「年金破たんの分析!」
年金問題は、重要な社会保障制度の柱として、連日、なんらかの報道機関で取り上げられるようになりました。年金問題が報道されるときに、取り上げられる話題として多いのが、「5,000万件の消えた年金問題」への対応と下記の件だと思います。
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『年金制度の破たん』
国民年金は、納付率が60%となり、すでに、半数近くは保険料を支払っておらず、制度としてすでに破たん状況だと報道されています。その原因として、次の二つをあげています。
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第1号被保険者の割合が、非正規社員の20代が増え、経済的に保険料を支払うことが出来ないこと
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年金制度及び行政組織対する不信感・不安感
私は上記の分析は、正しいと思います。しかし、その取り上げられ方には、強い違和感を受けます。あたかも、国民全体が年金制度に不信感を持ち、多くの人が保険料を支払っていないという印象を受ける取り上げ方が多いのです。実際、公的年金加入者の加入者は、次のような状況です。
【加入者の人数と割合】
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公的年金の全体の加入者・・・・・・・・・・6878万人(100%)
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第1号被保険者(自営業者など)・・・・・1985万人(28.9%)
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第2号被保険者(サラリーマンなど)・・・3872万人(56.3%)
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第3号被保険者(主婦など)・・・・・・・・・・1021万人(14.8%)
破たんと言われ、問題になっている加入者は、1号被保険者です。全体では、約3割弱です。
下記は、1号被保険者の状況です。
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第1号被保険者全体・・・1985万人(100%) 公的年金加入者全体(28.9%)
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納付者・・・・・・・・・・・・・・1129万人(56.9%) “ (16.4%)
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免除者・・・・・・・・・・・・・・ 335万人(16.9%) “ (4.8%)
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学生特例猶予者・・・・・・ 200万人(10.0%) “ (2.9%)
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未納者等・・・・・・・・・・・・ 321万人(16.2%) “ (4.6%)
上記の数字のなかで、未納者等の公的年金全体に占める割合を見て下さい。国民全体のなかで、未納者は、321万人であり、4.6%の割合です。つまり、100人のうち、5人弱しか未納の人はいないのです。学校のクラスが40人だとすると1.84人。男子1人、女子1人の2人をわっていることになります。さらに、日本に出稼ぎなどに来ている外国人労働者の数は、約56万人。恐らくそのうち、半数以上が加入していないとみています。その数を差し引くと約300万人程度。また、すでに今から年金加入しても、25年の納付要件を満たせないので仕方なく、加入していない方も相当数いるとみています。
上記データ分析から、年金制度全体での加入率は高いと言えます。私は、加入状況から年金制度に対して、国民は次のような判断をしていると予測します。
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不信感を抱きながらも、年金制度に対する期待は高い。
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老後の所得確保の大きな柱に、公的年金を考えている。
私が相談を受けた方でも、公的年金に加入していない方は、数える程度しかいません。しかも、今から加入しても25年要件を満たせない方です。公的年金は、民間保険と違い、マクロ経済スライドがあり、インフレリスクにも対応しています。さらに、公的年金には障害年金制度、遺族年金制度の保険機能がついています。昨年の4月から基礎年金は、国庫負担が2分の1に引き上げられました。つまり、保険料の半分は国が出してくれているのです。今後、財源に消費税が充てられれば、要件を満たせない方は、大損することになります。
私は、1号被保険者の免除者・学生特例猶予者・未納者の合計40%の数字ではなく、制度全体で捉えた未納者の割合が、年金制度のうち5%程度に過ぎず、国民の95%以上は、免除や保険料を支払い年金制度に期待をしていることをもっと取り上げていくべきだと考えています。また、年金問題で本当に深刻なのは、高齢者の年金ではなく、20代と30代の年金です。この件については、また別の機会で取り上げたいと思います。
年金制度は複雑で難解な制度であることは間違いありません。その難解な制度に対して、積立制度の方法などを含めて、現在、日本政府が取り組んでいる規模の大改革をした国は世界にもないそうです。今後、年金制度についても、今後の法改正情報とあわせて、私なりの持論の分析などを続けて、年金制度と取り入れた高齢期の労務管理のノウハウをさらに構築していきたいと思います。
作成日:2010年10月18日 屋根裏の労務士