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「リストラと意識改革!」

昨年の1月に、会社更生法の適用を申請して倒産したJAL。負債総額は2兆3千億円。事業会社としては戦後最大の経営破たん。企業再生支援機構の支援で1兆円近い公的資金が投入され、わずか1年3ヶ月で更生を終了しました。再建の仕上げとなる株式の再上場に、今秋にも挑むと報道されています。お役所のような社風だったJALの再生。稲盛会長の経営手腕には、次の一言につきるでしょう。
  • 「さすが!」

再建の柱となった政策は、徹底的な合理化とリストラです。採算性の悪い国際線を15、国内線を30路線休止。大型機を中心に79機の航空機を処分。従業員を1万6000人削減したそうです。
あれだけの巨大企業に対して、具体的な政策を掲げて、わずか1年あまりで遂行できた稲盛会長と幹部の手腕。リーマンショック以後、事業再編やそれに伴う整理解雇を断行する企業が増えています。事業再編や整理解雇を行う企業は、次のことを掲げて実行しているのです。

  • 不採算部門の撤退と経営の合理化

  • リストラによる人件費の適正化

上記は、再生ができたJALと概ね同じでしょう。特に、リストラは社員に大きなストレスを与え、会社にも様々なリスクを背負うことになります。リスクとは、訴訟されることだけではありません。形としはありませんが、様々な大切なものを失うことがあるのです。

そんなリスクはあっても、企業はどこかで大規模なリストラを断行しなければならない場合もあります。各種のリスクを背負い断行したリストラの結果「再生できた企業」と『再生が出来ない企業』に分かれます。

私は両者の結果の違いが、なぜ起きるのかについて、現実の対応を重ねていく中で、あるとき明確に気が付きました。それは、次のことです。

  • 「リストラを通じて、取り組んだ意識改革」

リストラには手順があります。最初に、希望退職の募集をかけて、次に個別に退職勧奨、最後に整理解雇です。人事担当者であれば誰でも知っているでしょう。作業として考えれば、単純です。会社はトラブルを避けるために、何とか退職勧奨でまとめます。

辞めて頂くのは大変です。人員整理は難解な労務の対応のひとつでしょう。しかし、リストラの本当の真価は、その後の会社経営と労務の対応の中にあるのです。「意識改革」が出来ていなければ、そのリストラのプロジェクトは、真に成功したとは言えないのです。

机上では、出来ない者を辞めさせて、出来る者だけを残し、外部から新しい優秀なメンバーを入れれば、それで利益が出て上手くいくと考えるかもしれません。少数精鋭集団は企業の理想ですが、現実は、中々上記のように上手くはいきません。その理由は、様々な要因がありますが、労務の観点からひとつだけ言えば、次のことが出来ていないからなのです。

  • 「意識改革!」

稲盛会長は、JALの再生に伴い具体的な政策として不採算部門の撤退と経営の合理化とリストラによる人件費の適正化を徹底的に行いました。しかし、それだけではありません。持論のアメーバ経営を中心にして、コスト意識と利益意識を持たせる「意識改革」を行ったのです。

合理化とリストラだけであれば、世の中の多くの企業が行っています。しかし、その二つを断行しても、なかなか経営は上手くいかずに、同じことをいつまでも繰り返しているだけの企業も多いのです。次から次へと社員の入れ替わりを繰り返し、少しも前進しないのです。結果、組織全体を疲弊させ、弱体化させていることすらあるのです。更に深刻なケースでは、人員削減できたという虚妄の成功体験が安易なリストラを繰り返し、組織全体をボロボロにさせてしまうのです。

上記のような企業は、人員削減のリストラだけが目的化してしまって「意識改革」をしていくことが、意識の中から飛んで無くなっているのです。実は、大規模なリストラは、「意識改革」をしていくための千載一遇のチャンスなのです。「意識改革」のベースは、リストラの計画段階にすでにあります。「意識改革」をさせたい、残る者へのメッセージの多くは、リストラして辞めて頂く方々への対応の中にもあるのです。そして、何よりリストラ直後の対応の中に、「意識改革」の礎があり、そこから経営者の真の手腕が問われるのです。

私は、大規模なリストラのプロジェクトを行う場合、上記の大切さを何度も繰り返し伝えて、そのために必要な企業に応じた対応とコンサルティングをしていきます。

再生が上手くいき変わりゆく、JALの「意識改革」の真価が問われる一方で、現職復帰の不当解雇の撤回裁判も続いています。JALの再生手法には、日本企業のリストラ対応を考えるヒントがあると言えるでしょう。

作成日:2012年2月20日 屋根裏の労務士

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