コラム Column

「神々の国」

コロナの波が収束の方向で推移しています。一方、東京五輪・パラリンピックの方は収束しそうにありません。

森さんの発言は大問題なのは各種メディアで報じられていますので説明するまでもありません。小生も、失言を超えていると思います。しかし、物事というのは、それぞれの立ち位置で、見え方や捉え方は違います。

  • 両方の立場で考えて捉えることが大切

特に、日本というのは他の欧米諸国のように一神教ではなく多神教の国であり、本来、多様な価値観を認めてあうことを内在された国民性なのです。

世界に差別や問題がない理想郷のような国はありません。森さんの女性差別発言は容認されませんが、世の中の雰囲気ではなく、森さん側の立場でも考えることも大切だと思います。

持論ですので、不快な感情を頂く方も当然いると思いますので無視して下さい。オリンピックだけでなく、秋の衆議院選挙も近づいてきました。

組織委員会の会長の森喜朗先生が「女性蔑視発言」の責任を取る形で辞任をすることになってしまいました。ポスト森の後任人事を巡り、密室人事との猛批判を招いて川淵さんも辞退する展開。

そもそも、緊急事態宣言が発令される前はオリンピックの開催に関して、どのメディアの調査でもオリンピックの中止や延期が8割近くの国民の意思となる集計結果だったはずです。

会長だった森さんも、開催に向けて「今の時期に出来ないと言えるはずがない」と言っていました。その発言を踏まえたうえで下記の発言だったはずです。

  • 「オリンピック、ぜひ、どんなことがあってもやります。
     あまり具体的なことは言えません。
     これテレビがあるから言えないんですが、
     まあ、無観客、ということも当然想定しながら、
     いくつかのシミュレーションをしております。」

    「その無観客にもまた、いくらでも細かい部分はあります。
     要は、外国から来る一般のお客をどうやって水際で
     防げるかということです。」

    「選手、役員、その他関係者はですね、割といい。
     あとはアプリをみんな持ってもらって。
     今、認証カードで全部、
     自分の母国を出た時の写真が東京へ入ってくる。
     どの会場にも、その写真がいくというようなシステムを今、
     一生懸命、企業が考えてくれております。」

1年延期するだけでも、3000億円の追加予算が発生。既に、スポンサーやボランティアも決まっており、現実的に、簡単には中止や延期には出来ない状況に追い込まれています。

前回のオリンピック史上、初となる開催延期。延期が出来た背景には、トランプ元大統領が困っている同盟国の日本に助け船を出してくれたことが大きかったはずです。

しかし、そのトランプ大統領はいません。バイデン大統領は、東京五輪に関して対外的に常識的かつ大人のコメントしかしてくれていません。常識的な大人のコメントとは、当たり前ですが、『他人事のような立場』でのコメントです。

トランプ元大統領や森先生を擁護するような発言をすると、まるで、悪人のような印象を持たれます。民主主義国家では大手マスコミの力は、事実上、三権分立のその上に立つ存在です。

森先生は、失言が多いため、何をしても良い形で大きく報道されることはありません。加えて、産経新聞系列の新聞社出身ということも大きいと感じています。森先生が嫌われているのは失言の中でも下記の失言が大きいはずです。

  • 「日本の国、まさに天皇を中心としている
     神の国であるぞということを
     国民の皆さんにしっかりと承知して戴く」

2000年の神の国発言です。

当時、民主党は、「日本は神の国? いいえ、民の国です」と連日批判。共産党は、連日、赤旗で戦前の軍国主義を思い起こさせると批判。国民主権や政教分離の精神に反すると猛烈に批判していました。朝日新聞、毎日新聞だけでなく産経新聞を含めたあらゆるマスコミからは袋叩きにされています。

森先生は、あの発言のときも世間からの批判に対してあまりコメントはしませんでした。結果的に、総理大臣の辞任という形であの小泉純一郎総理への時代へと切り替わるのです。

あの時は、小生はサラリーマンをしていました。「日本は神の国」ということに、特に違和感はありませんでした。日本文化の神道を踏まえれば、当たり前すぎて、騒ぐことに不思議に思っていたぐらいです。

山には山の神、川にも川の神います。日本では便所にも便所の神がいます。神の国発言の10年後ぐらいに「トイレの神様」というCDが発売されてオリコンで1位になっていたはずです。

まさに、日本は神々の国であるということです。

  • 日本という国はそれぞれの業界に神技をもつような職人や技術者、専門者などがいて
    それぞれが、「持ち場持ち場で」誇りをもって、日々、鍛錬している国です。

日本というのは、そのような国柄ということです。

森先生が伝えたかったことは日本が多神教の国であり、異なる価値観や宗教観を積極的に捉えてもっと大切にすべきと発言したのです。発言の中に下記のコメントがあります。

  • …宗教というのは自分の心に宿る文化なんですから、
    そのことをもっとみんな大事にしようよということを
    もっとなんで教育現場でいわないのかな、
    信教の自由だから、触れてはならんのかな、
    そうじゃない信教の自由だから、
    どの信ずる神、仏も大事にしようということを、
    学校の現場でも、家庭でも、社会でも
    いわなければならないよということをもっと、
    私は、もっともっと、日本の国のこの精神論からいえば
    一番大事なことではないかとこう思うんです。…

現在のダイバーシティという多様性を大切にして多様な人材を積極的に活用しようという考え方に通じる意見です。あの場では、2年前にお亡くなりになられた哲学者の梅原猛先生もいらしたのです。

日本文化への造詣が深い人がいるような場であり「八百万の神の国」ということについて、分かっていることを前提にしたうえでの発言でした。

加えて、森先生は、あの発言の中でコロナ渦での環境問題対策に通じるような発言も日本文化の造詣を踏まえて説明しています。

  • …私は、有難いことに
    「森」という苗字を戴いておりまして、
    いまや日本だけでなく、
    世界中が環境の問題を語るには
    「森」を大事にしなくてはいけないでしょう。

    我々の子どもの社会から考えてみますと、
    やはり鎮守の森というものがあって、
    お宮を中心とした地域社会というものを
    構成していきたい。…

ラグビーワールドカップの誘致・大会の成功でも、あんなに頑張って頂いた森先生の尽力は、ほとんど取り上げられていません。日本ラグビー協会や日本スポーツ協会の会長を歴任した森先生のスポーツにかける並々ならぬ熱意があったのです。

2011年のスポーツ基本法の公布。2015年のスポーツ庁の発足。森先生の存在なしには円滑に進まなかったはずです。

10年ぐらい前、森先生は、「日本とロシアとの平和条約の礎」になるために、自身の親と同じようにロシアに骨を埋めることも表明しています。当時、ロシアの聴衆に強い感銘を与えました。しかし、日本のマスコミは新聞の小さな記事で報道しただけです。

芸能人が森先生の発言を踏まえて聖火ランナーを辞退しました。あの芸人がMCをしている『格付けしあう女性たち』ような番組の方こそ女性軽視・女性蔑視の番組であり、その放送している放送局の方が慰安婦の件を含めて色々と問題があると思います。誰でも、どんな組織でも、間違えたり勘違いされることはあるはずです。

あの神の国発言から3年ぐらいした後に養老孟子先生が、「バカの壁」という書籍を出してベストセラーになります。一神教と多神教の違いを取りあげて下記のことを説明しています。

  • 「人間同士が理解しあうというのは根本的には不可能である」
    「バカの壁は誰にでもある」

当時、小生は、養老孟子先生は森先生を擁護するために「バカの壁」を書いたと思ったくらいです。考え方は違うと理解することは不可能ですが、理解するために、相手の立場になり、理解する努力は大切だと受け止めています。

森さんの女性差別発言は容認されませんが、功労者や人生の先輩方々に対して、感謝や尊敬の気持ちがないというのはいかがなものかと思っております。

作成日:2021年2月15日 屋根裏の労務士

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