「オジサン!」
駅に着いたら、台風の影響で、大幅にダイヤが乱れ、次の急行が東京に向かう最終電車である旨の放送が流れていました。急いで、急行券を購入、電車に飛び乗りました。しかし、電車は動きません。
場内放送と電光掲示板に、台風が名古屋まできており、電車の発車を見送っている旨の案内がありました。
とりあえず、最終電車はおさえたので、少し安心してきました。お腹も空いてきたので、電車がしばらく動かないのであれば、山梨名物でもある、「ほうとう」でも食べに行こうという気持ちがわいてきました。
駅員さんに聞いたら、発車について明確なことは言えないのでなるべく車中にいるように言われました。
珍しい出張先での台風による足止め。そのときの車内は、次のような様子でした。
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皆様、いたって冷静で穏やかな様子
車内の様子は、この電車はとりあえず動くので東京に戻れるという安堵の様子。車内の空調はよく、立ち席になっている人もいません。車内では駅弁を食べて、ビールを飲み、周囲と雑談しながら、穏やかに過ごしていました。
自然災害の多い国で、たかだが、台風に見舞われただけです。震災で放射能漏れの事故があったわけではない。
i・Padで確認したら、東京でも電車が止まっていることがわかりました。私は、東京で電車が止まっているのに、山梨の電車が動くはずがないだろうと判断。その後に、次のように考えました。
電車が動かないのであれば、次は、ビジネスホテルに人が殺到する。宿代の相場も上がる可能性もある。速度の速い台風なので、明日には恐らく電車は動く。
翌日の打ち合わせが中止になることはないであろう。1カ月前から予定されていた打ち合わせ。関西から出てくる役員もいます。
電車の中にいる疲労度と翌日の打ち合わせのことを踏まえれば、ホテルで一泊すべき。
すぐに、駅前のビジネスホテルに向かいました。最初のホテルはすでに満室。2件目で、とりあえず部屋を確保できました。
駅前の商店街で「ほうとう」を食べ、ゆったりとした気持ちになっていたら、電車のことが気になりだしました。もしも、電車が動くのであれば、ホテル代は無駄になるが東京へ帰ろうと思ったのです。
車内に戻ったら、駅員に絡んでいるオジサンがいました。オジサンは、強い口調で次のようなことをしきりに言っていました。
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『最終電車で動くと言っていたから、待っていた!』
『明日、大切な仕事があるんだ!』
『お前ら、プロなのに、何でわからなかったんだ!』
『こっちはお客様だ!』
私は、この怒っているオジサンは、よっぽど仕事が出来ない人だと思いました。たかだか、台風が来て電車が動かないだけです。この程度の事故やトラブルのリスクは、あって当たり前でしょう。
目の前の駅員さんに落ち度はありません。こんなに速度の速い台風は珍しいのです。恥ずかしいオジサンです。電車の中で泣いている幼児と大差ないでしょう。
自分がイライラしているから、そのはけ口として客という立場をかさに、横柄な態度で駅員さんに、言い掛かりをつけて、ストレスを発散しているとしか思えないのです。
東日本大震災のときに、各国のメディアはこぞって、日本人の礼儀正しさや道徳心の高さを取り上げていました。一方で、電車が遅れた際に、駅員に詰め寄り、自分がお客様であるという立場で、平気で、なじる行為などするのは、日本人くらいとも言われています。
この言い掛かりをつけて絡んでいるオジサンを冷静に冷ややかな視線で、見ている方々が多かったのが何よりの救いだと思いました。
カリカリしていても、ゆったりとしていても事態が改善されるわけではありません。どんな気持ちでいても、そのときの時間は経過していくのです。
結局、電車が発車したのは、早朝5:30ぐらいだったようです。翌朝、綺麗に晴れた青空の下、甲府の街を少し散策して、東京に戻りました。
作成日:2012年7月2日 屋根裏の労務士