コラム Column

「我慢の目利き」

9月10日から9月16日までは、自殺予防週間の時期。自殺を未然に防ぐための啓蒙活動に関する記事や報道を目にする機会が増えてきます。

夏休みが終わり、2学期が始まる時期になると子供のいじめを苦にした自殺に関する報道。毎年の様に取り上げられています。子供の自殺という悲痛な事件の報道を見る度に、下記の気持ちが沸き上がってきます。

  • 「何で周囲は防げなかったのか」
    「何で周囲に相談することは出来なかったのか」
    「何でこんな選択をしてしまったのか」

何より、下記のことに関して、後悔の気持ちが沸き上がってくるのです。

  • 「何で、周囲は死んではダメだということを
    きちんと教えていなかったのだろうか」

そんな残念な気持ちになった頃に、毎年9月の第二週の時期に自殺予防週間を迎えるのです。自殺対策白書では、18歳以下の子供が自殺した日の統計が出ています。自殺が多い日は下記の様になっています。

  • 9月1日(131人)

  • 4月11日(99人)

  • 4月8日(95人)

これまでの人間関係の中で、新たな日常が始まる9月1日。いじめで苦しむ子供にとって、学校の始まりは辛い毎日の始まり。世の中には「学校に行くのが当たり前」という社会の価値観があります。

  • 「学校に行けない自分」
    「学校に行きたくない自分」

そんな自分は駄目な人間だと、自信を失い、自己否定に陥り、一人追い詰められてしまうものです。それに、大人の世界に比べて子供の世界の方が、逃げ場のない閉ざされた世界なのだとも思います。

いじめやハラスメントというのは、自分が我慢していてもその状況が良くなることはありません。我慢していても、更に酷くなっていくものです。私は『不毛な我慢』というのは好きではありません。我慢にも「良い我慢」と『悪い我慢』というのがあると捉えています。

生きていくというのはそもそも我慢の連続。生まれたときから、親や社会から我慢ということを、皮膚感覚になるまで、しつけられ、教え込まれています。社会の中で生きていく以上、人が生きていく以上、我慢は大切であり必要なことです。しかし、何でも我慢すれば良いというものではありません。

自分の我慢だけでなく他人の我慢についても、見極めることができるようになること。「我慢の目利き」の存在も組織には必要なことです。私は下記のような考えをもっています。

  • 「死ぬほど嫌な場所に行く必要はない」

死ぬほど嫌な場所なんて行く必要はありません。死ぬほど嫌なこともする必要はありません。死ぬほど嫌な人にも会う必要はありません。人の命は大切にして大切なのです。人の命より大切なものなんてありません。

人生というのは、そんな大切な命を、かけがいのない命を、それこそ生死を懸けて挑むこともあります。生死を懸けて守るべきこと、それこそ、守らなければならないこともあります。

しかし、たかだか学校の人間関係のことで、死ぬことの選択肢を考える想いをしてまで、死ぬほど嫌な場所に行く必要なんてありません。親もそのことをきちんと理解して、受け止める器が必要なのです。

  • 「大丈夫です」
    「人生というのは、生きてさえいれば、
    後は、結構、何とかなってしまうものですから」

本当に、人生というのは不思議なものです。生きてさえいれば、後は、結構、何とかなってしまうのです。

学校教育の機会を失うこと。その後の人生にかなり大きな損失になること。上記は、残念ながら事実でもあります。学歴だけではありません。学校では学業以外にも様々な大切なことを学ぶことができるからです。それこそ学校生活はお金では買えない様々な貴重な経験、何より、友達をつくることが出来るからです。

一度諦めた学校教育だって、その気になれば取り戻すことも出来ます。色々あっても幸せな人生を過ごすことはできるはずです。命があり生きてさえいれば、後は、結構、何とかなってしまうものです。

生きているということは、色々な可能性や大切なものを失うことの連続でもあります。生きるということは、色々なことが起こるものです。それこそ人生は、程度の差こそあれ、誰でも訳ありです。

  • 人生、イロイロな大切な何かを失う一方で、
    実は、イロイロな大切な何かを得ているのです。

人間というのは、悪いことが続いたり、追い込まれた精神状態のとき。得てして未来に対して可能性を見出せなくなり過去を後悔したり、悪い方向に考えてしまうものです。その結果、最悪の選択をしてしまう危険が高まるのです。だから、子供だけでなく大人になっても下記のことが大切だと認識しています。

  • 「SOSの出し方を教える教育」
    「SOSの窓口の存在」

いじめやハラスメントを無くす教育も大切ですが、現実的な問題として、いじめやハラスメンはあるものです。最悪の事態を避けるために、取り組んでいく教育や体制も大切なのです。無くならないし、あることを前提に受け止めて、受け容れて、具体的に対策をしていくことが大切なのです。

企業の新入社員研修のときに、相談窓口の存在を啓蒙しているクライアントが増えてきました。相談窓口の存在があることをオフイスにポスター掲示している企業もあります。平成29年度の自殺対策白書では下記のようになっています。

  • 平成28年は2万1,897人となり減少傾向

自殺者数は減ってはいますが、国際的にみると高い自殺率。日本の自殺者数は、平成10年以降、14年連続して3万人を超える状態が続いていました。平成24年に15年ぶりにやっと3万人を下回りました。

自殺者の推移は、景気動向の推移と概ね一致しているとも捉えることができます。それでも、自殺者の減少は支援団体の努力や企業でも相談窓口が設置され、地道な努力もあると感じています。

死ぬほど嫌な場所に行く必要はありません。死ぬほど嫌なこともする必要はありません。死ぬほど嫌な人にも会う必要はありません。

我慢にも「良い我慢」と『悪い我慢』というのがあります。自分の我慢だけでなく、他人の我慢についても、見極めることができるようになる存在。「我慢の目利き」の存在が組織には必要だと思うのです。

作成日:2017年9月18日 屋根裏の労務士

お問い合わせ

電話番号 03-3988-1771 受付時間9:00~19:00(土日祝祭日を除く)

お問い合わせ

コラム

  • 採用情報