コラム Column

「今は、景気が良いですか?」

私はクライアントと打合せをする前に、次のことを、度々、お伺いしています。
  • 「今は、景気が良いですか?」

ほとんどの方が、概ね次のような返答です。

  • 「良くないです。」

それでも、現在、日経平均株価は、2万円を超える勢い。ITバブルの高値を更新して、18年半ぶりの高値となっています。さらに、雇用環境もかなり改善しています。完全失業率は3.3%です。1997年4月以来、18年ぶりの低水準。

有効求人倍率は1.17倍。1992年3月(1.19倍)以来23年ぶりの高い水準です。大卒就職率は94.4%。高卒はバブル期並みとも言われています。

世の中の景気指標は大幅に改善しているのに、「景気が良い」という実感は、余り感じられない様です。私は、多分、『経営者の方が言う景気が良い』と思っているのは、次のような景気の状態を言っているのだと思います。

  • バブルの時のような景気の良さ

クライアントの経営者の方は、ほとんどの方が50歳以上の方々。日本経済が元気のよい、成功体験を実感したことがある世代。右肩上がりの景気の良さ。バブルを体感した世代。

経営者の方々は、バブルを体験しています。冒頭の「今は、景気が良いですか?」という漠然とした質問。景気が良いかどうかという判断基準のベース。何か無意識のうちに、バブルの時と比べている様な気がしています。

正直、人口減少の日本で、バブルのような好景気。私たちが生きている間に、再び、起こる可能性。残念ですが、ほとんど無いと思います。バブルのような好景気は例外と考えるべきでしょう。

バブルが弾けた後の失われた20年の中で比べれば、今の景気状態は、決して悪くないような気もしています。明らかに、リーマン・ショックの時よりは、景気は良くなっています。

リーマン・ショック後の失業率は2009年7月に5.5%に上昇。その後、景気の持ち直しを受けて失業率は低下傾向が続いており、現行の賃金水準で働きたい人が、すべて雇用されている「完全雇用」に一段と近づいたとの見方も専門家の中ではあるようです。

リーマン・ショックは、100年に一度と言われた大不況。あんな大不況も、そうそう起きるものでもないでしょう。あのような大不況も、また例外と考えるべきでしょう。

今の景気状態が上限。これが景気の良い状態だと言われてしまえば、正直、いささか寂しい気持ちにもなります。

働く人は、好況感をあまり感じていません。一方で、企業は人を採用するのが、大変になっています。現在、採用はバブル崩壊後の買い手市場から一転。売り手市場になっています。就活には、千載一遇の大チャンスの到来です。恐らく、この機会を逃したら、そうそう、こんな売り手市場は舞い降りてこないしょう。動くなら今です。

有効求人倍率0.5倍前後だったのが、その2倍以上の1.17倍。多くのクライアントで、求人広告費に膨大な費用がかかっている状況。更に、それだけ、求人広告を出しても、採用が中々出来ないようです。

採用の面接でも、これまでと立場が一転。採用面接の話題で、労働条件や福利厚生に関して、質問が多くなっているようです。企業側も採用対策の一環として労働条件や福利厚生の改善に向けた相談が増えています。

私の方も、給与制度や退職金制度に関するコンサルティングが増えています。コンサルティングのコンセプトも内容の変化を強く感じています。不況下の時の様な人件費の抑制的な成果主義から、若手や女性の抜擢、定年退職者の活用などを踏まえた成果主義に変わってきているのを強く感じています。

最近、日々、コンサルティングをしていて、次のことをしみじみと感じています。

  • 世の中、どのタイミングで入社してくるかによって、
    待遇が違うということ。

リーマン・ショックの様な不況下の時。超買い手市場で就活にあたってしまった世代。就活自体が大変だっただけでなく、採用にあたり、賃金を含めた労働条件自体、安く買いたたかれている傾向が強いのです。

一方、今のような採用難の時。就活自体が楽なだけでなく、賃金を含めた労働条件全般が優遇されて入社できる傾向にあるのです。

当然、入社後の育成の方法や接し方も不況下と好況下では、全く違います。不況下で会社内に余裕が無いときは、ろくに人材育成もされないまま、即戦力が求められ、概して酷い扱いでこき使われるのです。一方、好況下で会社に余裕があるときは、しっかりと人育成がされ、じっくり優しく育成されるのです。

中小企業は特に採用難になっているので、良い人材の採用が中々できません。そこで、今の時期についての採用者に限り、有給休暇を入社時から付与したり、育休の特別配慮を検討したり、各種特別優遇を検討している企業もあるようです。

企業の利益の配分。功労者である、今いる従業員ではなく、まだ、何ら利益を出していない新入社員に配分されている傾向にあるのです。

誠に、世の中とは、不公平に出来ているものです。概して、従業員は、公平感が損なわれれば、表立って口には出しませんが、愛社精神が損なわれたり、ふてくされたり、モチベーションを落とすものです。

世の中は、公平に出来ていません。実に不公平に出来ているのです。どのタイミングで入社するかで、全く得られる効用が異なるのです。しかし、従業員というより人間は、中々、それを理解して悟り、受け容れることも出来ないものです。公平、平等であるべきだと当然に思っているものです。しかし、現実的に世代間の格差は歴然とあるものです。

採用難も続いていますが、今いる従業員とのバランスも大切。企業の労務の課題は、リストラではなく、採用難になっています。

  • 「今は、景気が良いですか?」

上記の質問に対するご回答。「良くないです。」というご回答が多いですが、多分、悪くはなっていないのでしょう。

作成日:2015年7月6日 屋根裏の労務士

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