「カミソリシュートのような講演」・・・(元横浜大洋ホエールズの平松政次氏)
経営者の方々が一斉に集まる様な大きな懇親会を49回目も開催してきたということ。社長や役員の人を惹きつける人間力の高さには、毎回、驚かされるばかりです。何より、社長の「誰よりも短い挨拶」の中に、社長の人間的な魅力とその自信が凝縮されているように感じました。
何かと忙しい現代社会で、小さな集まりであっても、簡単に人は集まってくれるものではありません。それを180人近い人数を集めて49回も開催しているのです。更に、毎回毎回、元プロ野球の大物選手が懇親会に駆けつけてくれており、懇親会に花を添えているだけではなく、自らが率先してその場を盛り上げてくれているのです。
今年は、懇親会に下記の方の講演がありました。
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元横浜大洋ホエールズの平松政次氏
元祖団塊世代の平松さんは、今年で70歳の古稀を迎える年齢になるそうです。講演では、平松さんの野球人生について、様々な教訓を踏まえて、お話して頂けました。
平松さんは、「カミソリシュート」の異名のシュートを武器に、大洋ホエールズで18年間活躍。プロ野球での通算成績は下記になります。
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201勝196敗16セーブ。
奪三振2045。
防御率3.31
母子家庭の境遇で育ち、苦労をしている母親を幸せにするために、子供の頃から確固たる「夢と目標」を持って、プロ野球選手になることを目指していたそうです。
平松さんは、長嶋さんと巨人に強い憧れを持っていたそうです。平松さんが高校3年生の時に、初めてドラフトが始まったそうです。中日ドラゴンズにドラフト4位指名されたが、巨人への夢を諦めきれず、入団を拒否。
社会人野球の日本石油に入社。翌年都市対抗に出場し優勝。ドラフト前には憧れの巨人からのドラフト1位の確約もあったが、ドラフト当日に蓋を開けてみたら、巨人からのドラフト1位ではなく、大洋からドラフト2位の指名という顛末。
大洋入団の際に、球団職員としての身分保障も契約条件に提示されたそうです。しかし、プロの世界で成功をする覚悟をもって入るのであり、失敗したときの保障までは必要ないとの決意から、球団職員としての身分保障は断ったそうです。
また、入団に際して、子供の頃から持ち続けてきた巨人への想いも捨てて、自分は大洋の一員になる腹を決めたそうです。平松さんは、そのことを次の様に話していました。
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「別の場所に気持ちがある状態で、今の場所で成功することは出来ない」
巨人に対して様々な気持ちが沸き上がり、気持ちが交差する中。自分の気持ちに整理をつけて、気持ちを切り替えたそうです。「気持ちを切り替える大切さ」についても、何か伝わってくるもがありました。
巨人への反骨心から、「巨人キラー」となります。通算201勝のうち51勝が巨人からの勝ち星なのです。
平松さんは、巨人戦の前日は、意識のすべてを打倒巨人に向けて、集中することが出来ていたそうです。ぐっすり眠れて巨人戦に臨んだことは一度もなく、気持ちや意識が高ぶり、集中が出来ていたそうです。ベットに入っても、一晩中、巨人の打者へのシミレーションをしてしまい、頭が動いしまって、ほとんど寝つけない状態で、試合に臨んでいたそうです。
しかし、平松さんは自分の経験則から言えば、大切な勝負の時は、下記の様な精神状態の時に、良い結果が伴うものだと力強く話していました。
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リラックスしてぐっすり眠れた精神状態の時より、
緊張してほとんど寝つけない程に、意識の集中が出来ている精神状態の時
すべての試合に関して、自分の精神を緊張状態にして、意識の集中をすることは出来ません。しかし、ここ一番の勝負の時には全神経を集中させて、眠れないまでに頭が動き、必死にシミレーションをして臨むものなのでしょう。
大切な勝負に勝つときの精神状態。集中が出来ているときの精神状態というのは、上記のような精神状態になれたときなのでしょう。「巨人キラー」と呼ばれた背景には、平松さんのそんな精神状態があったのです。
平松さんは、講演会場に集まっているのは、主に経営者であることもあり、自らの経験を踏まえて、平松流の人材育成のヒントも話して頂けました。『人を育てる』というより、「人が育つ」ためには、下記のことが大切だと力強く話してくれました。
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「限界を超える練習が必要だということ」
昨今の働き方改革の世の中の流れとは、反することだとは前置きをしながら。甲子園での優勝や自らが経験してきた成功体験は「限界を超える練習」があったということ。
自分の潜在能力を引き出すために必要なこと。今の自分を超えるために必要なこと。当り前に決められた練習を普通にこなしただけでは到底足りず、常識を超えた「限界を超える練習」があったということ。その「限界を超える練習」が出来たのは、大きな「夢と目標」があったからだということ。
天才と普通の人を同じ土俵で扱ってはいけません。しかし、プロ野球で200勝もする投手になるためには、常軌を逸した練習が必要であったということでしょう。
平松さんは、小学生の時から、『そんなことは夢物語だ』と周囲から言われて、必死に練習している姿をいつも笑われていたそうです。そんな幼少期からの自分の経験を踏まえて、「人が育つ」ためには下記の3つが大切だと、生々しい実話を熱く語り掛けるように話してくれました。
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「素直であること」
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「上手く気持ちを切り替えることができること」
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「限界を超える練習をすること」
上記の3つは、これまで耳にタコができる程、聞いたことがある当たり前のことです。説明の方法や解説は違えど、多くの啓発本に書いてある当たり前の話です。しかし、当たり前の話であっても、臨場感あるライブで話を聴くと、その当たり前に対して新鮮な気持ちで理解を深めることができるのです。
今年、野球殿堂入りをした平松政次氏。「カミソリシュートのような講演」は、聴く者の内角をえぐるような鋭さがありました。
作成日:2017年9月4日 屋根裏の労務士