「ことばの重み!」
政治の各種政策に関しては、経済情勢などにより、大きく思惑が異なることは多いのだから、出来ない政策については、ある程度、やむを得ないと国民は理解していると思います。イギリスでは、野党時代のマニュフェストは、政府の内情を詳細に掴めていないのだから、大きく変更しても問題ないとされる傾向にあるそうです。日本でも、歴史的な政権交代であり、出来ない政策は、変更した方が良いというのが世論の声です。
政策については、『言った。言わない。』の不毛な議論をするのではなく、建設的な議論をして頂きたいのが国民の本音だと思います。しかし、自分の進退については、不用意に、『辞める。辞めない。』を言って欲しくないし、聞きたくありません。
毎年8月末から9月にかけては、新卒・第二新卒採用の方の正式採用に関して、各種相談が増えてきます。その中で、最近の傾向として、次のようなことがあります。
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『辞めます。』と言ったことを止めます。
つまり、「一度退職の意思表示をしたが、撤回して、また働きたい。」というのです。上記のことに関して、「退職の意思表示の法的な撤回」についての相談も増えてきました。ケースにより、違いますので一概には言えませんが、次のような考え方になります。
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退職の意思表示の撤回は、使用者が既に従業員の退職を承諾していれば、
撤回は認められなくなる。
つまり、会社が従業員の退職の意思表示を受領するまでは、従業員は撤回ができるが、受領した場合、撤回できないのが原則的な考え方です。撤回を申し入れてきた従業員は、次のような言い分です。
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「辞める旨を申し出た日から、数日しかたってなく、会社が困るわけではない。」
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「上司に、単に相談しただけであって、本気で辞めるつもりではなかった。」
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「親に話したら、『辞めては、駄目だ。』と言われた。」
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「内定していた会社が、急に、内定を取り消してきたのだから、仕方がない。」
上記のほかにもたくさん撤回の言い訳がありますが、呆れてしまうのが、次のコメントです。
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「通信販売には、クーリングオフ制度があるのだから、退職についても、
クーリングオフができるはずだ。」
結論から言えば、法的には退職の意思表示にクーリングオフ制度は存在しません。正直、あまりに自分勝手で、担当者も怒りを超えて呆れているのに、当の本人は全く気がついていない様子です。『若者のコミュニケーション』は、年輩の人とは別のタイプとなっていると思います。メールのやりとりも、「つぶやき」のような軽い無数の内容のやりとりが多い傾向にあります。本人は、普段、つぶやいているように、軽い気持ちで、「辞めます。」と言っただけかもしれません。しかし、従業員の雇用契約解除の意思表示に対して、会社は軽く受け止めません。
政治家の軽い進退発言は、「社会における進退の軽さ」に影響を与える気がしてなりません。若しかしたら、「発言の軽さ」は、世代を超えて、共通のことになっているのかもしれません。
作成日:2010年9月13日 屋根裏の労務士