「お客様アンケートの分析と評価制度への連動」
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大変満足している
書類のシュレッターサービスをしている業者です。担当者は連絡をすれば、すぐに、引き取りにきてくれるし、シュレッターをした結果についても、レポートを丁寧にしてくれます。
基本的には、それほど、『難しいサービス』の内容ではありません。業者に依頼をすれば、段ボールが送られてきます。日時の指定をすれば、段ボールの引き取りにきます。その後、書類を溶解しているようです。処理した状況についてレポートもしっかり送られてきます。
シュレッターサービス業者の一連のサービス。実は、私は、特段満足しているわけではありません。実際のところ、この業者に対する満足度は下記です。
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これまで大きなトラブルがなく、不満がないだけ
担当者はいつも挨拶がしっかり出来ていて、笑顔が多く、さわやかで元気な対応。アンケートは、担当者へのご祝儀も兼ねて、「5段階の5 大変満足している」に、すべてチェックして返信しました。
一方、3社のうち2社については、アンケートを返信していません。理由は、窓口になる担当者に満足していないからです。更に、この企業2社とも、アンケートが4段階評価になっており、下記のチェック欄がないのです。
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「3 普通」
特に、窓口となる担当者の一連のお粗末な対応。営業担当者やプロジェクトの指揮をとる担当者です。毎回、毎回、呆れるような稚拙な対応なのです。担当者に任せられないので、毎回、私の方が細かく指示を出して、作業の段取りや確認作業をしている始末。
しかし、後方の技術者や製作者の能力が高いので、2社とも取引を続けているのです。また、サービスには、連続性があるので、業者をスイッチングさせるのは、時間や労力の取引コストやリスクが伴うものなのです。
アンケートを出せば、厳しい評価になる担当者が出てきます。
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お世辞でも、満足していると言えない担当者
自分の部下でもないのに、お小言を言ったり、注意をしたり、担当者の社内評価を下げるような厳しい評価。正直、私は、厳しいアンケート評価をしたくもありません。だから、アンケートは、提出しないのです。
それに、形がない商品や高度な技術を提供するような仕事。「難しいサービス」になれば、なるほど、そこには、想定外の問題やトラブルの種が内在されており、トータル的な満足度を得るのが難しくなるものなのです。
週末に業者から送られてきたアンケートに目を通しながら、サラリーマン時代のことを思い出していました。
当時、「お客様アンケート」の内容について、私が所属していた部署で、アンケートの項目や内容を策定していました。アンケートの結果から、サービス内容を見直す分析をして各部門に対して、各種提案をしていたのです。その中で、とりわけ、小生が熱心に取り組んでいたのが下記です。
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アンケートの結果を数値化して、社員の人事査定に連動させること
当時、アンケートの内容をデータベースソフトに落とし込み、見える化と数値化をさせ、それを社員の査定に連動させることを試みたのです。売上や利益以外の数値項目以外に、顧客視点での定性的な評価も数値化させ、社員の査定に連動させて、サービスの質をあげていくことを試みたのです。
更に、それだけでは、ありません。協力業者のアンケート結果も取り込み、業者への指導、教育も視野に入れていたのです。当時、私の評価制度に関する思想の中で、下記の考えや思いが強くあったのです。
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仕事の評価を決めるのは、上司ではなく、お客様であるということ
上記の考えは、ある意味、正論で間違っていませんが、現実論で考えれば、正しくもありません。アンケートの結果は、担当者一人のパフォーマンスで決まるわけではなく、様々な要因や状況が複雑に重なり、最終的な評価結果に至るわけですから。
更に、アンケート結果を分析していくと、概して次の傾向があることが分かったのです。
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低額の請負案件に関しては、アンケートのCS数字が高い傾向。
高額の請負案件に関しては、アンケートのCS数字が低い傾向。
上記は、次のようにも言い換えることができます。
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難易度の低い請負案件に関しては、アンケートのCSの数字が高い傾向。
難易度の高い請負案件に関しては、アンケートのCSの数字が低い傾向。
さらに、請負案件の内容は、次のようにも分類することができます。
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こだわりが少ないお客様の案件に関しては、アンケートのCSの数字が高い傾向。
こだわりが多いお客様の案件に関しては、アンケートのCSの数字が低い傾向。
標準仕様でおさまらない高額で難易度の高い案件ほど、想定外のことが発生して問題やクレームが多く、本社対応になるような案件が多かったのです。つまり、私が取り扱う案件になっていくのです。
一方、標準仕様で対応ができる低額案件は、ほとんどクレームにならないのです。予算も限られており、顧客の求めてくること、そもそも、余りこだわりもありません。そのため、比較的に簡単に高いCSを得ることが出来やすいのです。
難易度が高い案件に対しては、高い技術力や高度な接客スキルが求められます。そのため、能力の高い担当者や業者に仕事を割り振ります。案件が難しくなり、数多くの人や業者を使うので、担当者や業者に対するアンケートで、高い評価を得るのが、概して、難しい状況になるのです。
難易度の低い案件には、そのレベルでも対応ができる担当者や業者に仕事を割り振るのです。また、案件によっては、未経験者や試の業者に仕事を割り振ることも当然にあります。
結局、ある程度は、「お客様アンケート」を査定に反映させることは出来ても、様々な事情が複雑に重なりあうので、何らかの形で会社からの調整が入る形になり、ダイレクトにお客様の評価を査定に入れることは出来ないのです。
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「お客様アンケート」は、サービス向上のための貴重な情報源
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「お客様アンケート」は、重篤な問題を回避するためのお客様の声
しかし、「お客様アンケート」の結果を社員の報酬に連動させて、評価制度に反映させていくためには、まだまだ、時間をかけて取り組み、経験を積んで勉強をしていく必要があること。会社全体で評価制度の精度を上げていく取組をしていく必要があること。気が付くことが出来たのです。
それに、お世辞でも満足していると言えない担当者に対して、私と同じように、そもそもアンケートに答えたくないというお客様もいます。アンケートを評価に連動させていくのは、馴染まない一面もあるのです。
また、会社はCSを上げていき、最終的な理想状態として下記のことを、いつも会社目標に掲げていました。
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お客様からの紹介を増やすこと
お客様アンケートを分析していて分かったのですが、お客様からご紹介を頂けるのは、下記のケースが多いのです。
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難易度が高い案件で、高いアンケート評価を受けていること
こだわりがあるお客様の難しい案件に、満足がいく高い応対が出来ていれば、ご紹介を頂けるのは、ごもっともなことです。しかし、驚くのは下記です。
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厳しいコメントを記載したアンケートを頂いたお客様から、
意外と、ご紹介を頂けることが多いということ
厳しい意見のアンケート。評価項目にチェックしてくる内容結果は同じでも、そのチェックしてくるお客様の思惑や気持ちは様々なのです。
サービスの不満に対して、腹立たしい気持ちを超えて怒りのようなクレームとして、厳しいアンケートで伝えてくるお客様もいます。一方、改善を期待して、会社のことを気にかけてくれているので、厳しいアンケートで伝えてくるお客様もいます。強いこだわりがあるから、厳しいアンケートになることも多いのです。
そもそも、サービスに対して不満があり、連続性がないのであれば、相手への改善は期待せずに、何も伝えずに、去ってしまうお客様がほとんどでしょう。
週末にアンケート用紙に、目を通しながら、「お客様アンケート」と評価制度への連動に関して、あれこれ、考えていました。「お客様アンケート」の結果。アンケート結果は同じでも、その内容や意味することは様々です。また、「お客様アンケート」の分析を、誰がするのかによっても、分析内容は、それぞれ、異なる結果になってくるとも捉えています。
いずれにしても、「お客様アンケート」を実施して、結果に一喜一憂しているだけではなく、しっかりと分析をして、未来に向けて活用していくことが大切なことなのでしょう。
作成日:2016年11月7日 屋根裏の労務士