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「日本型のワークライフバランス」

例年、3月は納品や説明会が多くなり、大繁忙時期になります。先週、最終打合せに伴う納品作業で、深夜の時間帯にさしかかり、打合せに向けて資料をつくり込んでいました。資料がやっと完成して、印刷をしていた時です。印刷中に、複合機からビィービィーという異音が発生。複合機の部品交換が必要になる故障が起きてしまったのです。

明日は、説明会前の最終確認の打合せ。これまで、1年近い期間をかけて打合せをしてきた集大成。印刷する資料も膨大にありました。資料が無ければ、打合せになりません。都心から少し離れた郊外のクライアント。打合せは、翌日の14:00からです。

複合機が故障してしまったので、今回はクライアントの方で、印刷して資料を用意して頂きたい旨のお願いメールをしました。クライアントの担当者に、作成した資料をデータで送付。最終確認の納品が伴う資料。打合せの参加人数分の印刷になりますので、印刷して製本をするだけでも膨大な事務量が発生します。

ちなみに、弊社は、零細企業ですが、コンサルティングの打合せに伴う膨大な印刷作業があり、毎月、ビックリする様な印刷代が発生して、請求書を見る度に、毎回、ブルーな気持になっています。

毎回毎回の打合せに向けて、とにかく膨大な印刷が発生するので、弊社では、自動に製本作業ができる高性能の複合機を入れているのです。弊社は零細企業ですので、極力、経費がかからない様に工夫をして、地味にしていますが、複合機については、少し贅沢をさせて頂いています。

そんな小生の大切な商売道具が部品交換になるような故障が発生。通常、製本作業が出来るような複合機を入れている企業。滅多にないと思います。人数分を印刷して、ホチキス止めをして、製本して、資料をまとめるだけでも、1時間程度はかかる様な量でした。

小生との打合せは、会社内の重要な機密事項がほとんどです。中小企業の場合、通常、役員や部長の方とのお打合せになるので、印刷して頂く方も、必然と役員や部長になってしまいます。

繁忙期に、部長職の方に雑多な印刷の事務作業で、お手間かけさせて、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていました。しかも、郊外のクライアントのため、毎回、駅まで送り迎えを、部長にして頂いていたのです。

明日の朝一番で急ぎで、雑多な事務を頼むことになってしまって、申し訳ない気持ちでブルーになっていたら、ふと、思い出したのです。

  • 印刷サービス会社があること。

実は、この仕事を始めた最初の頃、当時は複合機なんて贅沢品はありません。製本作業の大量印刷をするとき、度々、印刷サービス会社を利用していたこと。思い出したのです。

事務所から少し行ったところに、印刷サービス会社があることを思い出したのです。ネットで調べたら、印刷サービスは、24時間営業。すぐに印刷サービス会社に向かいました。

何にも無かった、複合機が無かった、何をするのにもつまずきながらの若かりし時代を思い出しながら・・・。

  • 深夜の時間帯に営業している印刷会社があるなんて!

この国は、何て、便利に出来ているのだろうと感謝しながら、価格も確認せずに、セルフ印刷をして、無事に印刷が完了。カウンターで請求金額を見てビックリしました。カラーで大量印刷をしたために、印刷代が1万円を超えていたのです。

「エー」と思いながらも、仕方ありません。事務所に戻る道中は、ガッカリ感に襲われていました。それでも、無事に印刷作業が済んで、明日の打合せの用意が完了したので、すぐに気持ちをワクワクモードに切り替えました。

次の日は、9:00に出社。出社したら、すぐに修理の依頼をしようと思ったら、電話が入りました。コピー機のメーカーに、故障の内容が自動で通知されており、メーカーからすぐに修理に伺う段取りをとる旨の連絡を頂いたのです。

その30分後には、保守会社の担当者から、電話を頂きました。自動通知された修理番号から、交換部品を特定できている様子。電話を頂いた、1時間後には、保守会社のサービスのエンジニアに駆けつけて頂き、その1時間後には、複合機は復旧しました。

結果的に、昨晩、印刷サービス会社を利用しなくても、印刷をして打合せに間に合わせることが出来たことになります。私は、一連の対応のすばらしさに少し感動をしていました。

私の方から、何にもアクションをしない状態で、メーカーから販売会社に連絡が渡り、半日もかからないで、交換部品を特定して、部品交換まで完了させているのです。更に、その一連の作業に対して、エンジニアは特別の対応というわけではなく、何か普通のことのように、対応しているのです。

私は、打合せに向かう電車の中で、次のことをしみじみと感じていました。

  • 「日本という国は、何て便利に出来ているのだろうか!」

深夜の時間帯になり、印刷をしようと思えば、24時間営業している印刷サービス会社があります。複合機が故障になれば、こちらから電話をしなくても、電話がかかってきて、駆けつけてくれるサービスマンがいます。

そんな日本の高度に工夫されたサービスを実感しながら、一方で、次のようなある思いも沸いてきました。

  • 「あー、ワークライフバランス、難しいのだろうな。」
    「日本では・・・」

社会が便利になっているということ。誰かが、頑張ってくれているということでしょう。深夜の時間帯に、24時間の印刷サービスに、応対してくれる人がいたり。複合機が故障をすれば、電話をしなくても、素早く対応してくれるサービスマンがいたり。社会がこんなに便利になっており、取引会社が頑張ってくれていること。感謝をしながら、一方で、沸いてくる、ある思い。

  • 「日本社会では、ワークライフバランスが難しいということ。」

ワークライフバランスを論じるときに、ヨーロッパとの比較が度々されています。ここ数年、年末に、見聞を広めるためにヨーロッパを訪れています。ヨーロッパの各国に行くたびに、感じること。

  • 「日本とは何て便利な国なのだろうか!」

ヨーロッパが不便というより、日本に居るときには気が付かない、空気の如き日本の便利さ。海外に行くと身をもってわかるのです。欧州では、日本のコンビ二のような店はないし、スーパーでも品数は少なく、自動販売機もあまりありません。日本より概してサービスは落ちるし、何かサービスを受ければ、当然のように、チップが必要になります。

社会の価値観が、仕事中心ではなく、個人の生活が中心です。有給休暇の消化などが義務付けられていたり、個人の自由な時間がある一方で、日本社会の様に、社会が何から何まで便利になっていないのです。

欧州のコピー業界のことまでは知りませんが、恐らく、日本の様に、便利に高度化されたサービス。提供していないと思います。恐らく、このことは、コピー業界に限ったことではないでしょう。

イタリアに行ったとき、ラテン民族のおおらかさには、カルチャーショックを受けました。

まず、広場にある街のシンボルになるような時計。ほとんどの時計の時間が、全くあっていないのです。最初、自分の腕時計の時間が間違っていると思いました。

旅行雑誌でも取り上げられている様なきちんとした有名店で食事をした時です。トイレから出てきて、手を洗おうとしても、トイレの手洗いの水が出てこないのです。最初、やり方が分からないのだと思って、あれこれ迷っていたら、他のお客の雰囲気から、どうやら、手洗いの水道が故障していることに気が付いたのです。

ところが、お店の人は、特段、慌てる素ぶりもなく、故障してしまったので、水が出ないので、手は洗えないというようなあっけらかんとした様子。

自動販売機は、お金を入れて、商品が出こないこともありました。どうやら、イタリアで自動販売機が故障して、しばらく放置されているなんて、珍しいことではない様です。

デパートにも関わらず、お客様用のトイレはないし、更に、街にあるトイレは、ほとんどが有料。たまに、無料のトイレがあれば、便座がついて無かったり汚くて、とてもする気になれません。

ワークライフバランスを語るときに、欧州のことが取り上げられることが多いです。しかし、正直、欧州のワークライフバランスは、日本では、あくまでも、参考の参考程度にしかならないとも、私は思っています。ましてや、欧州のやり方。そのまま日本に持ち込むことなんて、到底無理なことでしょう。

余りにも社会の前提が違いすぎるからです。欧州と日本では、社会の価値観が全く異なるし、社会が求めているものも全く異なっていると思うのです。日本の感動する様な便利さの恩恵の背景には、基本的には、誰かが頑張っているわけだし、当然に、自分も頑張っているわけです。

色々と言われていますが、日本人は、基本的には、勤勉で優秀ですし、日々、改善に改善を重ねて、社会に便利さを提供しています。官民一体となって、どの業界でも、日本に住んでいる方は、日々頑張って、社会に便利さを提供してくれています。何より、メイド・イン・ジャパンは、多くのものが、神がかり的です。

  • 国民が、社会のインフラや利便性ではなく、個人の生活の方を充実させていくのであれば、今の様な便利さを、国民がある程度、放棄していく側面もあるということでしょう。

過労死が起きる様な過重労働は、当然に改めていかなければいけません。育児や介護のことなどを視野に入れていく必要があります。

ワークライフバランスについて、欧州の価値観をそのまま持ち込んできて、何か雰囲気で正論の理想論で議論するのではなく、真面目に日本社会の現実社会に向き合って、優先順位をつけて、現実論で語り、出来ることから順番に対応していくことでしょう。

欧州の真似ではなく、日本の文化や国民性、価値観にあった「日本型のワークライフバランス」とは何かを、議論することから再度はじめて、社会と調整をつけて、国民の意識と擦りあわせしながら、「日本型のワークライフバランス」を、オリジナルでつくり込んでいく必要があると思うのです。

作成日:2016年3月14日 屋根裏の労務士

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