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『権利と義務』、「感謝と使命」!

日常的な労務の相談で、比較的に多い相談項目が有給休暇です。有給休暇の相談は、遅かれ早かれ、顕在化してくる労務の相談内容でしょう。退職前にまとめて有給消化をする人が出てきて、それが他の人にも伝わると次からは、退職前の有給消化は、当然の権利となり暗黙の会社のルールとなる傾向があります。パートやアルバイトの有給休暇の取得も、企業の成長段階に応じて、いずれは問題となる内容です。

有給休暇が労働者に与えられた権利であることは、今や常識です。知らない者など滅多にいないでしょう。有給休暇を請求しない労働者は、所属する企業と周囲の実情を察して、請求していないだけであり自分達に有給が権利としてあることは、知っていると思います。

ご存知の通り、近年、有給休暇を筆頭に法律論を盾にした労働条件の権利を主張してくることが増えています。この権利論に対して、義務論を持ち出すと不毛な法律論となる傾向があります。法律論というのは、労務のベースにはあり、重要な判断要素です。しかし、現実的な労務の解決策とはならないことも多いのです。だから、私は、労務相談の中で権利と義務を前面に出すことはしません。

いつも権利論を主張してくる者には、その権利主張していること自体に不満なのではなく、何か別の根本的な問題に対して、不満が渦巻いていることが多いのです。そのため、ひとつ不満が解決出来ても、また、別の不満を言ってくる傾向にあるのです。根本的な問題は、簡単には解決できない構造的な労務の課題のことが多いため、労使双方が根気強く、取り組んでいかなければいけません。そのことを意識しないで、従業員の権利論に対して会社側の義務論を前面的に出すと泥沼の法律論を展開することになり、長期的に捉えて、双方に不幸な結果となることが多いのです。私は、この権利に対する義務という言葉には、次のような印象を持ちます。

  • 『何か受動的なニュアンス』

企業活動の中で、いつも権利と義務を論じている者は、労使双方とも生涯その不毛な世界観から抜け出せないような気がしています。では、権利と義務の不毛な世界観から抜け出すためには、どうしたら良いのでしょうか。正直、画一的なマニュアル化された正解はないと思います。ひとつ言えることは、まずは企業に潜む個別化された根深い課題であることを認識することです。つまり、根本的な課題に気が付くことからでしょう。私は、労務コンサルティングの仕事をしていて、ある時に次のことに気が付きました。

  • 『トラブルの多い企業は、権利と義務の世界観にある。』

  • 「優良企業は、感謝と使命の世界観にある。」

通常、人は権利と義務の世界観に染まりやすい。しかし、感謝と使命の世界観を持つ者が必ずいるのです。後者が多い企業が、強みを持った優良企業の傾向にあり、その浸透度合いが大きい程、業界の勝ち組となっているのです。

「義務の段階を抜け出た段階なのか。」、「周囲の期待からの高まりで纏うものなのか。」、「持って生まれたものなのか。」、理由はわかりませんが、真のリーダーには年齢や経験に関係なく、義務感とは明らかに臭いの違う、この「使命感」を纏っているのです。だから、リーダーなのでしょう。私は、ある若い経営者に次の質問をしたことがあります。

  • 「なぜ、頑張れるのか。」

それに対して、次のように返答していました。

  • 「今の立場に対する周囲への感謝と使命です。」

義務が『受動的なニュアンス』を感じるのに対して、「使命」には次の印象を持ちます。

  • 「何か能動的なニュアンス」

義務とは何か違う、プライドが伴う、己の道のような世界観。そこには、何か大きな成長と成功のヒントがあるような気がするのです。

作成日:2011年6月20日 屋根裏の労務士

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