労働組合の社会的な責任と今後の方針!
私は、春闘を連合中心に詳細に活動を見ています。理由は、連合は与党の支持母体であり、政権とつながりを持ったからです。連合の要望は、少なからず政策に影響を与えるはずです。それに伴い、厚生労働省から各種政策を打ち出され、企業労務にも何らかの影響を与えることになるはずです。
連合は、春闘に伴い次のキャッチフレーズを掲げ、ポスターまで、作っています。
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「共感力UP↑」
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「みんなで創ろう、誰もが安心して働ける職場・社会を!」
上記のキャッチコピーですが、「何が言いたいのか」をわかるでしょうか。連合は、今後の要求事項に、正規社員の労働条件だけではなく、直接雇用しているパートタイマー・契約社員のほかに、雇用契約のない派遣社員の労働条件まで、交渉のテーブルの場にのせて対応することを打ち出したのです。正規社員だけでなく、非正規社員を含めた形での「共感力UP!」という意味が込められているのです。
派遣社員を中心とした非正規社員の問題、格差社会の問題が出てくるとき、その責任追及の中で、取り上げられるのは、いつも「政府」と「企業」です。「小泉内閣」や「偽装請負などをした大手メーカー」は、名指しで批判されるときもあります。実は、この問題で意外と知られていないのが「労働組合」の責任です。
日本の労働組合は、「正社員クラブ」と揶揄されることがあります。つまり、組合員である正規社員のための労働組合であり、非正規社員の待遇条件の向上に対しては、ほとんど交渉の場にもあげられていなかったのです。そのため、非正規社員が増えた要因のひとつには、「正社員クラブ」としての労働組合の存在もあったという見方もあります。正規社員の待遇面の改善を要求させるためには、正規社員の数を減らして、非正規社員を増やすという方針に会社と労働組合の思惑が一致していたことが、少なからずあったと連合は捉えているのだと思います。そこで、連合の古賀会長は、春闘の課題に次のことを掲げ、その徹底を図る旨をコメントしていました。
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「職場で働くすべての人の労働条件の改善」
つまり、派遣社員も対象に含まれることになります。今後、派遣社員の受け入れに関しては、仕事の内容、契約条件、社会保険の加入などの情報を労働組合と共有化し、企業側の責任体制の明確化を求めていく意向があるようです。
また、連合はすべての組合が「企業内最低賃金」に関わる協定を結ぶことも、課題のひとつにあげています。現在、約3割の組合が、「企業内最低賃金」の協定書を締結しています。この結果は、「産業別最低賃金」に影響を与えているのです。弊社でも自動車関連のクライアントがいますが、自動車関連の最低賃金が高いのは、実はこのためなのです。
当社の顧問先で、労働組合がある企業は上場企業がほとんどです。中堅・中小企業はあまり関係がないと思っているかもしれません。しかし、今後、私は従業員の外部労働組合への加入やそれに伴う対応は、ある程度、中堅・中小企業でも避けて通れないことになると見ています。
「正社員クラブ」と揶揄された労働組合。非正規社員の対応の改善に向けた動きは、まだ小さな動きなのかもしれませんが、今後、企業労務に大きな影響を与え、私も、各種対応を準備していきたいと思います。
作成日:2010年2月22日 屋根裏の労務士