消費者の『召使い』ではありません
ヤマト運輸の宅配便の基本運賃を引き上げの報道がなされる中。先週は、ヤマト運輸の労務問題も報道されていました。36協定違反や未払い残業代などの労務問題です。
- □
「宅配便の基本運賃の引き上げ」と
「長時間労働による未払い残業代の問題」
上記の2つの問題が関連しているということ。誰もが、容易に察することができるでしょう。ヤマト運輸の会社側も、値上げによる増収分で、働き手の待遇改善を進めなければ、配送網を維持できないと判断したようです。
究極までに、『便利さ』を追求してきた宅配便サービス。市場の労働力不足を踏まえて、曲がり角を迎えていると言えるでしょう。今回の値上げの背景には、下記があります。
- □
ネット通販の急成長
小生も、一年中繁忙状態で、買い物に出かけるための余暇の時間がありません。そのため、度々、アマゾンのネット通販を利用させて頂き、ヤマト運輸のお世話になっています。最近は、少額商品でも配送料無料という場合も多くなりました。ネット通販が急成長して、宅配業者は一年中繁忙状態でも、利益はなく、あまり儲かっていないのだと思います。
ヤマト運輸の宅配便の値上げや未払い残業の問題を受けて、メディアでも各種報道がされています。今回の値上げの中で、下記のことが大きく取り上げられています。
- □
多くの人が、「過剰サービス」と感じる再配達システムの見直し
宅配業者の行き届いた再配達システム。あのすばらしいサービスが、空気の如く、『当たり前のサービス』だと思っている人。実は、意外と多いそうです。再配達の予約をしているのにも関わらず、配達指定日に不在にされることも珍しくないそうです。
小生は、自宅には、宅配ボックスがあります。会社の近くには、ヤマト運輸の営業所があるので、再配達システムのお世話にはなりません。ヤマト運輸の担当者とは、顔なじみになっています。近所ですれ違うとお互いに挨拶をする間柄です。
営業所に不在連絡票の荷物を取りにいくことがあっても、営業所のほとんどのスタッフとは、顔なじみになっており、証明書を提示する必要もない間柄になっています。ヤマト運輸の担当者は、とても親切です。重たい荷物の場合、荷物を取りに行っても、台車に積んで運んで頂いたりしてくれます。
ヤマト運輸の担当者のお話しでは、営業所の近くに住んでいる方でも、わざわざ、営業所まで荷物を取りに来てくれる人。滅多にいないそうです。再配達を指定されても、不在のことも多いそうです。また、連絡が来ないのであれば、何度も再配達することになるそうです。
ヤマト運輸の再配達システム。小生は、「すばらしいサービス」を超えて、『怖いサービス』だと感じることがあります。再配達の料金は、価格に入っているはずだし、価格に入っていないのであれば、誰かが、タダで、泣き寝入りをして働いていることになるからです。
以前、宅配の荷物を取りに営業所に行ったときに、ヤマト運輸の担当者に下記の言葉をかけたことがあります。
- □
「ヤマトのサービスは凄いですが、
宅配の仕事は、大変ではないのですか?」
それに対して、担当者の方は下記の様に即答していました。
- □
「この仕事を選んだのですから、仕方ありません」
30歳を少し過ぎたぐらいの中堅の担当者だったのですが、私は、とても感心した心持になったことを覚えています。私がヤマト運輸の担当者に、感心した心持になったのは、下記の様に感じたからです。
- □
担当者から、「プロフェッショナル意識」を感じたから
「宅配業者としてのプロ意識と使命感」。何か、担当者から強く感じたのです。愚痴や不満などは、一切、言わずに。「この仕事を選んだのですから、仕方ありません」と自然に、さっぱり、楽しそうに、笑顔で、言えているからです。
- □
現実逃避で、『仮の自分』を、流して生きているのでなく、
現実を受け容れて、「今の自分」で、力強く生きているのです。
しかし、そんな「プロフェッショナル意識」で、仕事ができるような人。どの業界にも、僅かに数えるほどにしかいないものです。多くの宅配業者の担当者は、再配達システムに悲鳴を上げているのです。宅配業界は人手不足で、仕事の需要があっても、働き手がいないのです。
人手不足などで、長時間労働が増えていることなどから、ヤマト運輸は、正午から午後2時の時間帯を指定した配達の取りやめなど、サービスの抜本的な見直しを検討している様です。
現在は無料の再配達について、荷主と共同で削減に取り組む一方で、「協力を得られないなら運賃体系に反映しなければならない」として、有料化に含みを持たせたコメントを出しています。
- □
宅配業者は、消費者の『召使い』ではありません。
プロフェッショナルのサービスには、敬意を払い、報酬を払うことが当然なのです。そうでなければ、その仕事をする人が、社会からいなくなってしまうからです。
日本のおもてなし文化は、過剰サービスで、影の部分もあるものです。サービスを甘受する消費者の意識を変えて頂くこと。おもてなし文化が行き届いた日本の市場で、必要になってきていることを感じるのです。
作成日:2017年3月13日 屋根裏の労務士