『誰にでも都合の良い顔』
期日前投票は、2014年の前回衆院選の同時期と比べ62.5%増。国政選挙での過去最多を大幅に更新。全有権者数の20.1%に当たる人が期日前投票をした様です。また、今回、衆議院選挙としては、初めて18歳以上を有権者とした選挙になります。ちなみに、参議院選挙は、2016年からでした。
任期を1年以上残しているのに、何で、今の時期に解散するのかも、きちんと説明がされていたとは到底思えません。一連の不祥事を踏まえて、8月に内閣改造をしたばかりです。それが10月に解散・総選挙なのですから、この間に何もしていないと言われても仕方がないところです。
身内の自民党内である石破茂元幹事長からも「何のために解散するのか明確にする必要がある」と釘を刺される始末です。
弊社やクライアントの方々も、国会での働き方改革の動向を見守りながら、各種プロジェクトの準備や検討をしていたのに、結局、解散となってしまいました。国会での残業時間の規制法案の成立など。働き方改革に期待していた人も多かったと思います。
解散に大義があったように思えません。自分たちの都合ばかりに思えて仕方ありません。選挙をするには600億円から700億円もの税金もかかります。民主主義の必要コストとはいえ、金がかかるのですから、国民が本当に必要な時期に選挙をして頂きたいです。
一方、今回の総選挙で野党の方の動きでは、事実上の民進党の解党がありました。希望の党立ち上げ、立憲民主党の結成など、様々な政党の動きがありました。
しかし、冷めた見方をすれば、結局、これまでの政党における枠組みの中で、くっついたり、離れたりをしているに過ぎません。小生は野党の動きより、連合の動きが気になっています。今回、解散によって間が空いたので、連合の動きも変わってくると見ています。
与党も野党も政策に対した違いもありません。日本には「保守」も「リベラル」もないのです。「保守」は、小さな政府です。自由経済になり、社会保障は最小限になります。「リベラル」は、大きな政府です。規制をかけて、社会保障を手厚くします。
アメリカやイギリスは、2大政党制がある国では、「保守」と「リベラル」で明確に違いがあります。そのため、国政の方向性を決める選挙は、国民には重大な意味を持ちます。2大政党制がある国は、「保守」と「リベラル」が交互に政権につくことで、国家としてのバランスを保っています。
一方、日本では自民党は「保守」と「リベラル」の二つの顔を持っているので、野党は政策で対抗するのが事実上出来ない状態です。どこの党が政権をとったとしても政策に対した差はありません。
二つの顔を持っているということは、状況に応じて使い分けをして、『誰にでも都合の良い顔』をすることが出来ます。
戦後、自民党は社会保障を手厚くしました。高度成長期が終わり、バブルが弾けて日本経済が悪化しても、有権者のすべてに良い顔を見せる自民党は政策転換をすることが出来ませんでした。
シルバー民主主義の下、岩盤の如きある既得権を守り、社会に出たばかりの何にも分からない若年層にその負担を押し付ける政策を続けたのです。『誰にでも都合の良い顔』をすることなどは、実際はできるはずもありません。
結局、未来に対してツケを回すことを続けたのです。つまり、選挙権も発言権もない若年層にツケを回すことを続けているのです。その結果、「日本の借金」は1,000兆円を超えている状況です。
こんな借金が多く、市場が縮小していく中で若年層が未来に対して希望が持てずに、国民が漠然とした不安を抱くのは無理もないところです。
不安が多く、混沌とした社会なのですから、自分たちの都合でつまらない争いをしているのではなく、選ばれた人たちは、社会を良い方向に変えて頂きたいです。
『誰にでも都合の良い顔』をすることは出来ません。選挙の前でも、もっと都合の悪い本当のことを話して頂きたかったです。
作成日:2017年10月23日 屋根裏の労務士