「上司の仕事」
男性の3人に1人が、「職場での上司との人間関係」を、『一番の悩み』に、あげていることです。そのほとんどが、上司からのパワー・ハラスメント。
上司からの『ダブル・バインド』による嫌がらせ。上司との接し方自体から、分からなくなっている人。近年、増えているのです。職場での人間関係に、全く、悩んでいない人。恐らく、ほとんど、いないのではないでしょうか。
近年、パワー・ハラスメントは、部下の立場だけではなく、上司の立場であっても、悩ましい労務の問題です。部下への接し方に、苦労している上司。たくさんいると思います。部下への指導方法や育成方針、接し方。分からなくなっている上司。近年、増えていると聞きます。
部下か上司とのコミュニケーションに悩んでいるように、上司も部下とのコミュニケーションに悩んでいるのです。
上司の仕事は、たくさんあります。上司は膨大に、やるべきことを求められています。上司の仕事は、たくさんありますが、私は、何より、大切なことは、次のことだと捉えています。
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「部下に、安心感を与えること。」
世の中には、上司の仕事や役割について、『部下を叱ること』だと、勘違いしている人。多いような気がしています。「指導すること」を『叱責すること』だと、勘違いしているのです。
恐らく、当の本人も、そのように叱責されながら、育ってきたのでしょう。だから、いつも、『部下の穴』ばかりを探して、そこを突くことが、習慣になっているのです。更に、酷い者になると、自分が受けてきた、様々な理不尽な『ダブル・バインド』の対応。それが、血肉化されて、人格になってしまっているのです。
私は、上司の仕事は、まず、大前提の大前提として、部下に、「安心感」を与えることだと思います。何か、指導をしていくのは、「安心感」を与えた後にあるものでしょう。人とは、いつも、不安なのです。自然にしていれば、人間とは、不安になるものです。不安になるのは、人間の本能。生きていくための人間の生存本能なのです。
評価制度を策定するときの打合せで、「チャレンジ精神」ということが、度々、取り上げられます。人は、心のベースに、「安心感」が無い状態では、中々、チャレンジ精神をもって、何かに、取り組むことなどはできないのです。
心が、落ち着かない、不安定な心持ちでは、チャレンジどころか、通常の業務でも、冷静に、取り組むことが、出来なくなると思います。危機感を煽らせる方法で、一時的には、利益が出るかもしれません。危機感を認識させること。時として、必要なこともあるのです。
しかし、危機感を煽らせるようなことが、常態化したような企業。どこかで、無理が出ているのです。短期的なスパンでの利益を優先して、従業員を酷使して、使い捨てにする、ブラック企業の類でしょう。多分、ブラック企業には、人望がある上司になるような器の人。まず、いないと思います。
私は、上司の仕事というより、上司の存在とは、下の者に、「安心感」を与えることだと思うのです。何が起きても、どんな展開になろうとも、最後には、上司が、盾となり、心の支えとなって、守ってくれるという「安心感」。そんな信頼で醸成された、「安心感」の前提の上に、厳しい叱責や危機感を認識させる行為があるのです。
だいぶ前になりますが、私が若い時に、上司だった部長と、お会いしました。その時に、私が、部長に、感謝の気持ちを込めて、次のことを伝えました。
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「あの時、部長が上司だったから、
何にでも、安心して、取り組め、
成長することが出来ました。」
その時に、部長が、お酒を飲みながら、何か自然に、次のように、つぶやきました。
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「俺が、あの時、安心して、部長が出来たのは、
お前が、右腕でいてくれたからだよ。」
部長とは、年齢が二回りも、離れています。親子ぐらいの年齢が離れているのです。そんな人生の大先輩であり、上司だった部長からの労いを感じる温かい言葉。
時間が経ち、成長して、離れてみると、わかることがあります。多分、当時は、よく、わかっていませんでした。
自分は、「上司に恵まれていた」ということです。
作成日:2014年7月21日 屋根裏の労務士