「セクハラ発言、降格処分妥当」
最高裁は、降格処分などを妥当とする判決を下しました。
男性管理職2人は、女性派遣社員に対して、約1年にわたってセクハラ発言を繰り返して行っていました。会社は、女性派遣社員の被害申告を受けて調査を行い、就業規則に定めるセクハラ禁止規定に該当するとして、二人に、出勤停止と降格の懲戒処分を下しました。
会社側の処分に対して、重すぎる処分として男性社員2人が、会社側を訴えてきた裁判。2012年2月の処分から約3年にも渡り、最高裁まで争われた裁判です。セクハラ処分を巡る双方の主張の概略が次です。
- 【男性社員2人の主張】
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事前警告が無い突然の処分は、手続きが不当。
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発言は相手に許されていると誤信していた。
- 【会社側の主張】
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セクハラ禁止文章を作成して社内で周知。
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セクハラに対する研修も実施。
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管理職の者に対して、部下である派遣社員が
明白な拒否は出来にくいのが実情。
上記を踏まえて、最高裁の判断が次です。
- 【最高裁の判断】
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部下の派遣社員が抗議出来ない状況は少なくない。
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セクハラ発言の多くが、第三者がいない状況の中で行われており
会社が被害を具体的に認識して、事前に警告や注意をする機会がなかったのは
やむを得ない。
管理職男性2人を、「事前に注意や警告をせず」に、降格と出勤停止とした懲戒処分。会社側の処分が妥当だったか争われた訴訟の上告審。最高裁第一小法廷は、会社内でセクハラ禁止は周知されており、処分は重すぎないとして、処分を無効とした2審・大阪高裁判決を破棄。会社がセクハラ行為を認識し、警告する機会もなかったとして、発覚後直ちに処分したのは妥当だったとしました。
私は、テレビでこの報道を見た翌日。定期購読している以外の新聞5紙を購入。読売新聞が、一面で大きく取り上げる他、社説や関連記事を含めて、5つのテーマで詳細に取り上げていました。
6紙の記事を読み比べながら、今回の判決についてその背景や趣旨を確認しました。どの新聞も、今回の最高裁の判決を社会通常上相当性を欠くとは言えないとして捉えています。むしろ、2審の高裁で下した下記の判決を実情の理解を欠いた不適切な判断として報じています。
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女性が『明確に抗議しなかったこと』から、
男性2人が自分たちの発言が許容されているという判断。
最高裁は、上記の様な判断をしていません。実情を踏まえて、次の様に判断しています。
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「職場の人間関係の悪化などを懸念し、
抗議や抵抗、会社への申告を躊躇することが少なくない。」
もしかしたら、高裁では、身体の接触がない、セクハラ発言程度では、降格処分は厳しすぎるという判断もあったのかもしれません。高裁判決から今回の最高裁の判決までの期間で、社会のセクハラ意識の急速な高まりも、今回の最高裁の判決に影響があった様な気がします。
社会のセクハラ意識の急速な高まりとなった契機になったのが、昨年の6月の次の事件だと思います。
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東京都議会での『セクハラ野次問題』
女性議員が妊娠や出産に悩む女性への支援策について都側に質問していた際に、下記の野次に対する、東京都への1000件を超える抗議。
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「自分が早く結婚したらいいじゃないか!」
「産めないのか!」
国内における批判のみならず、海外からも批判を受けることになる始末。東京都議会での『セクハラ野次問題』が起きてから民意は、セクハラに対して厳格な対応を求める意識の高まりがあります。セクハラの苦情があった場合、企業は加害者に対して、具体的な懲戒処分の内容に、悩むことが多いものです。
被害者自身が、今後の自分の職場環境や加害者からの復讐などを恐れて、厳罰を望まないことも少なくありません。また、被害者が心の傷を負ってしまい、自分自身では、今後の対応について考えることも出来ない状況も多いものです。
今回の最高裁の判決処分。今後の企業側のセクハラに対する処分時の大きな指針になります。企業側は、今後、セクハラに対して、重い処分を科せるようになるはずです。と言うより、厳しい処分を求められ、厳しい処分をしていく必要があるという方が、適切かもしれません。
セクハラの多い企業は、パワハラなどのハラスメントが多い傾向にあります。今後、ハラスメントの意識の高まりの中で「言葉によるハラスメント」に対して、社会は厳しい対応を求めてくると思います。
一方で、男性2人は、代理人を通じて次のようなコメントをしています。
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『発言していないことを発言したと決めつけられていて、納得できない。』
恐らく、セクハラ発言を録音した様な証拠。決定的な証拠は無かったのだと思います。企業でセクハラの調査を行い、処分を下すときに証拠というのが、問題になることが多いものです。加害者は、事実を認めないことも多いからです。
それでも、企業は対応を求められます。処分の対応をしなければ、被害者から訴訟を受けることもあります。また、処分の対応をしたら、処分した者から訴訟を受けることもあります。
企業は、難しい判断が求められることが多くなると思います。それでも、証拠が無いことで、お茶を濁す様な曖昧な対応。企業は、してはいけないと思うのです。
作成日:2015年3月2日 屋根裏の労務士