「思考の骨をつくること」
姉の息子は、今年、高校3年生で受験生。将来、就きたい職業の希望も、明確に決めており、その実現に向けて、受験勉強に励んでいるようです。高校生の段階で、将来、就きたい職業があり、それに向けて、勉強していることに、少し驚きながら、感心もしていました。
正直、私が高校生のときは、将来の職業について深く考えていませんでした。ちなみに、高校生の頃は、今の社労士という職業の存在すら知りませんでした。
姉の息子は、理科系です。私は、文科系だったので、理科系の受験のことは、ほとんど分かりません。話しを聞いていると、本人が就きたい職業になるための学部には、ほとんどの大学で、ある科目を受験で必須にしているそうです。その科目は、下記です。
- □
物理
姉の息子は、物理が苦手で、アレルギー状態のようです。化学や生物は、得意の様で、長い化学式を暗記することも苦にならないと言っていました。
しかし、本人が希望する学部には、ほとんどの大学で、受験科目に物理があるそうです。受験で物理を避けてしまうと、大学の選択が、かなり少なくなってしまうそうです。苦手の物理ではなく、得意の化学や生物で、受験をしていきたい旨の相談をしていました。
弱みではなく、強みで勝負。強みを活かしていくのは、世の中の王道でしょう。しかし、私は、この話を聞いたとき、直観的に、下記のアドバイスをしました。
「物理を避けずに、物理で頑張れ。」
物理を避けない方が良いと考えた理由の一つ。それは、多くの大学で、受験科目の必須としているのは、その学部や職業には、物理的思考の基礎力が必要だと思ったからです。
一見すると、受験科目の内容と専門教育や実務に、相関関係は無いような気もします。しかし、社会に出ると基礎学力の大切さに気が付くことが、度々あります。
私は、もう、ほとんど物理のことは、覚えていません。物理が、とても難しく大変だったことは、覚えています。もっとも、私は、文科系だったので、物理の初歩の初歩しか勉強していませんが・・・。
物理は、実際の現象とそれを証明した公式との間で、わかるという理解が必要になります。その理解に届くまでが、簡単ではありません。現象に対して、公式の意味が、理解が出来ないこと。多分にあるからです。物理は、覚えることは多くありません。しかし、知識を覚えるような暗記の勉強では全く対応できない学問だと思います。
姉の息子は、暗記が苦にならないそうです。クイズなども得意のようで、趣味のようになっていると話していました。知識は多い方が良いと思います。しかし、それ以上に、大切なことが、あるような気がしています。
物理を避けない方が良いと考える、もう一つ理由が下記です。
- □
基本的な知識を積み重ねて、起きている現象を捉え、
分析を重ねて、理解を得ていくということ。
物理を勉強することは、上記の能力のベースが出来るような気がするからです。社会に出ると、どんな業界でも、マニュアル的な対応だけでは、対処ができません。
常に、イレギラーのことが起こり得るのです。そのイレギラーの対応に、『知っている』という知識だけでは、ほとんどのことが、対応が出来ないと思うのです。
基本的な理解が伴う知識を、幾重にも積み重ねて、応用的に対処するのです。起きている現実と向かい合い、その現実を的確に捉えて、理解を得ながら判断して、解決策を見出していくことが求められます。
- □
基本的な知識を積み重ねて、理解を得るということ。
物理学という学問は、そのための「思考の骨」をつくるのに適した学問のような気がしています。労務の対応でも、同様のことが言えると思います。細かい通達や判例などは、知っていて損にはなりません。
しかし、実際におこる難しい労務の対応で、大切なことは、基本的な知識を積み重ねて、臨機応変に現場の状況を捉えて、応用的に、解決できる思考力でしょう。「思考の骨」を持っている人は、様々な場面で活躍できる素地を、持っているような気がします。
暗記だけでは対応ができない、多分に理解が求められる物理学。その基礎を学んでおくことは、多方面にわたり、後々の人生で、役に立つような気がするのです。
弊社のクライアントの役員は、理科系の方が多いですが、物理を勉強した経験は、考え方の「思考の骨」になっていませんか。小生の労務コンサルティングも、クライアントの皆様に、実利的な対応だけではなく、何らかの「思考の骨」になっていれば、この上なく、嬉しい限りです。
作成日:2014年5月19日 屋根裏の労務士