コラム Column

「正規社員の成果とは何か?」

日本で「成果主義」が本格的に導入されて、15年近くになります。最近、私は改めて「成果とは何か?」について、考えています。私が「成果」について、クライアントの皆様と考えるときは、主には評価制度の作成のときです。会社が求める「成果」、部門の「成果」などについて、社員に何を求めていき、「どんな活動が成果になるのか」を深く考えていきます。通常、評価制度を作成するとき、「成果」の定義を次のように定義する企業が多いです。
  • 「結果」+「その過程のプロセス」を含めて、「成果」と定義する。

つまり、単純に『結果』だけを捉えて、「成果」とは捉えません。そもそも、『結果』だけを捉えて「成果」と定義するのであれば、わざわざ、私に評価制度の作成を依頼してこないと思います。私のところに依頼があるのは、「成果」の捉え方が難しい業種の企業です。

リーマンショック以後、企業は事業再編が急速に進んでいます。合併や事業譲渡、事業分割などです。事業再編には、リストラが内在してきます。つまり、人員の削減です。人員を削減するときに、「誰を選定するのか?」が問題になります。このとき参考にしたいものが評価制度の人事記録です。

私はこれまで数多くの事業再編や退職勧奨、解雇の対応をしてきました。しかし、評価制度の人事記録をあまり利用していません。理由は、リストラ対象者の評価の査定が極端に悪いということは少ないからです。通常、5段階で真中の3の評価になっているケースがほとんどです。評価制度を全面的に出して、リストラの選定をすることは、実務上できないことが多いのです。また、私は、退職勧奨をするときに、『能力が低いこと』や『本人の責任追及』を全面的に出して、交渉することもめったにやりません。顧問先の皆様には、説明する必要もないくらいに、その理由をよく分っていると思います。

大規模な人員削減や深刻な解雇の対応をさせて頂くことが増えています。私は、その度に会社の「成果」について、改めて考えて頂き、そのための人材育成をして頂きたいと強く思います。「成果」の捉え方が、会社と社員の間で認識が違うことも非常に多いのです。リストラ対象者の社員は、自分が成果を出していないと余り認識していません。本当は、気付いているのかもしれませんが、中々認めてくれません。会社も、高いパフォーマンスではなく、派遣社員や契約社員程度のパフォーマンスでも、これまでは、大目に見て置いておくことが出来たかもしれません。しかし、これからは、そのような余裕は企業にはありません。私は、人員削減のコンサルをする度に、企業には次のことを考えて頂きたいと思います。

  • 「正規社員の成果とは何か?」

正規社員は、期間の定めのない長期の雇用契約です。会社と社員の双方が、ウインウインの良好な関係を続けていくためには、お互いが、マーケットが求める価値を高めていくしかないのです。終身雇用制度が崩壊したとはいえ、日本の雇用形態の中心は、依然として「期間の定めのない雇用契約」がベースとなる正規社員システムです。

  • 会社は、人材を成長させることが出来ないと多額の負債を長期にわたり、抱えるようになること。

  • 社員は、自分が成長して、労働価値を高めないと雇用の継続が難しくなること。

上記を会社と社員で共通の認識として持ち、お互いに良い意味での緊張感を持ち、プロ集団になれるかが、今後の生き残りに大切になります。人員削減のコンサルは、ある意味、評価制度の作成より、「成果」について、考えさせられます。

作成日:2010年3月22日 屋根裏の労務士

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