コラム Column

コロナの対応 その20 「その7 雇用調整助成金」

東京都は6月11日、「東京アラート」を解除してくれました。休業要請の緩和措置は「ステップ2」から6月12日に「ステップ3」に移りました。「ステップ3」に進んだことで弊社のすべてのクライアントが営業を再開できるようになりました。

また、6月12日に参議院で第2次補正予算案が可決されました。今年度の第2次補正予算案で追加の歳出は一般会計の総額で下記の金額です。

  • 31兆9114億円

補正予算としては過去最大の対応になりました。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、雇用調整助成金の拡充が盛り込まれました。6月13日に、雇用調整助成金に関する新しい資料が更新・公開されています。

雇用調整助成金の骨格となる基本的な考え方には変更はありません。既に、多くのメディアで報道されており知らない人はいないと思います。今回、特例で下記の対応になりました。

【雇用調整助成金の特例対応】

  • 雇用調整助成金の上限額を8,330円から15,000円に引き上げ

  • 解雇等せず雇用の維持に努めた中小企業への助成率を10/10(100%)に拡充

  • 令和2年4月1日から9月30日までの期間を1日でも含む賃金締切期間 (判定基礎期間)が対象

今回の補正の目玉は雇用調整助成金の上限額を8,330円から15,000円に引き上げてくれました。

<ケース1>
● すでに支給申請をしており、まだ支給決定されていない企業は、下記の対応になっています。

  • 追加支給の手続きは「不要」

  • 差額(追加支給分)も含めて支給される

<ケース2>
● すでに支給決定された企業は、下記の対応になっています。

  • 追加支給の手続きは「不要」

  • すでに支給した額との差額(追加支給分)は、後日支給される

  • 差額(追加支給分)は令和2年7月以降順支給される

更に、下記の対応までも用意してくれています。

<ケース3>
● 支給申請が済んだ会社で、過去の休業手当を見直し(増額し) 従業員に対し、追加で休業手当の増額分を支給した企業は、下記の対応になっています。

  • 追加支給の手続きが「必要」です

  • 詳細は添付資料を確認して下さい。

安倍政権は、大盤振る舞いのモードになりました。雇用調整助成金の15,000円に引き上げ対応で、自民党の議員は下記のように、自信満々で説明をしています。

  • 月額33万円(15,000円×22日)の給付金は
    世界最高額の英国を超える手厚い対応

安倍政権への支持率の急落を受けて、当初の30万円の限定付き給付から一転して大判振る舞いになりました。しかし、15,000円の上限額には要注意は必要です。

現行の8,330円から15,000円に上限額を引き上げたとしても、そもそもの支給額の基準のベースになるのは下記の金額を使うからです。

  • 労働保険料の確定保険料申告書の額(雇用保険料分)

昨年度の雇用保険加入者の平均加入者数に年間の所定労働日数で乗じた数字で昨年度の雇用保険料の確定保険料で計算した賃金額を割ることにより、「雇用調整助成金上の平均賃金」を算出して支給額を決めていくのです。

下記の計算方法になります。

  • 「雇用調整助成金上の平均賃金」
      = 
    (昨年度の雇用保険料の確定保険料で計算した賃金額)
      ÷
    (昨年度の雇用保険加入者の平均加入者数)×(年間の所定労働日数)

20人以上の企業で雇用保険に加入している人は、支給のベースとなる金額は変更ができないのです。

15,000円の休業手当を支給しても、ベースとなる「雇用調整助成金上の平均賃金」が15,000円に満たない場合、その金額が上限額となり15,000円は支給されないのです。

一方で雇用保険に加入していない人については、申請方法が異なり、実際に休業手当で支給した金額を使うのです。非正規の方を多く雇用しているケースでは、そもそものベースの上限額が15,000円に満たない場合15,000円の休業手当を支給しても日額15,000円は支給されません。

それでも、弊社クライアントは、上限額の15,000円が支給されるケースの方が多いと思います。

「年間の所定労働日数」を特定させることも人数が多くなれば、骨の折れる対応です。その骨の折れる対応について特例の緩和措置が設けられました。しかし、実際の審査現場では、平均賃金を使って休業手当を支払っているので下記のような判断をされることもあるというのです。

  • 「年間の所定労働日数」ではなく
    「年間の歴日数である365日(366日)」を使って
    修正計算がされて支給される

平均賃金に満たない場合、そもそも助成金額支給されません。今回は、20人未満の企業であれば、平均賃金に満たない場合でも特例で支給してくれる対応になりました。

労働基準法上の正しい平均賃金は3カ月間の暦日数を使うのです。暦日数で平均賃金を使って休業手当を支給したのであれば、「雇用調整助成金上の平均賃金」の算出でも「年間の所定労働日数」ではなく「年間の暦日数」を使うべきという理屈が審査の方で出てくるようです。

実は、6月12日の金曜日に、休業要請業種に該当しているクライアントの雇用調整助成金を労働局に申請してきました。必死になって作成した申請書を印刷して、揃えるだけで1日作業の量です。

1カ月前に予約をしての申請対応です。現在は相談対応について要予約のうえ原則30分に限定していました。13:30に予約をしていたので10分前には着いていました。必要事項に記載して受付を済ませました。担当官が決まるまでに待っている間に、祈るように下記を念じていました。

  • 「どうか、出来る担当官に当たりますように!」

当たり前ですが、サービスというのは均一ではないのです。誰が出てくるかによって、全く展開も効用も変わってくるのです。

今回のような難易度の高い助成金の申請。相当出来る担当官に当たらないと良い展開にならないのです。そして、通常は窓口で最初に出てくる人というのは。出来る人ではなく、出来ない人が出てくるのです。

相談ではなく、申請だったからかもしれません。出来る担当官に対応して頂くことが出来ました。

担当官に、こちらの対応が伝わるように論理的かつ綺麗に準備はしてあります。そして、何より、曖昧にしておくところは曖昧にしてあります。

  • 机上と現状では、分かり合えないところがあって当然。

動いている現実を机上の法律ですべて整備が出来ているわけはありません。出来る担当官に当たれば、大人の対応を理解して、平行線のまま、触れずに終わりにしてくれるのです。

事務的に役所対応をするのではなく、良い形になるように協力をして頂けるのです。担当官と小生の方で、現行の制度の取り扱いや今後の対応を予測しながら。二人で確認しながら今後の審査の中で最大額が支給されるように検討。

役所の人というのは、何でも知っているわけではないのです。お互いに情報交換をしてお互いに知恵を出しながらです。

  • 僥倖でした。

最大限、協力してくれる出来る担当官に対応して頂けました。2時間にわたる確認作業をしていく中で担当官と仲が良くなり、下記のようにアドバイスをして頂けました。

  • 「自分は、良く理解できました。」
    「審査では、また、別の者が対応します。」
    「他の者でもわかるように、
     この部分は差し替えた方が良いです。」
    「出来るだけ早く私宛に郵送して下さい。」

15,000円が参議院で可決されて、厚生労働省からの資料が正式に出て来た後に。申請した方が良いかも相談しました。まだ、15,000円での支給は確定していません。6月12日付けで受理されていれば、現行の8330円での申請でも15,000円での取り扱いになるのは間違えないとまでは言えないが間違いないと考えて良いとの回答でした。

とりあえず、無事に受理されました。今後の見通しもつきました。労働局を出た後、しばらくの間、うずくまるように座り込んでいました。

政権は支持率の急落で、大盤振る舞いの補正案です。一方で、官僚の方は、支出を抑えて来る限りの緊縮対応なのかもしれません。

イロイロつながっていて簡単に全体像を捉えることが出来ないのがこの雇用調整助成金なのです。10年ぶりに対応しましたが、骨の折れる助成金でした。

厚生労働省のURLが更新されています。また、厚生労働省の方もバタバタしているようで下記の参照URLを間違えているようです。

  • 「雇用調整助成金の受給額の上限を引き上げます」 R02.6.12掲載

厚生労働省の方にはレビューをしておきます。

作成日:2020年6月15日 屋根裏の労務士

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