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「人生の砂時計」

先週、訃報がありました。亡くなったのは、サラリーマン時代の親友。彼とは、寮も一緒で、当時、毎日のように、顔を会わせていました。そして、何より、右も左もわからない、社会人一年生の時から、一人前になり、退職するまで。
  • ともに、心を通わせて、
    苦しみを分け合い、困難を乗り越え、
    喜びを共有して、成長してきた、親友。

退職後、しばらく、連絡を取り合っていました。しかし、お互いの業界も異なり、休みの日も違いました。日々の忙しさの中で、何となく、疎遠になっていました。昨年、5年ぶりに、二人だけで、再会。今になり、振り返れば、それが、最後。

8月のお盆の時期に、体調が悪いので、検査入院。検査の結果、癌が進行していて、既に手遅れの状態。もはや、何も出来ないまでに、病魔に蝕まれていたのです。本人は、どこまで、告知されていたのかは、分かりません。しかし、最後の1週間前ぐらいには、確実に、「死の告知」を受けていました。

いつ死んでもおかしくないまでの状態の時に。私の方にも、連絡がありました。しかし、その翌日に、彼は息を引き取りました。

人間は、「自分と関係がある人の死」について。当事者にとって、何よりも、重大事項です。一方、人間とは、『自分とは関係がない人の死』について。実は、ほとんど関心がありません。

  • 「心を通わせた、親友の死」

訃報を聞いて、何より心が重くなりました。しばらくの間、真っ暗の闇の中にいるようでした。普段、毎日を過ごす、日常生活の中で、彼と接することは、ありません。しかし、親友とは、連絡を取り合おうと思えば、いつでも、連絡をとり、会うことが出来ます。

そんな繋がりこそが、人が生きていく上での大切な財産。今日を生き切り、明日を生きるための元気の源。ソーシャルメディアが発達して、たくさんの人と繋がることが出来るようになりました。しかし、本当の繋がりとは、実は、少ないような気がしています。

心が繋がっている人。人生の中で、数多く、いません。だから、親友なのです。死は、その繋がりを、無情に、断ち切ります。もう、彼とは、会うことができません。

日本人男性の平均寿命が80歳を超えたというニュースを見ました。確か、今年の7月の末頃だったと思います。平均寿命80歳と聞くと、自分も80歳まで生きることが出来ると、何となく、思ってしまいます。

しかし、私は、同性代の友人などを、既に、何人も失っています。人間、逝くときは、逝く。どんなにジタバタしても、死は、確実に迫ってくる。だから、自分の命だって、実のところ、分からない。

体の調子が悪く、熱を感じたときに、体温計で、熱を計ります。今、使っている体温計は、電子体温計で、時間も自動設定。ピーと、音がなり、計り終わるのを教えてくれます。以前は、アナログの水銀の体温計で、3分間の砂時計で、計っていました。

熱があり、体調が悪いときに、砂時計を3分間、じっと見つめていると、直観的に、次のことを、感じていました。

  • 時間は、無限ではなく、有限であるということ。
    そして、何より、命は、有限であるということ。

さらさらと、落ちていく、砂時計の砂。体調が悪い時に、この落ちていく砂を見ていると、自分の命が、削られ、段々と、失っていくような気がしてきます。しかし、実は、これは、『気がしているだけ』ではなく、「実際に失っている」という人生の真理。

人間の命は、砂時計の砂が落ちるように、さらさらと、下に、落ちているのです。この砂が、すべて落ちたら、人生は終わり。つまり、死です。

もしも、自分が、「余命30日」を告知されたら、何をするかと考えます。

遺書を書き、身辺を整理。周囲の人が、自分がいなくなっても、できるだけ大丈夫な状態にしておく。お世話になった人に最後の挨拶。そして、家族と時間を過ごして、自分と向かい合って。静かに、そして、瞬く間に、30日が過ぎていくと思います。

一日、一日、大切に、生きていく。
一日、一日、慈しみながら、生きていく。
かけがいのない一日を、生きていく。

伝えておきたいこと。
大切な人たちに、一人一人に。
しかと伝えて。
自分に語りかけて。

そして、死んでいく。

しかし、健康な時、人間とは、誠に、鈍感なものです。『余命30年』と告知されても、特段、何とも思わないからです。「余命30日」と『余命30年』、ある意味においては、本質的に、違いはありません。

  • 「かけがいの無い時間」を失うという点では、
    同じではないでしょうか。

大切なことは、そのことに、どの程度、覚醒して、気が付いているかでしょう。

誰にでもある、「人生の砂時計」。その砂は、さらさらと、確実に落ちています。親友の死に、「限りある時間と命」について、週末に、一人、考えていました。

友と過ごした日々を思い出します。
友との別れ、受け容れます。
そして、友の冥福を祈ります。

作成日:2014年10月6日 屋根裏の労務士

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