コラム Column

「中国の脅威!」

年が明けても中国について連日報道されて取り上げられています。政治、外交、軍事、経済など中国を『脅威の存在』として、後ろ向きに取り上げられる内容が多いと思います。先週は、日産とルノーで共同開発している電気自動車の機密情報が、中国企業に漏えいした可能性があると報じられていました。漏洩した情報には、約5000億円の投資を計画している電池やモーターに関する極秘の内容が含まれていたそうです。

私はこの情報漏えいのニュースを聞いたとき、中国の偽物キャラクターで作られた遊園地を思い出しました。ドラえもんやミッキーマウスなど、日本やアメリカのキャラクターを少し変えて作ったあのテーマパークです。各種のキャラクターは、どう見ても偽物なのですが、それを自分たちのオリジナルなものと主張しています。中国の模倣ブランドや模倣コンテンツの数々をクイズやギャクにしている番組も度々目にします。私が一番驚いたのはこのテーマパークが民間ではなく国営であることです。中国では、政府がブランドやキャラクターについて、模倣することが悪いことであるという認識が極めて低いということの顕著な例だと思います。

中国企業とは、未だに解決されていないコンテンツの争いがあります。5年前ぐらいの「クレヨンしんちゃん」の商標事件です。中国企業が、「クレヨンしんちゃん」を中国名で、「蝋筆小新(ラービィシャオシン)」として商標登録した事件です。日本企業の本物が商標権侵害として扱われ大手デパートなどで売場を閉鎖され在庫も押収されてしまいました。

上記について、日本企業は行政訴訟を起こしまたが、人民法院は訴えを退けてしまいました。中国の企業の1社は、日本企業との話し合いで、商標譲渡に関して約14億円で買い取るような交渉をしてきたとも報じられていました。中国側は商標権侵害の問題を解決しようせず、今でも「蝋筆小新(ラービィシャオシン)」の商標を使用し続けている状態なのです。

先週、クライアントのデザイン会社と打ち合わせをしました。そのときに、私は「中国のデザイン力は高いのか」を質問しました。「中国のデザインは、近年格段にレベルアップしており、安い人件費をバックに人海戦術の対応ができるため、模倣の精巧度は極めて高い水準にある。」と話していました。

どんなことを学ぶときでも、まずは先駆者を見習い、「真似」をすることからはじめることが大切だと思います。しかし、真似をする中で、自分なりのやり方を試行錯誤の中で見出し、オリジナルなものを生み出しノウハウが構築されるのだと思います。

「世界の工場」は、中国になったと言われることが増えてきました。このことは間違いないことです。しかし、まだ、中国は『世界の組立工場』であり、「世界の商品開発工場」ではありません。日本の先人達は、あらゆる困難の中から、「世界の商品開発工場」の地位を築き「メイド・イン・ジャパン」のブランドを手に入れ、私達に残してくれました。

13億の人口を擁する中国の脅威は、これからも多方面に続くと思います。中国の文化はすばらしい。優秀な人材や偉人もたくさんいます。一方、コンテンツやノウハウが模倣で、手に入れるようなことが許される社会では、「世界の商品開発工場」には、なりえないと思います。どんなに優秀な能力を持つ人がいて、どんなにすばらしい人材が多数いたとしても、コンテンツやノウハウに対して敬意と対価を払わない社会であれば、本気で取り組む人はいないし優秀な人材が育つはずがないからです。

「真似ること」は、学問、スポーツ、ビジネスなどの学びごとの王道ですが、そこには、一定のルールとノウハウ、そして、マナーがあるのです。「模倣者が模倣である限り、開発者には脅威となりえない。」とも言えると思います。
『メイド・イン・チャイナ』がグローバル・ブランドになったとき、中国は、いわゆる『脅威の存在』ではなくなっていると思います。ともに困難と目標を乗り越える友好的なパートナーであり、世界に君臨する尊敬すべき大国となり、アジアの国境概念は今よりも前向きな意味で希薄になっていると思うのです。

作成日:2011年1月17日 屋根裏の労務士

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