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「本社の仕事は、いつでも、under・stand」

ここ数年、事情は様々ですが、事業再編を行うクライアントが増えています。事業譲渡による合併や株式交換を通じて、企業規模が、2倍から3倍以上になるクライアントが増えてきました。

これまで、クライアントに無かった新たな部門が出来るために労務の分野でも、労働条件の統一に向けて、各種調整事項が発生してきます。

最初に労働条件の統一をしていくのは就業規則です。ご存じの通り、弊社が策定している就業規則。かなり精密につくり込んであります。対等合併により、労働条件を統一していく場合でも、弊社のクライアント側の就業規則をメインの就業規則として見直していくことになります。

労働条件の統一に向けた各種対応を取り計らう中で、会社が少し落ち着いてきて、少し余裕が出来てきたとき、最後に調整していくのが、下記の内容です。

  • 評価制度の策定

企業規模が大きくなる過程の中で、「企業の質」の変化も起きてくるものです。合併前に対応をしていた従前の評価制度の仕組み。会社の規模や質が変化していく中で、どうしても、合わなくなってくるものなのです。

特に、合併を繰り返していく中で、本社部門や間接部門の人数が増えていき、下記について相談を受けたり、コンサルティングをさせて頂くことがあります。

  • 「間接部門の評価をどのようにしていくべきか?」

間接部門の評価制度というのは、どの企業でも、評価を運用していくのが難しく、課題を抱えているものです。そもそも、評価制度の運用に関して、誰からも納得感を得られ、公平な対応をして、理想的な運用が出来ている企業はありません。

それでも、企業は納得感と公平感がある運用を目指して、評価の精度を上げていく必要があります。評価制度は会社からの行動基準。会社からの究極のメッセージでもあるからです。

評価制度の策定コンサルティングをさせて頂くときに、いくつか策定過程を踏んでいく中で、下記の工程があります。

  • 「従業員インタビュー」

評価制度の考課項目である着眼点を策定するにあたり、従業員からも意見や要望について、評価制度に取り入れていくために、「従業員インタビュー」を行うのです。間接部門の方をインタビューしていて、次のような意見を頂くことがあります。

  • 「間接部門は、頑張っても適正に評価をされません。」
    「間接部門には、表彰制度もありません。」
    「頑張っていても、周囲から理解がされません。」

私も、サラリーマン時代に、本社の間接部門にいたことがあります。その気持ちが、何か、よくわかります。また、間接部門に関わらず、本人が思うように、評価や理解というのはされないことが多いものだと思います。

  • 辛いことだと思います。
    頑張っていても、何も評価も理解もされないこと。

間接部門というのは、概して、A評価というのは出にくいものです。基本的には、B評価以下しか付きにくい傾向にあります。私は、間接部門の中でも、とりわけ、本社部門に関して、向いていない人がいると思っています。

「頑張っても評価をされない」、「表彰制度がない」と考えて、日々、納得できないと不満な心持になっている人です。周囲に対して、自分の仕事ぶりについて、過剰な理解や共感を求める方です。もちろん、現場の人に、会社の情報を漏らす人などは論外の方です。

私は、評価や表彰などを、仕事のやりがいや価値観においている方。間接部門ではなく、現業部門の方が、向いていると考えています。現業部門であれば、間接部門よりも、概して、評価をされやすく、表彰などを受ける機会が多いからです。

  • 何か評価されたり、表彰されたり、周囲の視線があるから、動くという常識感の方。
    間接部門に向いていないと考えています。
    特に本社の人には向いていません。

そもそも、間接部門というのは、具体的に何をしているのかも、周囲からあまり理解をされていないと思います。間接部門で、会社から表彰を受けるようなこと。滅多に無いと思います。

近年は、多くのことが以前よりも、見える化をしている傾向にあります。更に、見える化をしている方が良いことであるという風潮もあります。一方、本社の間接部門は、企業の機密事項に触れることが、ほとんどです。具体的な業務内容に関して、周囲から理解をされていないというより、そもそもブラック・ボックスになっているのです。

私は、サラリーマン時代に、本社の間接部門にいたとき、お客様、取引先、企業内の様々な問題やトラブルを対処する機密性の高い部門にいました。当時、私の業務内容に関して、理解していた人。直属の上司である部長と一部の役員しかいませんでした。

誰かに相談をしたくても、基本は相談することは出来ません。問題を整理して、対応策を考えて、会社に提案することが、私の仕事だからです。

権利関係や事実関係、更に金銭関係、人間関係が、グチャグチャに入り交じり、複雑に絡み合ってしまって、既に、会社との信頼関係が破たん。現業部門で、これ以上、対処ができなくなった相談案件。拗れてしまった糸を紐解きながら、事実関係を整理し、一つ一つ対処にあたります。

すべての案件が個別対応をしていく事案であり、何より、企業の恥ずべき、不名誉な内容です。当然に、すべての内容が重大な機密事項です。

問題を解決するにあたり、相手を刺激しないように、我慢に我慢を重ねて。こちらの主張をしながらも、相手にも寄り添い。散々、嫌な思いをしながら、難解な交渉や対応を積み重ねて問題が解決。その結果を踏まえて、役員会で取り上げられる下記の議事録。

  • ●●の件、●年●月●に、解決した。

あれだけの対応を積み重ねて、問題を解決させても、取り上げられるのは、結果だけです。それも、たったの一行、二行。恐らく、役員会で問題に関して、話し合われてもいません。散々、経緯書や伺いを策定しても、レポートに関して役員は目を通す程度。評価されたり、表彰されるどころか、基本的には、周囲は知らないし、そもそも、知られてもいけません。

当時、私は、まだ20代で多くのことが分かっていません。当然に、今より精神的に成熟していません。そんな未熟な私に、ある役員が、私に教えてくれた間接部門の仕事のマインドが下記です。

  • 「現場の方々に、本業に専念して頂くこと、
    それが間接部門の仕事でもあるということ。」

現場が精神的に負担になるような大きな問題を抱えてしまったら、それを理解してあげて、見守ってあげること。状況によっては、窓口を現場から切り離してあげて、現場には、売上と利益を稼ぐ本業に専念して頂くことも、本社の仕事だと教えてくれたのです。

  • 本社の仕事は、いつでも、「under・stand(理解する)」。

  • 現場に理解されるのではなく、まずは現場を理解するということ。

相手の内側に立ち、相手を理解することであり、自らがすでにその中に巻き込まれており、自分も当事者である意識を持つこと。

そんな本社の間接部門のマインド。20代の駆け出しの頃に教わりながら、本社部門を支援する今の社労士業の相談業務や労務のコンサルティングをさせて頂いています。クライアントを支え、クライアントに支えられながら。そして、日々、感謝と感動を頂き、お互いに成長をしながら。

作成日:2016年10月24日 屋根裏の労務士

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