「美容業界のジレンマ!」
美容師は、個人指名が基本の業界。体調が思わしくないときに、急に病院に行くという事態が起きた場合、代わりの方に対応して頂くということは、中々難しいようです。また、その緊張とストレスから、出産に何か影響が出るのも心配なので早い段階でいったん退職して、出産・育児に専念する選択をしたそうです。
出産という大切な社会的な責任を担う「母性保護」への理解と周知が、会社だけでなく、お客様を含めてまだまだ十分ではないことを感じていました。
この方は、とても優秀な美容師さんでした。私の髪質なども十分に分かってくれていました。毎回、微妙なちょうど良い長さで、上手くまとめてくれていました。
私は、髪質が固いので、自然の状態では、何かと大変なのです。髪型を短くすれば、少しのびれば、髪の毛が立ってしまうのです。逆に、少し長めにしても、全体のまとまりが悪く、日々の手入れが大変になります。
周囲は、気がつかないかもしれませんが、私は自然なスタイルで落ち着くように、太いロットでパーマをかけているのです。パーマをかけてしまえば、日々の手入れに、時間をかける手間が少なくなります。
美容院にかかるとき、初めて対応して頂く担当の美容師の方に、ヘアスタイルの希望を伝えても、大抵、上手く仕上がりません。カットが終わってから、あれこれ注文するのも何か嫌なものです。
仕上げて頂いたカットが気に入らない場合、私は、都度、美容院自体を変えていました。自分にあったスタイルを提案してくれる美容師さんを探し続けていたのです。また、来月から、自分にあった担当者を探すことになりました。
今回、退職してしまう美容師さんを気に入っていたのは美容師の技術だけではありません。下記のことに、とても配慮して意識してくれていたからです。
- □
私の時間を大切に考えて、あれこれ配慮してくれること。
美容院は、形あるサービスを売るのではありません。一定の完成を約束する、典型的な請負業。そのため、時間通りに、まとめにくいと思います。そのことは、サービス受ける顧客側も、一定の理解があると思います。
しかし、以前、通っていた美容院は毎回、2時間前後も時間が違うのです。パーマとカットをすれば、通常2時間30ぐらい。しかし、そこの美容院は、4時間くらいかかることが普通にあるのです。
それには、理由があります。予約をしていない、飛び込みの『一見客』が来ると受け付けてしまうからなのです。毎月、売上のノルマがあるので、『目先の売上』を得るために予約をしている「常連」を待たせてでも、『一見の客』を先に入れてしまうのです。
『パーマのかかりが悪い』など言ったり、あれこれ誤魔化していますが、そんなのはすべてお見通し。バレテいないと思っているのは、自分達だけでしょう。
ある意味、「常連」となり長期に付き合う程、サービスが低下するのです。何より、大切な時間を浪費させられるのですから、たまったものではありません。
更に、ここの美容院は、予約を入れるときも、「常連」には、土日の午後の時間帯をなるべく入れさせない傾向があったのです。なぜかというと、そこの時間は『新規客』を捕まえるためのゴールデンタイムだからです。
以前、土曜日の午後に予約を入れようと電話をしたら、『すでに予約でいっぱいです。』と言われました。仕方なく平日の夕方の時間に予約を入れたのです。その日、たまたま、店の前を通ったら、スタッフがチラシ配りをしていて店内を見たら、ガラガラだったことがあったのです。
「常連」をないがしろにして、『一見さん』を捕まえているのは、少なからず、ここの「常連」になれば、気が付くでしょう。
美容院や床屋は、熾烈な競争をしています。一方で、いつも本当の顧客である「常連」を後回しにしていることも多いのです。「常連」に新人を担当させたりして、練習がわりにさせられることすらあるのです。新規の『一見さん』を追いかけて、『一見客』にサービスやリソースを注力している傾向が、多分にあるのです。
責任者も雇われ店長でオーナーから毎月の短期数字を厳しく求められる。そのために、『目先の客』を捕まえることに血眼になってしまうのです。
今回の美容業界の話。実は経営コンサルのマーケティングで、固定客の大切さを説明する有名なジレンマの事例でもあるのです。業界の関係者もこのジレンマをワカッテいます。しかし、現実問題として、中々改善出来ないで、大切な「常連」を失うことが後を絶たないということだそうです。
「常連」を中心とした、きめ細かいサービスが出来ている美容院は、安定的な経営が出来ている一定の勝ち組美容院。「常連」となり、長期に安心してお付き合いできる美容院であり、何より担当者でしょう。
弊社には、そもそも「常連」しかおりませんが、上記の事例をいつも忘れずに、「常連」に、スピード感ある上質なサービスするべく自分自身を戒めています。
作成日:2012年8月6日 屋根裏の労務士