「社会のサービス業化!」
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『お冷やの出し方が、悪い!』
『お客様に対して、満足に、水も出すことが出来ないのか!』
『遅れたのに、謝罪の一言も無いのか!』
私は、ビックリしました。確かに、お冷やの出し方は、丁寧では無かったかもしれません。テーブルに、機械的に出すような出し方でした。しかし、ここは、高級料理店ではありません。通常価格の定食チェーン店。定員さんの数も、採算を考え、人員を最小限にして、切り盛りしていることでしょう。
最後は、その時に店内にいた責任者が、謝罪して、その場がおさまっていました。正直、食事前は、嫌な気持ちで、食事はしたくありません。恐らく、そのときに店内にいた方は、少なからず、嫌な気持ちで、食事をしたことでしょう。
食事が終わり、店内を出た後、しばらく、このお冷やの件で、クレームをつけていた方のことを考えていました。多分、この方は、自分も、自分のお客様に対して、高い接客レベルを提供している方なのだと思います。クレームを言っているときの言動からそのことが伝わってきました。
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自分も、高い接客レベルで、自分のお客様に対応している。
だから、自分がお客様になる場合、
その高いレベルでの対応を当然に、サービス提供者に求める。
自分に厳しく、他人にも厳しいというタイプの方なのでしょう。
私は、最近、どこの業界でも、以前に比べて接客レベル、サービスレベルが高くなっていると感じています。
特に、接客などの応対です。顧客第一主義で、終始、低姿勢。相手を気遣うような応対です。百貨店などだけでなく、コンビニやスーパーでも、定員は、低姿勢で親切丁寧です。サービスレベルは高くなっていると思うのです。
また、買い物だけでなく、あらゆるサービス機関が、便利になってきているような気がします。何か次のような傾向を感じるのです。
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社会全体が、サービス業化している傾向
市場からの多様な要望に、対応するために、どこの業界でも、高度なサービスが求められています。その一方、そのサービスを提供する側の負担。以前より、ずっと増していることも事実でしょう。
誰もが、より良いサービスを求める一方で、自分も、より良いサービスを提供する立場という回転になっているのです。このことは、社会的にプラスになっている反面、マイナスになっている面もあると思います。
社会全体が、サービス業化していることはサービスを提供する側は、ストレスが多くなり、コストも発生していることになります。本来のサービスの中身自体ではなく、お客様に対するコミュニケーションの一つ一つに、膨大な注意意識を向けていることも傾向として増えているような気もします。
チェーン店の定食屋で、水が出てくるのが遅れて、少し機械的に、水を出しただけ。その行為に対して、あれだけの正論を言われて、散々、怒鳴られた挙句。最後は、責任者が謝罪まで、させられるのです。正直、クレームを言っている、お客様の方が、言葉の暴力であり、態度の暴力。
恐らく、飲食店の方は、このような方への対応に日常的に、相当の注意を払っていると思うのです。社会が便利になり、高度な接客を受けられている一方。何か、日々、トゲトゲしい社会に、なっている気がするのです。世の中、サービス業化とクレーマー化が、同時に、進んでいるような気がします。近年の日本人の傾向なのかもしれません。
日本は、低成長時代に入り、非正規社員が急増。その非正規社員を活用しながら、少ない人員体制で、日々、高度な接客対応への改善が求められています。何か、そこに社会的な歪みを感じるのです。
その歪みからでしょうか、昨今、企業内の労務トラブルは急増。もはや、退職前に、まとめての有給消化などは、当然の法的な権利遂行で当たり前。退職前に、腹いせで、会社への嫌がらせをしてくるケースもあります。休憩時間中の活動に対する未払い残業への請求。中には、高額な慰謝料請求までしてくる人までいます。
人事担当者も、以前は、注意を払う必要のなかったことにまで対応一つ一つを考えて、注意を払う必要が出てきているのです。トゲトゲしいストレス社会の中、経営者は、あっちに水をかけ、こっちに水をかけ。
以前では、余り、気にすることがなくても済んでいたこと。そのことに、多大に精神的な注意を払い、神経をすり減らして、対応していく、社会的な必要性が出てきているのです。
クレーマー、問題社員、モンスターピアレント、モンスターペイシャアントなどなど。あらゆる分野で、権利要求と過剰なサービス提供を、平然と要求されている社会的な傾向があります。そのための対応に、不毛な注意事項が発生。見えない間接コストが、膨大にかかっていると思うのです。あらゆる業界で、精神的なストレス・コストは、以前より膨大に跳ね上がっていると思います。
飲食業は、少ない人員で、店内を切り盛りしなくてはいけません。その上で、クレーマーのような方に、注意を払い、社会から求められる高度な接客対応を遂行。恐らく、このことは、飲食業に限ったことではなく、他の業種でも言える、近年の傾向でしょう。
飲食店で会計を済ませた際に、「ご馳走様でした」の一言。そんな当たり前の一言が、何か、減っているような気がします。トゲトゲしい、社会になる一方、そんな「小さな感謝の一言」が、歯止めをかけるのに、何か、大切な気がするのです。
作成日:2013年6月3日 屋根裏の労務士