コラム Column

「生きてさえいれば」

日本財団が、9月7日に、全国約4万人を対象にして、自殺意識調査の結果を発表しました。今回の調査結果によると、下記のような人数になるようです。
  • 最近1年以内に自殺未遂を経験したことがある人。
    推計53万人。

「1年以内に自殺未遂を経験した」と答えた人は0.6%。全国では53万人(男性26万人、女性27万人)と推計。半数以上が20代から30代の若年層。「本気で自殺したいと考えたことがある」という人は25.4%。20歳以上の4人に1人が、次のようなことを考えたことがあると回答したのです。

  • 「本気で自殺したいと考えたことがある」と・・・。

更に、このうち、6.2%の人が現在も自殺を考えていると答えたそうです。若い人ほど自殺未遂を経験したり、自殺を考える割合が高いようです。

日本では、毎年2万人以上が自らの尊い命を絶ちます。日本は世界に冠たる経済大国であるにも関わらず、自殺率が先進7カ国で最も高い国なのです。特に、若年層(15歳~39歳)の死因で、自殺が第1位になっているのは日本だけです。

未来のある若年層が夢や希望を持って生きているどころか、本気で死ぬことを考えながら、絶望を抱いて生きているということ。現在の少子高齢化社会の歪み。若年層が生きにくい社会になっていること。そして、自殺意識調査の結果を見ながら、何か次のことをしみじみと痛感してきます。

  • 社会の仕組みをよく分かっていない若年層に
    我慢させる仕組みで、国策を続けていくことに限界を。

  • 年輩者が自分たちも若い頃は、同じ様にやってきたなどと言って
    若年層に我慢させる風潮を続けていくことに限界を。

企業運営の中でも、若年層が希望を持って活躍できる仕組み。必要になっていることを改めて感じています。しかし、世代間の格差を解消させるための取組や運用。簡単なことではありません。現実に、これまで社会や会社を支えてきたと言われる高齢者やベテラン。『お偉い先輩方々』が、現実にいるわけですから。

人口減少で市場がドンドン縮小している経済情勢下。どの企業も、今期の数字をつくり、現状を乗り切ることだけで、正直、精一杯です。

企業側も若年層に抜擢人事をさせる余裕もなく、ベテラン社員の力に頼っていく必要もあります。また、現実は、若年層の抜擢人事について、ベテラン社員に理解を得ていくこと。日本社会の多くの企業は、まだまだ、難しいことが実情です。

  • 若年層が社会に不満や不安を超えて、
    生きることに絶望を感じていること。

各種事情は色々とあるのだと思います。自殺の背景に、何らかの格差が原因していること。間違いないと思います。

  • 格差社会がドンドン進んでいる日本

競争をする前に、あらゆるところに、不満や不安を超えた絶望感を抱くような格差。歴然とあります。人間というのは、公平感や納得感が持てないと、不利な立場にいる者は、そもそも競争するためのモチベーションが出てこないものなのです。

生きるということ。八方塞がりの状態に感じたり、実際に八方塞がりの状況に陥ることの連続だと思うのです。そもそも社会というのは、理想的にはなっていないし、永遠に理想的な状態にはなりません。いつの世も社会というのは、既得権と特定の誰かに有利な慣習や常識で、固められているものです。

しかし、どんなに絶望や不安を感じても、ダメ。

  • 「死んではダメ」

生きてさえいれば、あり得る。逆転が!
生きてさえいれば、あり得る。喜びや感動が!

  • 「死んではダメ」だということ。

きちんと教わっていないし、分かっていないような気がするのです。その一方で、不安や焦りを煽るようなこと。幼少期から、親や教師、社会から、嫌というほど、それこそ皮膚感覚になるまで刷り込まれて、精神に植えつけられているのです。

その結果、まるで、何か霊術的なものに取りつかれたかのように、少しのことで不安や焦りという悪魔に、精神を簡単に乗っ取られてしまうのです。会社に入社すれば、たいていの上司は、不安や焦りを煽るようなマネジメントをするものです。

  • 得てして、教育や指導、マネジメントというもの

現在の瞬間を楽しんだり、未来をワクワクした心持の状態にさせるのではありません。将来の不安を煽り、ろくでもない競争を強いて、現在を我慢させることがほとんどなのです。先行きが見えない不況が続く中で、様々な格差が広がり、不安な心持が常態化し、幸福感を見出せなくなっているのです。

それでも、身体が健康な状態であれば、実は、そのことだけでも、結構、幸せな状態なのです。加えて、精神がしっかりとしていれば、相当、幸せな状態なのです。

人生というのは、色々と困難に襲われても、生きてさえいれば、後は、結構、何とかなってしまうものなのです。簡単に人間は死んだりしないのです。将来の不安を煽るようなことだけではなく、実は、未来は何とかなるということも、きちんと教えておいた方が良いのです。

市場が縮小して、不安や格差が広がっている状況。不安になりやすい外部要因が多い状況だからこそ、生きてさえいれば、後は何とかなるということも、きちんと教えていく必要があると思うのです。

私たちは、運よく、「先人たち」が築いてくれた、経済大国の日本に、何より、文化大国の日本に。運よく、生まれてきたわけですから。それこそ、人生の楽しみは、山ほどあるのです。最後の最後は、生活保護もあります。

生活保護が破たんしているなどと言って、不安を煽っている人は、きちんと分かっていない人です。最後の最後のセーフティーネットは、日本はきちんと整備されているのです。その安心感があるのですから、「必死に」なって生きるのです。人間は、必ず死にますが、「必死に」なって生きるのです。

  • 支えてもらう立場だけではなく、支える立場にもなり。
    まずは、自分で自分を支えながら、「必死に」なって生きるのです。
    そして、お互いに支えあいながら、「必死に」なって生きるのです。

自分が思い描いた通りの人生を過ごせるわけではありません。しかし、戦争に行くわけでもないし、拷問を受けるわけでもありません。加えて、言論の自由、宗教の自由、職業選択の自由もあるのです。

自分の意思に反して、特攻をするわけでもないのに、自らの命を自らの意思で絶つなんて・・・。死んでしまえば、自分の意識は、無くなってしまうのですから。

たとえ、悲しむ人が誰もいなくても、
自分の命は、自分だけのものではないと思うのです。

作成日:2016年9月12日 屋根裏の労務士

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