「TPP参加と今後の雇用!」
私の地元は、工業製品出荷額が1兆7000億円を超える工業都市。外国人労働者の数が多い街です。工業都市ですので、とにかく人の出入りが多い街なのです。そのため、私が子供の頃から転校生・転入生が多く、仲が良かった友達との別れと出会いがたくさんありました。どの学年でも、毎月1人は転校生と転入生がいました。中学校では、1年間に学校全体で、少ない時でもひとクラス分の入れ替え。つまり、40人が転校して40人の転入が日常的にあり、多いときはその2倍くらいあったそうです。
工場が多いので、季節工などの出稼ぎの方に、全国から来て頂いていたと思います。今でも出稼ぎは多いのですが、失われた20年の中で外国人の方が急激に増えました。今では学校のクラスに、外国人の子供が普通にいるそうです。幼稚園の時からクラスの中に外国人の友達がいるので、成人になっても余り違和感も無いようです。
外国人の方を含めて他の地域から来た人の話では、うちの地元の良い所は、差別がとにかく少ないそうです。他の地域に比べると断然に少ないと言っていました。宿場町として歴史的な背景があることに加え、工場地帯で出稼ぎの方が多かったので、外部から来る方やマイノリティーに対して、差別的な考えが少ないのでしょう。
TPP参加に伴い、企業は安価な労働力として、外国人労働者を雇用して日本人の雇用が外国人に奪われ、雇用不安を危惧する指摘があります。しかし、私は、そのような捉え方は、一義的にはしていません。外国人の労働者が増えたり、海外に生産拠点を移したのは、企業が安価な労働力を求めたことだけではないのです。3Kの仕事に募集が集まらない労働力不足も大きいのです。
生産ラインの厳しい業務の実態は、あまり知られていないと思います。本当に厳しい生産ラインの仕事は、日本人では中々やらなくなったのです。最近、工場見学がブームになっているようですが、通常、工場には『見学用』のコースがあるのです。会社を支える厳しい3Kの生産ラインは、外部の者には見せないのです。
雇用不安は常態化しており、失業率も中々下がりません。一方で、仕事はあり求人はあるのです。無いのは、『一定の希望する職種』。厳しい3Kの職種の業務には、いつも人が足りずに求人を出している状態です。若者の職業選り好みが指摘されることがありますが、このことは、若年層に限ったことではないでしょう。また、短期的な仕事ではなく、自分の天職としての生業を求めるのは、誰もが共通のことでしょう。
日本は、フィリピンと2008年にEPAを結びました。関税を撤廃する日本側のメリットとして、フィリピンからの看護師、介護福祉士を受け入れることで合意しました。インドネシアとのEPAでも、受け入れることで合意しています。更にベトナムとも交渉との話が進んでいるようです。政府は、EPAに伴うこれらの介護の件について、建前上では出稼ぎとは認めておらず、次のようなコメントをしています。
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『看護師や介護福祉士の資格を目指し支援するための制度であり、経済上の連携強化の観点から締結されたものであり、労働力不足対策ではありません。』
フィリピンやインドネシアには、介護市場はありません。資格を取得しても、国に帰り介護の仕事をすることは無いでしょう。資格を目指すということはどう考えても建前であり、実際は出稼ぎのためです。日本は高齢化社会であり介護については、誰もが必要な仕事だとはわかっていると思います。政府は介護業界の人材確保と定着に向けた様々な取り組みをしています。しかし、中々、現場レベルでは改善されません。政府も現場も、介護を回していかなければなりません。そのためにはどうしても労働力が必要になるのです。
ミスマッチという意見もあります。誰にでも向いていない仕事があり、一定の考慮は必要です。一方で失業率が下がらずに、業種や企業によっては人材不足の問題も解消されない現実。現状の業種に応じた労働力不足を考えれば、TPP参加の有無に関わらず、外国人労働者について、資格取得制度みたいな建前ではなく、出稼ぎ労働者として受け入れている実態。安価な労働力だけでなく市場となった新興国の存在。生活保護における外国人の保護率が日本人の2倍から3倍もあり1200億円も支給している実態。様々なところに未整備かつ未成熟な点が多いと思います。TPPへの参加を契機に、今後の日本の雇用のあり方についても、建設的な議論をもっとオープンにしていくべきだと思います。
国際化やグローバル化というと海外に向けて出ていくイメージが強い。しかし、身近なところにも国際化の波は押し寄せており、国籍や文化の違いを乗り越えた理解や制度づくりは、あらゆるところで求められてくると思うのです。
作成日:2011年11月21日 屋根裏の労務士