コラム Column

「日本庭園と桜」

先週末に、大阪に出張してきました。例年、3月は第3週までにすべて納品を済ませて、3月の月末から4月の月初は、ゆっくり桜を愛でながら、事務作業をして、繁忙期の疲れを癒しながら、のんびり過ごすことを予定しています。

桜が咲く中で、別れと出会いの情緒交差する春の季節。凍てつくような寒さの冬が終わり、待ちに待った春の暖かさに嬉しくなります。桜が咲く季節には、気持ちにも区切りをつけて、ゆっくり過ごすことを考えています。

しかし、現実はそんな予定通りには、運びません。例年、年度末の3月は、想定外の相談をあれこれ受けて、その対処にあたりながら、満開の桜が散り、葉桜になった頃に、少し仕事の方が落ちついてきます。

今回、急遽、4月1日に、関西地方で説明会の講師業の依頼を引き請けることになりました。繁忙期の3月の激闘で、心身ともに疲れ果てていました。それでも、まだまだ終わりにならない。延長戦の大阪出張。

心身ともにボロボロになりながらも、そんな延長戦を。
実は、心のどこかに、待っていた自分。
何か、やる気満々で、準備をしていた自分。
自分の中に確かにいたと思います。

説明会を無事に乗り切り、クライアントに挨拶。会場を出て、一人になったら、急に疲れが、足元から体全体に襲ってきました。ダムの堤防が切れる様に、これまで溜まっていた疲労が溢れ、張り詰めていた心の緊張感が切れました。

フラフラの状態になり、その場に座り込みました。しばらくうずくまっていましたが、それでも何とか立ち上がり、東京に戻ろうとしました。

土地勘のない不慣れな地。思考の焦点が定まらなくなりました。電車に乗ることも出来ない状態。タクシーを捕まえて、新大阪の駅まで向かいました。新大阪の駅に着いたとき、東京まで帰る体力や気力。もはや、ありませんでした。

体力と気力を回復させるために、這うようにして、ビジネスホテルに向かいました。ホテルの部屋に入るなり、ベットに倒れ込みました。スーツを着たままで・・・

体の節々が痛くなり、思考の焦点が定まらなくなりました。頭がグルグル状態になり、そのまま、眠り込みました。

目が覚めたら、夜の遅い時間になっていました。体力と気力が少し回復してきたので、コンビニに食事を買いに出かけてかぜ薬を飲んで、再び、眠り込みました。翌日は、何か心身ともスッキリとしていました。体力と気力が回復して、東京に戻れる状態になりました。

振り返れば、年が明けてから、心労が伴う重篤な相談が相次ぎました。また、コンサルティングの納品に向けて、連日の打合せとそのための用意。終日ゆっくり休めたのは、2月に一日あっただけ。心身がいつも緊張している状態になっていました。

大阪のホテルをチェック・アウトした時。繁忙期をやっと抜け出し、私にも、ようやく春が来たような心持ちになりました。満開の桜にも、何か、やっと落ち着いて、愛でることができた気がします。まだ、東京に溜まっている仕事もありましたが、心と身体を休めるのも大切な仕事です。京都で途中下車をして、桜を見てきました。

私は、「日本庭園の鑑賞」が趣味の一つです。毎年、都内9庭園のフリーパスを購入しています。四季折々の庭園情緒を楽しんでいます。しかし、年明けから、一度も、日本庭園に行くことが出来ていませんでした。

私は、自分の趣味の分野については、マニアになって、特段、深く振り下げて追及はしません。ただ、純粋に楽しむ程度に留めています。私は、得てして、マニアなところがあり、とことん突き詰めるところがあります。

好きになり、熱中すると、そのことばかりをいつも考えてしまうのです。そのうち、「趣味」ではなく、『道』として極めたくなってしまうのです。だから、あえて深いところまで入り込まないようにもしています。他の人や自分と競争したり、誰かに披露したり、ましてや何か勝負する様な趣味は、待たないようにしています。

  • 何かに対して、上手くなったり、上達していくこと。

嬉しいことだし、何より楽しいものです。しかし、私は、マニアな性格なので、楽しいだけでは満足せずに、どうしても一定限のところまで、突き詰めて、極めたくなってしまうのです。ただ、楽しむだけにはおさまらず、目的意識を持って、調べたり研究したり、技術を向上させたりしてしまうのです。

極めていく過程では、どうしても楽しいだけではなく、ストレスに苛まれる状態になってしまうものです。

  • 『道』として極めていくのは、今の労務の仕事だけで十分。

趣味については、あくまでも気晴らし程度にしか嗜んでいません。その点では、日本庭園の鑑賞は、私にピッタリの趣味なのかもしれません。そんな気晴らし程度の趣味の庭園鑑賞。以前、クライアントから、次の質問を頂きました。

  • 「佐々木先生は、日本庭園の中で、どこの庭園が一番好きなのですか?」

一番好きな庭園というのは、なかなか難しい質問です。それぞれの庭園に情緒があり、趣が異なるからです。一番は答えられませんが、5本の指に入るとすれば、次の庭園は、入ってくると思います。

  • 「妙心寺の退蔵院」

今回、退蔵院が何か急に見たくなり、妙心寺を訪れてきました。退蔵院には、見事なしだれ桜があります。3年ぐらい前、JR東海の春のCMにも取り上げられていた記憶があります。

そんな見事なしだれ桜に、期待を膨らませて、ワクワクしながら、退蔵院を訪れました。しかし、4月2日の時点では、しだれ桜は一輪も咲いていませんでした。どうやら、退蔵院のしだれ桜は、例年遅咲きで、ソメイヨシノが葉桜になった頃に、満開となる様です。

名物のしだれ桜が咲いていなかったのでガッカリ感になっていましたが、今回、桜が咲いていない退蔵院を訪れて、次のある発見をしました。

  • 日本庭園の美には、桜の魅力に頼った庭園がないこと

日本の国花とも言われる桜。その魅力は、説明するまでもありません。しかし、桜を中心にして造られている日本庭園。私が知る限りでは、一つもありません。退蔵院のしだれ桜は、咲いていませんでしたが、見事な庭園美がそこにはあり、何か心が癒されました。

しだれ桜で有名な六義園も、しだれ桜は、いわゆるメインの庭園と全く関係がない場所にあります。桜は咲いている時期が短いので、庭師が桜を庭園美のメインにしないのは、当たり前かもしれません。

日本庭園は、桜の季節だけではなく、桜が咲いていない時期も、心を癒してくれます。久しぶりに、退蔵院を見て、リフレッシュが出来ました。いつか、満開となった退蔵院のしだれ桜も見てみたいです。

作成日:2016年4月11日 屋根裏の労務士

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