コラム Column

「自分だけにしかない経験」・・・(元プロ野球選手 広澤克実氏)

先週末、クライアントの懇親会に参加してきました。箱根のホテルで180人近くの関係者の方々が集まり、講演会や宴会を大々的に開催する懇親会です。

今回の懇親会は50回目となる節目となる懇親会です。クライアントは創業54年を迎える企業です。懇親会を開催しなかったのは下記の4回だけということのようです。

  • 昭和天皇崩御、リーマンショック、
    東日本大震災、箱根火山の噴火

開催しなかった4回は、いずれも外部要因のためです。

小生もこれまでに何度も参加させて頂いているのですが、毎回、新しい発見や気づきがあるのです。多忙な経営者の方々を集めて、50回も懇親会を続けていくことが出来るということ。

社長や取締役の「人間力」はもとより、50回にもわたり、繋いできた様々な「努力と知恵」。そんな「努力と知恵」があることを感じます。

やはり、50回にもわたり、たくさんの人を集めて参加者から愛されるのには理由があるのです。何より、社長や取締役が人を集めて、その場を盛り上げる自信があるのだと思います。

そんな「人間力」と「努力と知恵」が凝縮した懇親会に、今年は、下記の方の講演がありました。

  • 元プロ野球選手の広澤克実氏

広澤克実さんはヤクルト、巨人、阪神の三球団で活躍。三球団で4番を務めた選手です。巨人と阪神で4番を務めた唯一の選手です。広澤克実さんのプロ野球19年間で、生涯通算成績は下記になります。

  • 1,736安打、306本塁打、2割7分5厘

巨人への移籍後は怪我があったり、出場機会に恵まれない不運もありました。FAをせずにヤクルトに残っていたら、間違いなく2,000本安打は達成していたはずです。プロ野球選手は、現役時代の生涯通算成績により引退後の職業生活が左右されてしまう一面もあると思います。

広澤克実さんは、2,000本安打は達成できませんでした。しかし、現役中に培った下記を武器にして、解説者や講演活動などで活躍しています。

  • 「自分だけにしかない経験」

通常、著名人の講演というのは、『自分の成功体験』をテーマにして講演をするものです。しかし、クレバーな広澤克実さんは、他の講演者や解説者とは視点が違います。

『自分の成功体験』ではなく、「自分だけにしかない経験」を武器にして講演をされているのです。「自分だけにしかない経験」というのは、下記のことです。

  • 「野村・長嶋・星野監督から直接学んだこと」

優れた野球人である野村・長嶋・星野監督の3人。3人は同時に優れた人材育成者として、数多くの人材を育成して輩出させています。野村・長嶋・星野監督の3人から、直接指導を受けたのは野球界広しといえども、広澤克実さん唯一人しかいないそうです。

3人の指導者から受けた影響や教え。現在の人間・広澤克実を育て上げた恩師との思い出の秘話。広澤節で数多くのエピソードについて笑い交えて、熱く語って頂きました。広澤さんが講演されたのは、3人の名監督の人材育成の方法論です。

野球を通じて、数々の指導者との出会いがあった広澤さん。そんな数々の野球の指導者の中から、広澤さんが「野球の師」を一人あげるとすれば、真っ先に出てくるのが野村監督となるそうです。

野村監督の野球指導は、目からうろこの連続。野村監督は広澤さんに野球の基礎について、それこそ皮膚感覚になるまで、下記の野球理論を教えて頂いたそうです。

  • 野球には『見える力』と「見えない力」があること

『見える力』というのは野球の技術的な能力です。一方、「見えない力」というのは、頭を使って考える能力です。頭を使って考える野球が野村監督のID野球です。野村監督のID野球は、データに基づき頭を使って考える野球です。

ID野球について、「広澤流」に掘り下げて解説をすれば、下記のことを徹底させることだと説明していました。

  • 「こういう野球をやりたい、
    こういう野球を目指す」

目指すべき野球とそのための目的を明確にして、それを独自の野球哲学に基づいて原理原則を導き出して、理解をさせ共有させることに長けた指導者だったそうです。走れ走れの根性論でひたすら練習をさせる風潮があった時代に、「見えない力」を重視した画期的な野球理論をもった指導者であり、野球人であったそうです。

野村監督とは女性の趣味以外は、共感することが多かったと笑いながら話していました。

次に、ミスターこと、長嶋茂雄監督についてです。広澤さんは、長嶋監督について、下記のような解説していました。

  • 「長嶋監督から野球について教わった記憶がない!」

ミスターらしいと言えばミスターらしいのですが、今回、ミスターが凄いと感じたのは下記のことです。

  • 「ミスターのエピソードについて講演で聴いただけで
    観衆が笑顔になり、心温まる幸せな気持ちになること」

私は、ミスターの現役時代の活躍を知りません。しかし、ミスターの話をする人は、誰もが満面の笑みで、嬉しそうにミスターの話をするのです。

広澤さんも、ミスターの話をしている時が、何か嬉しそうであり、どこか幸せそうなのです。そんな広澤さんの嬉しさや幸せが、観衆にも伝わってきて、観衆の方も何か嬉しくなってくるのです。

自分がその場に居なくても、周囲の人々に幸せな気持ちにさせるミスター。そんなミスターから、広澤さんは下記のことを教わったそうです。

  • 「プロとは何か?」

観客が「また野球場に来たい」と思って頂けるようプレーをすること。長嶋監督は、アマとプロの違いについて、次のように考えていたそうです。

  • 自分が笑顔になるために野球をするのはアマ

  • 他人を笑顔にさせるために野球をするのがプロ

プロとしての在り方を教えてくれたのが長嶋監督だったそうです。

最後に所属した阪神で出会ったのが星野監督です。星野監督と広澤さんは、明治大学の先輩と後輩でもあるそうです。

星野監督と先輩と後輩という関係であり、星野監督からイロイロと可愛がられていたそうです。星野監督の後輩。トラの愛称を持つ広澤さんのキャラ。イロイロな役回りがあったことは、その場に居なくても容易に察せられます。

講演では、星野監督と広澤さんとの絡みについて、爆笑のエピソードを広澤節で教えて頂きました。

星野監督は、タイプに応じて指導方法を心得ており、その人にあったメンタル指導をしていた様です。星野監督は、心・技・体の中で、とりわけ、「心」を重要視した監督。「心」というと精神論に思われがちですが、下記のような人材マネジメントに長けていたそうです。

  • 言葉の力により選手の「モチベーション」を引き出すこと

「名選手名監督に非ず」という言葉があります。どんな偉大な選手であったとしても、引退した後であれば、選手として自分が模範となり、手本として行いを示すことは出来ません。

星野監督は、自分の気持ちについて言葉にして伝えて、人のやる気を引き出し、人を育てる達人の監督だったそうです。

野村・長嶋・星野監督は、三者三様に特徴と良さがあり、すばらしい監督だったそうですが、3人には共通していることがあるそうです。

  • 「自分から何かを発信する力を持っていること」

3人とも、とても頭が良い人物だというのです。頭が良いというのは、人が知らない知識を知っているということではありません。問題や課題を分かっており、解決のために知恵を集めて、発信していく能力に長けた人物だということです。

何より、下記の3つの大切なことを熟知して、実践が出来た監督であったそうです。

  • 「勝つこと」

  • 「人材育成をすること」

  • 「指導者教育をすること」

どんなことを話しても、勝たなければ迫力が出ません。そして、勝つためには、人材育成が重要であり、指導者教育が大切になります。人材育成や指導者教育を勝つという過程の中で、遂行していくということでしょう。

「男はつらいよ」の映画に出てくる車寅次郎に顔が似ていることから、「トラ」の愛称を持つ広澤克実さん。人を楽しませ、和ませる話術。誰からも愛される憎めない性格。フーテンの寅さんと顔が似ているだけでなく雰囲気や性格も似ているように感じました。

野村・長嶋・星野という偉大な3人の監督から直接学んだ経験。偉大な3人の名監督からの学びのベースには「トラ」の愛称で人を和ませ、人に慕われる「広澤さんにしかない人間力」があります。

何より、「自分だけにしかない経験」に基づいた「広澤流」の独自のマネジメント論を持っており、日々向上に向けて、研究をしている姿勢も感じました。

作成日:2018年9月10日 屋根裏の労務士

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