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「キーン先生のエール!」

東日本大震災から、一年が過ぎました。100年に一度の経済金融危機、リーマンショックから、立ち直りはじめていた矢先。今度は、1000年に一度の大震災。更に、原発事故による放射能漏れによる被ばく。その傷口に塩をぬるかのような風評被害。

震災直後の4週間で、日本から出国した外国人は延べ53万1000人。このうち事故発生後1週間では24万4000人だったそうです。震災と福島第1原発事故を受けて、諸外国の政府が、一時的な出国検討を勧告したり、被災地からの帰国支援を実施したことも影響がありました。

そんなときに、キーン先生は震災後の日本に住み、ともに生きて骨を埋めてくれることを表明して、私たちを励まして応援してくれました。キーン先生は、震災直後のインタビューで次のように話しています。

  • 「日本は危ないからと、(外資系の)会社が日本にいる社員を呼び戻したり、野球の外国人選手が辞めたりしているが、そういうときに、私の日本に対する信念を見せるのは意味がある。」

  • 「私は自分の感謝のしるしとして、日本の国籍をいただきたいと思う。」

  • 「私は日本という女性と結婚した。日本人は大変優秀な国民だ。現在は一瞬打撃を受けたが、未来は以前よりも立派になると私は信じる。」

震災直後の混乱の中、キーン先生の日本国籍の取得表明。日本文化研究の御大とはいえ、正直、私は思ってもいませんでした。人は誰にでも、『愛国心』や『ナショナリズム』のような政治的、排他的な思想ではなく、純粋に自分のルーツを大切に思う感情。「祖国愛」というような気持ちがあるからです。

キーン先生が研究に情熱を注いだ、「奥の細道」の舞台であり、何度も訪れた東北。そんな東北が、地震と津波に襲われて、原発事故で、世界から風評被害を受けている。ニューヨークで東北の報道を見て、居たたまれない思いに駆られたそうです。キーン先生は次のように語っています。

  • 「私の知り合いのアメリカ人夫婦も子どものためだと言って出ました。あの美しい日本を、大好きな日本人が住む国を何万という外国人が去ってゆく。私はこの時、決心をしました。日本に帰ろう。そして日本人として余生を送りたいと。」

  • 「長年、驚くほど私に親切にしてくれた日本の人たちに、私ができる最低限のことです。みなさんは私の決心に『感謝しています』といいますが、感謝しているのは私の方です。どうもありがとうございます。」

3.11の震災から、ちょうど1年になる直前に、日本国籍を取得できました。私は、キーン先生の日本に対する多大なるご貢献を踏まえれば、帰化申請は、半年ぐらいで認可されると勝手に思っていました。結局、1年近くもかかったのですが、それでも、少し早めです。法務省の粋なはからいにもあったのでしょう。

記者会見で「待ちわびていた知らせ。うれしく思いました。」と嬉しそうに話している姿をテレビで見て、私もとても嬉しくなりました。キーン先生は、震災の話題になると表情を一転。

  • 「率直に言うと、がっかりしています。」

  • 「震災直後は、日本人は力を合わせていると思ったが、現在はそうではない。街は明るく、必要のない看板も多い。自らを犠牲にするということを考えていない。やるべきことはたくさんある。」

キーン先生は、自分はある意味、日本のお客さんだったが、国籍取得を機に、日本の現状に意見を言うことも考えていると語尾を強くして話していたそうです。

作成日:2012年3月12日 屋根裏の労務士

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