コラム Column

『非日常の世界』に入るということ

年末年始にスペインに行ってきました。年末のバタバタ状態で慌ただしい中でしたが、強行で旅をしてきました。私は、大学生の頃、一時期、旅行業界に興味があった時期があります。そこで、旅行業界について勉強するために、長期の休みのときに、旅行会社でアルバイトをしていたことがあります。

旅行会社で働いたときに、「人が旅をするということ」について。自分なりに気が付いたことがあり、あれこれ考えた結果。結局、自分は旅行業界には向いていないという結論に到り、旅行業界には、進みませんでした。

当時、「人が旅をするということ」について、次のことに気が付いたのです。

  • 人が旅をするということは、
    毎日の「日常の世界」から離れて、
    一時的に、『非日常の世界』に入るということ。

旅行会社は、『非日常の世界』を演出するために、サービスを提供しているという一面もあります。当時、私は、夢のような『非日常の世界』ではなく、毎日の泥臭い「日常の世界」に、この身を置くこと。泥臭い現実を見つめて、泥臭い現実を突き詰めて、生きていく方が、自分には向いていると考えたのです。

それでも、旅は子供の頃から好きです。「自分が知らない場所」を訪れるのが、何とも楽しいのです。私は、子供の頃から、旅に関して、好奇心旺盛で、フットワークが軽いところがあります。

小学3年生の時には、電車の乗り換えの必要がない隣の街ぐらいであれば、一人で電車に乗って、遊びに行ったりもしていました。小学4年生になると、親に連れられて家族で旅行するより、友達同士で少し遠方に遊びに行くことに関心がありました。

小学生の頃は、一人で電車に乗るだけでも、何とも言えない、ワクワク感とドキドキ感があるものです。小学5年生の頃には、電車の乗り換えもマスターして路線図と地図を読み込んで、群馬から東京まで一人で遠出することも出来るようになっていました。小学6年生の頃には、親よりも東京に行くことに関しては手慣れた状態になっていました。親と東京に行っても、私が連れて歩くという意識でした。

何で、私が子供なのに、こんなに旅慣れていたかというと下記のためです。

  • 頻繁に迷子になったため

幼少期の頃、私は、本当によく迷子になっていました。小学1年生のときに、渋谷のスクランブル交差点で父親からはぐれたり。家族旅行のときに、新潟駅で家族からはぐれたり。そういえば、遠足や修学旅行のときも、集団からはぐれてしまい、先生から大目玉を食らうことも度々。

幼少期の頃に、親から離れて迷子になると、何とも言えない不安な気持ちになり、ヒヤッとするものです。親の方からすると、子供がいなくなるのは、子供以上に、ヒヤッとして、全身が心配と不安な気持ちに襲われたそうです。

私は、あまりにも頻繁に迷子になるので、迷子なった場合の非常事態対応について、子供ながらにして、経験上、あれこれ掴んでおり、自分なりに危機対応を身につけていたのです。

まず、自信がない場合、迷子になってしまい、不安な気持ちに襲われても、絶対にその場を動かない。動かないでいれば、そのうち、必ず親の方から血相を変えて、はぐれた場所まで、探しに来てくれること。子供ながらにして、経験上、分かっていたからです。

次に、知らない人に声を掛けられても話をしない。困ったときは、自分の方から、誰かに声をかけて相談をする。

  • 相手の方から声をかけてくるのは、悪い人。
    一方、自分の方から声をかけて対応してくれるのは、親切な人。

私は、上記のことも、子供ながらにして、経験上、気が付いていたのです。

小学3年生の頃になると、自分が、よく迷子になるのは、下記のためであると考えるようになっていました。

  • 自分が親に、『くっ付いていこうとする意識』でいること。

誰かに、『くっ付いていこうとする意識』でいるから、自分の頭が思考停止状態になり、迷子になるのだということに気が付いたのです。『くっ付いていこうとする意識』でいると、親からはぐれた時に、パニック状態になりやすいのです。

また、誰かに、『くっ付いていく』というのは、大人でも子供でも、何事に関しても意外と疲れるものなのです。

  • 特に頭が悪い人や仕事が出来ない人に、
    ついていくことほど、苦痛なことはありません。

  • 一方、出来る人に導いて頂いたり、
    アドバイスを頂くことほど、ありがたいものはありません。

私は、子供の頃から良い意味でも悪い意味でも、自立心がありました。そのため、どこか遠方に行くときは、自分の頭で考えて、自分が親を引き連れていくという意識が出来ていたのです。

実際に、東京で迷子になったこともありました。しかし、山手線で渋谷か上野まで出て、オレンジ色の地下鉄(銀座線)に乗り換えれば浅草まで着くことが出来て、そこから、駅員に相談すれば、群馬まで乗り換えをせずに、帰ることができることは子供ながらにして、理解していたのです。

山手線の内側にさえいえば、自分が安全ゾーンにいること。子供ながらにして、直観的に理解が出来ていたのです。

旅というのは、どんなに周到に準備をしていても初めて訪れる場所であれば、毎回、想定外の展開になり、ヒヤッとするようなスリルを味わえるものです。今回のスペインの旅は、ヒヤッとするようなスリルに、飛行機の乗り継ぎがありました。

弊社のクライアントには、外資系企業やグローバル企業も数多くあります。役員の方は、頻繁に海外出張しているので笑われてしまうかもしれません。実は、小生は、これまで、飛行機の乗り継ぎをしたことがなかったのです。飛行機の乗り継ぎは、今回、初めての経験となりました。

今回、スペイン旅行を決めたのも、昨年から日本とスペインの直行便が出来たからです。しかし、日本とスペインの直行便は、まだまだ本数が少ないのが実情。そのため、チューリッヒで乗り継いで、マドリッドに入ったのです。

航空券を手配してくれた旅行会社は、非常に乗り継ぎが良いチケットが取れたと言っていました。

  • チューリッヒでの乗り継ぎ時間が45分。

待ち時間がほとんどない状態で、乗り継ぎが出来るという説明を受けました。しかし、慣れない海外の大きな国際空港で、45分の時間での乗り継ぎ。ワクワク感がある一方で、少し不安な気持ちになっていました。

当日は、飛行機のチューリッヒへの到着が15分の遅れが発生したため、乗り継ぎに30分しかない状態になっていました。飛行機が、到着する前に上着を着て、手荷物を棚から降ろして、手にはパスポートと航空券を用意。

飛行機の到着と同時というより、少しフライング気味にシートベルトを外して一目散に飛行機から降りることが出来ました。モニターで自分が次に乗る飛行機を確認。セキュリティーチェックをすばやく受けて、自分が目指すべきゲートを目指します。

恐らく、フライング気味にシートベルトを外していなかったら、セキュリティーチェックだけでも20分程度の列に並ぶことになったでしょう。

次に、飛行機に乗る前に、入国審査が待っています。ヨーロッパでは、乗り継ぎに関して下記の協定が結ばれています。

  • シェンゲン協定

ヨーロッパ内の出入国手続きの簡素化を図るために国境検査なしで国境を越えることを許可する協定です。「乗り継ぎ国」と「最終目的国」がシェンゲン協定の場合、「最終目的国」ではなく、「乗り継ぎ国」で入国審査が行われることになるのです。

そのため、今回は、チューリッヒの乗り継ぎで入国審査を受けることになったのです。列をなしている入国審査の場所に辿り着いたとき、一つだけ、空いている窓口を見つけました。心の中で、自分の強運にガッツポーズ。しかし、次の瞬間に空いていた理由が分かります。

  • そこには居たのです。
    厳しそうな年輩の女性の係官が・・・。

役所の臨検でも、概して、女性の担当官にあたってしまった場合、マニュアル通りの厳格な対応を受けることが多いものです。通常、入国審査では、日本人であれば滞在期間と訪問目的ぐらいしか確認はされないものです。

しかし、今回は、英語であれこれと細かく確認されました。私は英語を話せないので、単語のやりとりだけで何とか応対をして入国審査を切り抜けました。その間のやりとりで、15分ぐらいのタイムロス。どうやら、海外であっても、調査事には女性の担当官は鬼門のようです。

飛行機の出発時刻まで、10分を切っている状態。自分の精神状態が、焦りの状態になっていました。次に、スカイメトロと呼ばれる電車に乗って、ゲートを移動する必要がありました。慣れない海外の巨大空港で、スカイメトロに乗ることが正しいのか、間違っているのかも、不確かな状態。

走りながら、スカイメトロのホームに着いたとき、既に電車が到着している状態でした。ホームの左右どちら側の電車に乗れば良いのかについて判断するために、何か、スローモーションの様に周囲の情報が目に飛び込んできました。

瞬時に、ホームの左右どちら側の電車でも問題がないということを認識。この電車に乗るべきということ。これまでの経験や空港図などから直感で判断。とりあえず、この電車に乗らなければ、もう飛行機の出発時刻に、間に合わない状態でもありました。

3分程の時間、不安な気持ちで電車に揺られながら、出口に到着。電車を下りて自分が進むべきゲート名を見つけたとき、全身が安堵に包まれていました。そこから、駆け足で搭乗口まで向かい出発時刻の5分前に、何とか飛行機に乗り込むことが出来ました。結局、飛行機の出発時刻は10分程度の遅れがありました。

海外に不慣れな素人には45分の乗り継ぎ。かなり厳しい時間だと感じていました。それでも、一度、乗り継ぎの方法を覚えてしまえば、自信にもなりますし、次からは怖くもありません。帰りの乗り継ぎは、全く不安はありませんでした。それに出国検査では、入国審査のときのように厳しい確認は受けません。

後から振り返れば、直行便ではなく、乗継便を使うことで、良い経験をすることが出来たとも感じています。小学生の頃に、一人で、東京に行ったときのようなドキドキ感とワクワク感になることが出来ました。

海外に着いて荷物を無事に回収できれば、拘束感は無くなり、そこからは、楽しい自分の時間となります。『非日常の世界』を思う存分楽しむことが出来ます。

次回から、2回に渡り、「スペインの休日」をコラムで取り上げて、スペイン旅行で学んできたことについて、お話していきます。

作成日:2017年1月9日 屋根裏の労務士

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