まないけれど馴染んでいくしか無いと思っています。

マイナンバーを普及されるためにはマイナンバーカードを普及させることが必須。そのためには、下記が必要になるはずです。

  • 国民がマイナンバー制度の導入により
    生活が便利になったという実感を
    持って頂くサービスを実現すること

マイナンバー法を施行させることは出来ても、制度の利用を強制的にさせることは出来ません。マイナンバー制度の導入により、国民の誰もが便利になったという実感を持って頂く対応が制度の普及には大切になると思います。国の視点での管理の利便性だけの強制性だけではマイナンバーは国民に普及しないと思うのです。

企業の労務の対応で、新しい人事制度を策定しても、制度を策定しただけで実際に導入させていないことなど。珍しいことではありません。大手の人事コンサルティング会社に依頼し、高額な費用と時間をかけて制度を策定しても、実際に運用されていないことなど、よく、見かけることです。

何でも新しいことを導入するとき、初めは戸惑うし、馴染まないこともあるものです。個人的には嫌だと思うことでも、全体のことを考えた場合。受け容れていく寛容さや馴染んでいく前向きさ。必要なことだとも思っています。

そのためには、制度の押しつけの様な強制ではなく、納得感を得るための説明責任を果たして、理解を得ていくための努力が大切になるのだと思います。

まだ、マイナンバーの行政機関等の相互連携は始まっていません。相互連携が始まり、行政手続きが簡素化されてくれば、国民はマイナンバーを受け容れて、マイナンバーが普及してくるかもしれません。

いずれにしても、マイナンバーの普及には国の視点での管理の利便性だけではなく、国民視点での対応が必要であり、まだまだ時間がかかりそうです。

作成日:2018年5月14日 屋根裏の労務士

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