コラム Column

「基金の今後の対応について」

AIJ投資顧問の年金資産消失問題を受けて「厚生年金基金制度見直し法」が2013年6月に成立、2014年4月から施行されました。この法律が施行されたことにより、ほとんどの基金が、無くなることになります。この法律の正式名称は、下記です。
  • 「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための
    厚生年金保険法等の一部を改正する法律」

皆様は、この正式名称を見て、どのように感じましたか?私は、この正式名称を見たとき、次のように、しみじみと感じていました。

  • 『基金が、公的年金として、
    健全ではなく、信頼性が無いこと』を
    政府が、事実上、認めたということ。

今後、基金の新設は、当然に、認められません。代行割れしている基金は、5年以内に「解散」。代行割れしていない基金でも、10年以内に、「代行返上による他制度への移行」か「解散」。基金の現有資産額が「代行部分の1.5倍以上ある」又は「最低積立基準額(以上ある」 基金は、「代行返上による他制度への移行」か「存続を認める」。

昭和41年に発足した厚生年金基金制度。ピーク時は、1,883基金がありました。その後、数を減らし、平成25年5月現在では556基金。現在残っている556基金については、「代行割れ」が常態化。少子高齢化の社会で、加入者は減少、受給者の増加。構造的な問題を抱えている状態です。

弊社のクライアントが加入している基金でも相次いで、今後の方針について、説明会が実施されています。基金は、加入基金ごとに、すべて規約が異なり、制度の運用なども異なります。基金に加入しているクライアントは、必ず、説明会に参加して、情報収集をして下さい。

基金に加入している多くの企業は、巨額な簿外債務を抱えているのが実情。基金の特別掛金は、大変、頭の痛い経営問題になっています。弊社のクライアントで、説明会に参加した方から、次のようなご相談がありました。

  • 「今後、基金は、DBに移行する方針ですが、
    説明会に出ていても、難しい内容で、
    基金側からの説明が、理解が出来ません。」

厚生年金基金は、公的年金の上乗せの制度。公的年金制度だけでも理解するのは、難解なことです。基金は、その難解な制度に、さらに、複雑に制度があるのです。

さらに、企業年金の会計制度は、特殊な専門用語で、公認会計士であっても、基金の会計を理解するのは、大変だそうです。特殊な専門性を有する年金数理人でなければ、基金の財政状況を理解することは難しいのです。

長野の建設業基金で、24億円もの金額を使い込んでいた事件。長年にわたり、不正が分からなかった原因。それは、基金の会計制度が、難しく、特定の人しか、分からないことにもあると思います。

基金は、特殊かつ個別的な制度。制度を理解して、全体を掴むことは、容易なことではありません。1時間程度の説明会に参加しても、簡単に理解は、出来ないと思います。

しかし、説明会に参加して、基金の担当者からの説明が、分からないのは、制度自体が難しいことだけではありません。分からないのは、次の理由であることが大きいのです。

  • 今後の対応に関して、
    加入企業が、「任意脱退」することが、
    基金からの説明で、全く無いからです。

基金に加入している企業は、「任意脱退」を含めて今後の基金の方向性を検討して、悩んでいます。基金の財政状況が良いうちに、出来れば、「解散」を望んでいることが多いです。しかし、基金側からの説明では、「存続すること」を前提で、説明がされているのです。

「任意脱退」や「解散」という前提が無い上で、今後の方針に対して、説明がされているのです。つまり、基金側からの都合の悪いことには、一切、触れずに、自分たちの都合の良いことだけしか説明しないのです。基金側と企業側で、「説明で求めている前提が違う」のですから、理解が噛み合うはずが無いのです。

弊社のクライアントが加入している基金は、代行返上をして、DBに移行する方針の基金が多いです。基金の方でも、DBへの移行は、初めてのことであり、手探り状態で対応しているのが実情です。今後、移行に伴い、様々な調整、検討項目が出てくるはずです。

基金の対応は、大変、難しい経営問題です。説明会には、必ず、参加して、必要な情報を、自分たちから、積極的に聞き出して、情報収集をしておいて下さい。

作成日:2014年8月25日 屋根裏の労務士

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