「商人の街」
これまで、「博多・福岡」には、何度か出張で行ったことがありました。小生が、地方都市に出張をするのはほとんどが、説明会かセミナーです。福岡に拠点を持つクライアントは、広島にも支社があります。そのため、広島の出張とセットになるのです。
一日に、高速移動を伴う、ダブルヘッタ―の説明会やセミナー講師業。いつも、仕事が終わった後は、精魂が尽きた、抜け殻のような状態になります。街を散策する元気も無くなります。そのため、これまで、「博多・福岡」の街を、ゆっくり見たことが、ありませんでした。
博多と福岡は、非常に特徴的な都市です。この地域は、博多と福岡の二つの名称を持ちます。地元の人も、博多と福岡の名称について、使い分けが難しいそうです。以前、福岡のクライアントに、次の質問をしたことがあります。
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「博多と福岡という名称は、どちらが、
自分たちのアイデンティティーなのですか?」
上記の質問に対して、その人は、次のように言っていました。
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「博多と福岡のどちらも、
自分にとって、大切な名称です。」
歴史的にも、市の名称を巡り、博多派、福岡派で、大論争があったそうです。結局、市の名称を福岡にし、その代わりに、駅の名称を博多にして、決着をつけたそうです。
二つの呼び名を持つ都市。国際的にも珍しく、世界では、「ツイン・シティ」と呼ばれているそうです。厳密には、福岡市の中に博多区があります。
博多の名称は、名産や商品のロゴにも使われています。「博多とんこつラーメン」、「博多明太子」、などなど。博多商人の気質が、博多という名称でブランド化されています。
一方、福岡の名称は、九州地区の先進性を打ち出している様な気がしました。「福岡空港」、「福岡タワー」、などなど。城下町であった武士の気質が伝わってきます。
この街は、商人の気質と武士の気質が、見事に噛み合って、「博多・福岡」という、独特の雰囲気を作り上げているのです。特に、他の都市と違う、「博多・福岡」独特の雰囲気を小生が感じたのは、次のことです。
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この街は、工業の匂いがしないこと。
街をつくりだす、人の雰囲気や活気の中に、工業の匂いがしないのです。工業の匂いが無い街とは、言い換えれば、商業の匂いが、溢れる街なのです。
「博多・福岡」は、商業で結合された街です。工業立国の日本では、珍しい都市でしょう。東南アジアへ乗り出すための拠点都市である立地。当たり前のように海外へと乗り出し、したたかに、生き抜いてきた博多商人。博多商人のDNAの如き、商才とそのパワー。それが、街を歩いていると、ヒシヒシと伝わってくるのです。
現在の中心部の天神地区の繁華街。その発展は、博多商人の力なくしては、あり得ないことだったでしょう。天神は、夜になると、屋台がずらりと並びます。この光景は、他の街では、味わえないものです。屋台の大将と、接しているだけでも、一つ一つの応対に、商才の魂のようなものが伝わってくるのです。
アジアに、一番近い国際都市など、様々な顔を持ち合わせる、「博多・福岡」。今回の旅を通じて、また一つ、日本という国について、何かが分かり、何かを掴んだような気がします。
作成日:2014年9月1日 屋根裏の労務士