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「ビジネス会話の存在!」

先週、外資系のクライアントとの打ち合わせが連続してありました。私と打ち合わせをする担当者は、日本語を話せるので、英語が話せなくても、打ち合わせは得に支障がありません。しかし、各種資料を確認するとき、英語で書かれているものが多く、内容について、都度、確認しながら、打ち合わせをさせて頂いています。

外資系企業と打ち合わせが続くとその後暫くの間、片言の英語交じりの会話になります。例えば、契約をコントラクトといったり、法律をリーガルと言ったりするような少し横文字が会話に入るモードになるのです。外資系企業の担当者が話すと、かっこ良く決まっているのですが、私が、話すと『ルー大柴』の『ルー語』のような状態になってしまいます。

日本語が話せない外国人の方に説明をするときは、いつも担当者には通訳になって頂いています。その度に、「英語が流暢に話せたら、どんなに世界が広がるだとう。」と痛感します。実は、私は社会人になったときに英会話学校に通うつもりでいました。理由は、私が入った業界は、英語が得意な人材が極めて少ないからです。マーケットのほとんどが国内であり、英語を余り必要としません。しかし、その中で英語を話せれば、大きく差別化が出来ると考えていたのです。

当時は金融の自由化が求められてはじめてきた頃です。金融ビックバンにより東京がアジアの金融都市の中心となり、これからは、英語の時代と言われ、『駅前留学の英会話学校』の勢いもありました。しかし、社会人1年生は英会話学校に通えるような状況ではないことに、すぐに気が付きます。本業の専門領域以外にも、社会人としての基本的なビジネスマナーを含め、身につけるべきことが膨大にあるからです。私は、それでも時間をつくり、英会話を学ぼうと考えていました。しかし、自分が英語を学ぶ以前の状態であり、次のことが出来ていないことに、気が付くのです。

  • 「自分は、ビジネス会話が出来ていない。」

私は営業部に配属されました。「自分は営業に向いている。」と思っていたし自信もありました。その自信の裏付けは、「自分はコミュニケーション能力が高い。」と思い込んでいたのです。しかし、そんな慢心も、プロのビジネスの場で、木端微塵に砕かれることになります。朝の会議では、毎日、次のような指導を受け怒られていました。

「結論から、話せ!」
「主語の無い報告をするな!」
「結局、どう、なんだ!」
「お前の言っていることは、さっぱり分らない。」

正直、社会人の1年生の頃、会社内で周囲と話すのが嫌になるくらいの状態でした。「何を言っているのか分らない。」など言われると人格が否定されているように思ってしまうこともありました。自分は、「コミュニケーション能力がないこと」を中々受け入れませんでした。新人の集まりの時でも、1年生は概ね同じような状況。「細かい状況を理解しようとしないで、一方的に報告も満足に出来ないと決めつけている上司も悪い。」と言っていたこともありました。

しかし、ある時、中途で入社してきた社員が同じ部署に配属され、その人の会議の発言や上司とのやりとりを見ていて、私は「ビジネス会話の存在」に気がつきます。言いたいことや伝えたいことは、何となく感じ取れるのですが、ビジネス会話としては、明らかに成立していないのです。その姿を見て、自分の姿と重なりました。その時から、「ビジネス会話の存在」に気が付き、これまで、上司や先輩が言っていたことを、受け入れられるようになったのです。

新人の時に、カバン持ちをさせて頂いた先輩は、「ビジネス会話」がとてもうまく、毎日、徹底して指導・訓練して頂けました。私の話したことを「ビジネス会話」で、先輩が言い直してくれるのです。移動の車中では、「ビジネス会話」の訓練の場でした。日本語を話しているのに、別の言語でも習っていた感覚があります。

自分も、コミュニケーション力を磨くための自己啓発書を読み漁るようになりました。恐らく、これまで読んだ自己啓発書の中で、コミュニケーションに関する本が一番多いと思います。日本語の文法や言語構造についても、意識的に勉強するようになりました。その経験が、後になり、今の仕事には、欠かすことができない規則や規程の条文作成能力のベースとなるのです。
今でも英会話学校の前を通るときに、パンフレットを手にとることがあります。しかし、その前に、次のことを戒めています。

  • 「自分は、ビジネス会話が出来ているのか。」

私は、「コミュニケーションは難しいもの」であると捉えています。社会人の早い段階で、「コミュニケーションの難しさ」を教えてくれた上司や先輩に感謝するのです。ビジネスの世界では、英語力や国語力の言語としての能力の他に、「ビジネス会話力」が存在しています。恐らく、訓練してくれる学校はないと思います。だからこそ、日々のビジネスの活動の中で意識的に磨いていかなければ、いけないと思うのです。

作成日:2011年3月7日 屋根裏の労務士

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