「問題ない、何とかなる!」
日本は先進国の中で飛びぬけて自殺者が多い。人口10万人あたりの自殺者で表される自殺率は25.5です。これはアメリカの2倍以上、旧ソ連諸国と共にトップレベルの数字です。こんなに自殺率の高い先進国は他になく、政府も対策室を設けて頭を抱えて各種の対応をしています。ワークライフバランスを推し進めているのも、この一環なのです。
日本の高い自殺の動機や原因について、次のようなデータもあります。
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自殺の動機や原因
1位・・・健康(46%)
2位・・・経済・生活(24%)
3位・・・家庭(9%)
4位・・・勤務(6%)
5位・・・男女問題(2%)
高い自殺率の原因として、バブル崩壊後の経済的な側面があげられることが多いと思います。『勝ち組・負け組』、『格差社会』という言葉が表わすようなストレスの強い社会への移行です。旧ソ連諸国や東欧の高い自殺率も、共産主義の崩壊とともに、競争社会への市場原理主義へ移行していく中で、国民が不安定な社会から、大きなストレスを受けているためと分析されることがあります。自ら命を絶たれた人は、ストレス社会で何らかの困難な問題に直面し進むべき道が分らなくなり、大部分の人は心の健康を損ない、うつ病の状態になっていたと言われます。
自殺に関して様々なデータや分析がされています。例えば、地域制や産業性などの分析もあるし、男女別に研究された分析もあります。しかし、その根本的な原因については、解明されていません。私は、日本の自殺率の高さの原因は分りませんが、自ら命を絶たれた人は、次の心理状態であったのだと思います。
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『未来に対して、希望や可能性がない。』
未来に対して希望や可能性があれば、自らの命を絶つことは無かったと思います。私は、現在の苦しみや辛さより、未来に対しての不安や恐怖が、人を死へと導く悪魔だと思っています。現在の苦しみではなく、待ち受ける未来に対する地獄への恐怖です。私は、次の時間軸について考えることがあります。
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「過去、現在、未来について、どれが大切なのか?」
もっと具体的に言うと次の問いです。
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「過去の自分、現在の自分、未来の自分について、どれがもっとも大切なのか?」
過去の自分、現在の自分は変えることが出来ないが、未来の自分は変えることが出来る。だから、大切なのは、未来の自分であるという意見もあります。そのために、現在が大切であり、「現在の自分」が、将来の自分を形成するという考え方です。私は、こんな考え方をすることがあります。
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過去の自分はもうない。未来の自分もまだない。あるのは、「現在の自分」だけである。
過去の自分は、瞬間、瞬間になくなるのだから、過去の嫌なことに落ち込む必要はない。未来は、まだ無いのだから、不安や恐れを抱く必要はない。確実にあるのは、「現在の自分」だけです。今、生きている自分。その確かにある「現在の自分」を大切にするのです。
私たちは物心がついた時から、現在の幸せより未来への過剰な不安や恐れを刷り込まれているような気がしてなりません。その結果、「現在の自分」を大切にして楽しもうとしないのです。そして、勲章や飾りを得るために血眼になり、勲章や飾りに引きずられ、生きていくのです。
現在が大切だと言うと『今さえ良ければそれで良い。』という刹那的で何も知らない若者のような考えで、一般的に好ましくないという風潮があると思います。しかし、「現在があれば、未来は何とかなる。」のです。現在が無くなれば、未来もありません。人生、不思議なもので、結構、何とかなってしまうものです。私は、春の青空の下、ひとり桜を見ながら、口ずさみます。
「友は大丈夫だろうか。」
「頑張れ東北、頑張れ日本。」
「みんな、頑張っているか。俺も、現在を頑張っているぞ。」
「問題ない、何とかなる。」
作成日:2011年4月11日 屋根裏の労務士