「社内プロへの労務!」
まずは、被災地で苦しんでいる方々のことが何より最優先です。日本には、東北の復興や原発のことなどの優先課題のほか、TPPや消費税のことなどもあります。
派遣労働者の件などは、あまり報道されなくなりましたが、派遣労働者や偽装請負の問題などが解決されたわけではありません。弊社は、特定派遣を行っているクライアントも多く、日常的な労働相談として、派遣や請負の違いなどの相談対応があります。先週も、偽装請負と派遣、出向の相談が数件続けてありました。
派遣と請負についても、一定の区分はありますが、明確な運用基準はありません。現行法理とその解釈、最近の運用指導などを踏まて、個別の事案として対応していくしかないのが実情です。特に、取引先企業で常駐するケースでは、今まで何も指摘されなかったのに、近年の派遣労働者の社会問題のために、偽装請負として指摘されるリスクも出てきました。
常駐対応のケースでは、偽装請負となっていないかを注意する企業も増えています。偽装請負や派遣の問題は、対応を間違えると取引先にも迷惑をかけることにもなりかねません。
最近は大きく報道されていませんが、逆に何かトピックな労務の問題ではなく、常態化した労務の問題になってきたとも考えたりしています。請負と派遣の適正な運用プロジェクトのとき現場の状況を確認しました。その時に現場の担当者から次のストレートな質問がありました。
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そもそも、なぜ、派遣はいけないのですか?
一義的な返答としては、使用者の責任が曖昧になるため、労働者保護に欠ける側面があり、中間搾取の労働供給事業の歴史的な背景があるという説明になるでしょう。
ネガティブリストによる一般派遣は禁止して、従前のようなポジティブリストの特定派遣だけを認める意見や動きもあります全体の方向性として、専門26業務の特定派遣は問題ないのです。専門26業務は、特定専門分野の社会的なニーズが一定限あり、ほとんどが専門プロ集団の正規労働者です。そのため、労働者保護の欠けるリスクが少ないのです。
このことは、正規社員という地位的な側面だけではありません。専門者である高度知識や技術を有する者は、ほっておいても問題が少ないのです。専門性が高いので、何かといつも問題として出てくる、いわゆる「指示」なんて、個別・具体的な業務ベースの作業では、ほとんど出されることが無いのです。そのため、作業内容が請負契約に近い形になっていることが多いのです。
労働法の中で、「専門」という用語が出てくる分野がいくつかあります。
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専門26業務(労働者派遣法)
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専門業務型裁量労働制(労働基準法)
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高度専門者の1年を超え5年以内の雇用契約(労働基準法)
上記の対象となる専門者は、いずれも従来の労働基準法で想定していた労働者ではないでしょう。専門者は、企業にいたとしても請負に近い形で、業務を遂行している側面が多いと思います。彼らは自らを律して行動することができる自律的な存在です。企業との関わり方でもその精神性の根幹は、自立した存在でしょう。私は、この人たちをプロだと捉えて、いつも尊敬と敬意をはらっています。
何かといつも問題として出てくる、いわゆる「指示」なんて、マクロ的な視点では、プロである方には、ほとんどないのです。自律的な世界では、共通のミッションと企業内の秩序を保つ約束の下、各人が裁量的な活動を行うことが可能なのです。
世の中には、管理する者と管理される者がいます。指示をする者と指示をされる者と捉えることも出来ます。労働基準法では、管理監督者と時間管理対象者です。しかし、実態社会はそんな二元論で形成されていません。労働基準法でも例外はあるのです。しかし、専門者やプロの方々に対する厳格な法整備は、まだまだ十分にされていません。実態は、社会情勢をみながら、現場での運用に委ねていくしかないのです。
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包括的な指示で行動する社内プロの存在。
上記は、これからの企業労務の重大なテーマになることは間違いなく、彼らの存在とそのための対応が、企業の成長・発展のカギとなると思うのです。
作成日:2012年1月23日 屋根裏の労務士