コラム Column

成熟した「マーケットと民主主義」!

昨年の歴史的な政権交代により、政治や経済に関して、通常のニュースで取り上げられるだけでなく、それをテーマにした番組自体も増えたと思います。私は年末年始に各局の政治番組をたくさん見ていました。各番組でテーマは若干違いますが、概ね、次の二つがテーマです。
  • デフレ脱却と今後の日本のビジョン

  • 首相のリーダーシップ

「今のデフレを脱却し、今後の日本経済のビジョンに対して、リーダーシップをとり、どのような具体的な政策を講じていくのかなど」が議題にあげられていました。日本は既存産業の外需頼みから、『成熟』した日本市場で、内需拡大への転換をいかに図れるかということです。先の見えない国家の根本的な課題ですので、当たり前かもしれませんが、どの番組を見ても、有効的な具体的な解決策などあまり出てきていません。

ここで、私は『成熟』というキーワードに意識がとまりました。

ご存知の通り、日本は、世界第2位のGDPを誇り、経済大国になりました。その地位を中国にあけ渡すことになります。BRICs諸国の発展は、めざましく、成熟市場となった日本は、順次、GDPの順位で追い抜かれていくことがすでに確定事実として受け止められています。

私は、個人的にですが、各種報道番組を見て、日本は「成熟した市場」だけでなく、「成熟した民主主義」だということを再認識しました。例えば、成田紛争や八ッ場ダムの紛争は、私が生まれる前から、争われている公共事業問題であり、いまだに解決させていません。恐らく、他のアジアの国では、考えられないことだと思います。

日本は、市場が成熟し、モノが溢れているだけではなく、民主主義も成熟して、価値観が溢れていると思います。民主主義は、少数意見の立場をないがしろにすることを極力避け、各方面の意見を尊重します。少数意見を尊重して解決を図るため、その中でのリーダーシップを発揮するのは、難しいと思います。そのため、成熟した民主主義下で求められるリーダーは、現場の状況をタイムリーに確認しながら、懐の深さを持ち、迅速な決断を下していかなければならないのです。

首相のリーダーシップの欠如が問題視されています。今のような混乱期には、強いリーダーシップが必要であることは言うまでもありません。一方、混乱期には、残念なリーダーを産み出しやすいことも歴史が証明していると思います。

私が、企業労務のコンサルティングをさせて頂くとき、法律論だけでなく、その企業の『民主主義度』や『リーダーシップ度』も考慮して、アドバイスをさせて頂いています。

中小企業の強みは、「役員の意思決定の速さ」と「小回りの良さ」があります。実は、これは、大企業では出来ない中小企業の絶対的な強みなのです。社員も早い意思決定の中で活動していくことに、慣れていると思います。そのために、「機会ロス」も少なく、「早期のリスク回避」もできやすい傾向にあります。私と打ち合わせをしても、役員は周囲や社員の意見に耳を傾けながら、リーダーシップを発揮して、ドンドン決めていきます。船に例えると小型船ですので、問題があると分かれば、臨機応変に舵取りをしていくことが可能なのです。

大手企業で、人事制度などの大幅な見直しをする場合、トップ中心ではなく、合議制で打ち合わせを進めていく傾向があります。各人・各方面の意見を尊重して調整をかけながら、制度構築をしていくため、中小企業の数倍の時間がかかる傾向にあります。
それだけ時間を費やしても、結局、全員の意見をできるだけ配慮して、制度構築をするため、制度をあまり変えられないこともあります。各方面での意見は尊重され、全体の調和を図った内容が制度に反映することができます。一方、抜本的な改革が難しいため、「機会ロス」や「リスクを拡大」することも少なくありません。船に例えると大型船ですので、問題があるとわかっても急な方向転換は容易ではなく、舵取りに一定の時間がかかるのです。
例えば、JALの企業年金の問題も、各方面での意見を尊重して解決を図ろうとしたため、他の企業より、問題が先送りにされ、事態を大きく悪化させたのだと思います。

私は、国家をみながら、その縮図ともいえる企業をみています。これからの日本の労務管理では、「強いリーダーシップ」と「合議制的な意思決定」のより良いバランスが一層大切になり、社員からも強く求められてくると思います。

今のような混乱期には、優秀なリーダーが産まれやすいことも、歴史は証明しています。GDPは重要な成長指標ですが、日本の成長価値観はGDPの成長だけではありません。今のような混乱期は、企業と自分を育てる良い機会だと思います。皆様と目標と課題を共有して、ともに乗り越え、一緒に成長できることを楽しみにしています。本年も宜しくお願い致します。

作成日:2010年1月11日 屋根裏の労務士

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