コラム Column

「改正パートタイム労働法」

平成27年4月1日から、パートタイム労働法の改正がありました。労働者に占める非正規社員の割合が、全体の4割近くにもなりました。国税庁の民間給与実態調査によれば、平成24年時点で、正規社員の平均年収は467万円。これに対し非正規社員は168万円。非正規社員の給与は正規社員の36%にすぎないのです。

今回のパートタイム労働法の改正の目的は下記でしょう。

  • 日本の雇用に、「同一労働・同一賃金」の意識を取り入れること。

欧米諸国では、「同一労働・同一賃金」が確立されていると取り上げられることが多いと思います。当社のクライアントで、欧米諸国でも事業を展開している外資系企業の方に実情を聞いたことがあります。

現地で長く勤務した経験があるクライアントの話では欧米諸国でも、理想的な形で、「同一労働・同一賃金」にはなっていないと言っていました。ただ、日本と明らかに違うのは、非正規社員という雇用形態が、企業の身分制度の様な形で、何かやたらと低い地位にはなっていないそうです。日本では正規社員と非正規社員では歴然とした格差があり、その点では、欧米諸国とは明らかに異なると言っていました。

日本の非正規社員の雇用状態を是正するために施行される今回のパートタイム労働法の改正。改正は大きく下記の3点。

  • 「パートタイム労働者の公正な待遇の確保」

  • 「パートタイム労働者の納得性を高めるための措置」

  • 「パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設」

「公正な待遇」、「納得性」、「実効性」の3つです。

  • 「パートタイム労働者の公正な待遇の確保」

有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが正社員と同じ場合、正社員との差別的取扱いが禁止されました。

具体的には、「職務の内容が正社員と同一」、「人材活用の仕組みが正社員と同一」の場合は、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用をはじめ全ての待遇について、正社員との差別的取扱いが禁止となりました。

非正規社員という何か身分的な理由で、労働条件に差別をつけてはいけないということです。非正規社員を使い勝手が良い様に、正社員と同じ労働をさせて、待遇は低くするということは差別的な取扱いとして禁止ということです。

  • パートタイム労働者の納得性を高めるための措置

パートタイム労働者を雇い入れたときには、実施する雇用管理の改善措置の内容を事業主が説明しなければなりません。「納得性」という言葉の意味自体が、わかりにくいです。説明する義務と併せて、その説明について理解ができるような説明を行っていくという意味で捉えています。

会社に説明を求めたことによる不利益な取扱いは禁止されています。また、今回の改正でパートタイム労働者を雇用したとき、労働条件通知書等に下記の件を明記することが義務となりました。

  • 「相談窓口」の記載
    相談担当者の氏名、役職、担当部署など

相談窓口を労働条件通知書等に明記することになります。今後、説明について、問い合わせが増えてくると思います。正直、日本の雇用の実態は、均等待遇などは出来ていません。出来ていないから、今回のような改正があるとも言えます。

社会とは、いつでも、未成熟な状況であり、理想的な状態にはなっていません。いつの時代でも、どこの国でも、理想的には整備されていません。いつも、どこか問題点があり、不公平感を抱えている中での対応です。

そして、永久に理想的な状態にはならないでしょう。考えられうる理想的な状態。それを、『理想郷』と言うのです。現実世界では決してならない、机上の空論の世界。

大人というのは、いつでも、未成熟で、未整備な状況にある現実を、受け止めて、受け容れて対応していくことができる人を言うのだと思います。何か、机上の知識を知っている人ではありません。

私は、今回の改正で新たに設けられた「相談窓口」の記載。担当者については、現実と向き合うことが出来る大人をきちんと窓口に置くべきとの考えを持っています。

子供というのは、現実に対して、きちんと向き合うことが出来ないのです。理想的なことを主張したり、法律効果の様な話しかできず、机上の空論で、象牙の塔にいることに、気が付かないのが子供なのです。

つまり、子供というのは、『べき論』と「現実論」の区別。まだ、理解出来ないし、それを受け止め、受け容れる様な精神性。持ち合わせていないのです。上記の様なことは、年齢を積み重ねれば、自然と身に着く様なものでは無いと思います。

定年退職を迎える様な年齢になっても、『べき論』と「現実論」の区別もつかない様な人。決して、珍しくないのです。いつまで経っても、精神が成熟しないで、机上の空論ばかり。せいぜい、法律にそった、マニュアル的な対応しか出来ないのです。

人が構成する社会というのは、理想的に綺麗になっていません。当然に、労務というのも、綺麗ではありません。人や組織を取り仕切る労働法というのが、穴だらけで未整備だということ。当然のことなのです。

今回のパートタイム労働法の改正。非正規社員から、会社として回答を窮する様な質問。今後、増えてくると思います。

人事の担当者は、上記を頭に入れておき、より現実と向き合い、従業員と向き合い、上手く調整を図っていくことが、大切になってくると思うのです。変わりゆく社会の中で、人事の仕事が難しくなっていくこと。日々、その難しさを痛感しています。

作成日:2015年4月13日 屋根裏の労務士

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